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2023年03月05日00:21

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実直な古典的エスピオナージの傑作 『崖上のスパイ』

チャン・イーモウ監督の中国製スパイ映画『崖上のスパイ』を見て来ました。

クラシックなスパイ小説を読んでいるかのような味わいがあり、同監督の新たな名作と思います。

【物語】
1934年、日本の傀儡・満州国統治下のハルビン。
ソ連で訓練を受けた4人の男女スパイが街に潜入した。”ウートラ計画”と呼ばれる極秘のミッションの遂行が目的であったが、その内容は彼ら全員にも知らされていなかった。
満州国の特務警察が送り込んだ2重スパイも交錯し、諜報活動は熾烈を極めてゆく。

…スパイ映画好きとしては、個人的にもストライクでした。
登場する銃器も、マークのないM1910とかモーゼル・ミリタリーとか(たぶんコピー品)、時代的にも説得力がありました。

仲間同士の暗号や、ごく自然に聞こえる会話から2重スパイをあぶり出す知恵、自殺用の毒薬の意外な使い方など、それらの1つひとつが丁寧に冷徹に描かれ、一定の緊張感を持続させています。これがあの温かい『初恋の来た道』『あの子を探して』を撮ったのと同じ監督作とは思えぬ出来栄えです。

非情なラストが待ち受けるパターンが多いスパイ映画の中で、全員が無駄死にはせず、希望のある結末を迎えるのも良かったです。雪の降るハルビンの街並みの再現度も高く、映画美術も見事でした(当時のハルビンを知りませんが…)。

”マクガフィン”に相当するのが「日本軍の基地から逃げてきた中国人」。
これってあの特殊部隊の実験のことだと思うのですが、そのあたりには直接触れられていなかったのもかえって不気味でした。

たった1か所だけケチをつけるならば、劇中の映画館で登場するチャップリンの映画『黄金狂時代』のサウンド版は、1934年当時にはまだ無かったはず(笑)。それ以外は完璧に近いスパイ映画でした。

『鏡の国の戦争』や『寒い国から帰ったスパイ』。『裏切りのサーカス』に近いテイストが好みです。★★★★。
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