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2023年10月22日00:16

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キリエのうたの感想を書いた

レビューに書いたら字数制限を食らったのでここにコピペする

映画館で見てきたのでネタバレありの感想を書く
岩井監督の最新作ですね
彼は優れたクリエーターであり映画監督なのは普通によく知られていることだと思いますし自分もファンです
「リリィシュシュのすべて」が圧倒的ですね
「8日で死んだ怪獣の12日の物語」は未見で「ラストレター」は見ました
とても楽しめました
それ以来なので特別楽しみにしてました
ちょっと見る前に気になったことが二つあって一つ目が上映時間が3時間とのことで彼の映画としては異例の長さですね(追記ですがリップバンツイックリルも3時間あったみたいですね、忘れててすみません)
二つ目が「キリエ」でして題名から見たら人の名前なのかなと思わせるのですが、違う人のレビューにもある通り、キリエエリソンつまり主よ憐れみたまえのキリエを否が応でも思い浮かべてしまいます
キリエエリソンはクラシック音楽が好きな人ならばミサ曲やレクイエムで歌われる曲として普通に知られています
ただポスターの写真とかではギターが描かれていてクラシック音楽っぽい要素は何もないしたまたまかなあ?と思ってました
でも映画を見に行く一日前にたまたまツイッターをみたら東日本大震災のことが描かれているとあって、あーこれは死んだ人を悼み生きている人を憐れむ映画なのだなと合点がいきました

以下ネタバレありの感想は次の通り
このレビューの説明で音楽映画だとあって、そのとおり前半はやたら音楽がたくさん歌われてました
この映画、一幕目が広瀬すずの逸子の話、二幕目が姉のキリエの話、三幕目が妹のルカの話の三幕ものと分析してみました
現代→過去→現代と話しは進んでいく感じですね

キリエの話になって震災が描写されますね
なぜか分かりませんが泣きそうになってしまいました
切迫した切実な描写だったと思います
それでもがれきに埋め尽くされた街を描写しなかったのはやはりまだ震災描写が辛く苦しいと感じる人たちが沢山いるのでしょうね
松村北斗に炎に包まれたがれきの中を走らせるのは予算の都合もあったのかもしれませんが、生々しすぎるのでしょう

ルカが関西で黒木華と松村北斗に発見されるのですが、その時ルカが木の上にいたのはとても面白く感じました
寄らば大樹の陰ではないですが、きっとこの映画で木は保護とか安心とかそのようなものの象徴として扱われていると解釈しました
厳しい日差しの陰になって守ってくれるのが樹です
家系図のことをファミリーツリー英語では言いますがルカが生き残ったことでこの後彼女の家系は続いていくのだと暗示しているのかもしれません
たまたま木の上に登らせただけかもしれませんが(笑)

あとあの木のシーン、ルカを仰ぎ見る松村と黒木瞳の構図になってますが同じような構図で教会のキリストを仰ぎ見るルカのもありますね。あそこでルカは音楽の神になったとも解釈できます

先ほどからキリスト教に関連することを書いてますが映画でもルカとキリエの家がクリスチャンとして登場しますね。ルカが手を組んで祈る姿はまさにキリスト教の立ち振る舞いのそれですね。ルカってのもキリストの十二使徒の一人の名前です。まあルカはおっさんですが。そういえばヨハネちゃんって名前の異世界アイドルアニメがありましたがヨハネも十二使徒の一人でありおっさんです。

キリスト教の教義の重要な要素に原罪がありますね。原罪とはそもそも人間ってのは生まれついての過ちを犯す罪深い存在であり、それをキリストが人類すべての原罪を代わりにかぶって十字架につけられて処刑されたのだと、それによってキリスト教を信じたら原罪から解放されて死んだあとでも罪がないから地獄には落ちないで天国に行けるんや、だからキリスト教徒になやれって考えです。この映画の冒頭の音楽わざとセリフにかぶせたり、三幕目の路上フェスでの許可の下り云々、逸子の犯した罪、逸子を刺した男のこと、全部過ち、不完全さが織り込まれてましたね。調和のとれた美しい完全な世界を岩井は意識的にわざと描かなかったと思います。リリィシュシュのすべての前の少年少女たちの少女漫画のような美しい世界を描いていた彼が震災を経験やいろんなことを経験して、人の弱さや悲しさを知って、いびつなもの邪なものを徐々に取り入れてきたように感じてますが今回がことさらそれを強く感じました

岩井俊二は仙台出身であり震災のことを通じて生と死に特別考えるようになったようですね。神よ憐れみたまえ、は無念にもなくなってしまった人とともに自分がもっとうまく立ち振る舞えたら自分の大事な人を震災で亡くさなくてもよかったのではないかと苦しんでいる生き残り両者への思いなのでしょう。生き残ってる人は決して完璧でも立派でもない。結婚詐欺を働いて金を巻き上げたり、だまされた悲しさを関係のないルカにぶつけてレイプしようとしたり、結婚詐欺をされたからと言って相手を刺したりする人でさえも慰めを与えられるべきだと思ったのでしょう。そういう観点からいえばものすごくキリスト教的思想が反映されている映画に感じます。間違えているかもしれませんが岩井俊二はキリスト教徒なのかな?とさえ思いますね。

ツイッターで彼の集大成の映画だと絶賛するポストを見たりもしてその気持ちはよく分かります。リリィシュシュのすべてに並ぶ代表作でしょう。もし岩井俊二が明日死んでしまったら前期の代表作がリリィシュシュのすべて、後期がキリエのうたというくくりしていいと思います。もし彼が今後も創作意欲衰えずすごい作品を作れたのであれば中期の代表作になるのでしょうかね。自分はこの映画を今年のベストにしませんがベストにする人が沢山出ても何の問題もない傑作だと思います

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