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2022年08月13日09:38

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戦略論42〜マハンとコーベットの比較

●コーベット(続き)

◆思想(続き)

#戦争の目的を限定した制限戦争
 マハンとコーベットの思想の違いは、第3に戦争の目的についての考え方に見られる。マハンは、海軍の理想的な目標を敵海軍の殲滅だとした。コーベットは、それを理想としては否定しないが、もっと柔軟に考える。
 クラウゼヴィッツは、敵を完全に打倒するまで戦う戦争を絶対的戦争と呼ぶ一方、戦争の目的は政治目的に従属するものであるとし、絶対的戦争に対比されるものとして「現実的戦争」という概念を用いた。コーベットは、この考え方を継承し、戦争計画は政治的な条件に従ってその程度を縮小しなければならないとし、「彼我の論争の程度から戦争の性格を決定しなければならない」と論じた。そして、目的が無制限の戦争ではなく、目的を制限した「制限戦争」を主張した。
 コーベットによると、英国のように島国だったり大国から海によって隔てられ、なおかつ制海権を保持している国家は、自国が欲するように戦争を拡大したり縮小したりすることが可能である。そういう国家は、政治的な目的に応じて、戦争の目的を制限した戦争を行うことができるとした。ただし、制限をかけた戦争を行うことができるのは、英国のような地政学的な特徴を持つ海洋強国に限られるという見解であることに注意しなければならない。

#軍事と外交の総合を目指す
 マハンとコーベットの思想の違いは、第4に軍事と外交についての考え方に見られる。マハンは軍人であり、海軍戦略家だった。海軍中心に物事を考え、国家政策も、すべて海軍戦略をもとに考えた。これに対し、コーベットは、クラウゼヴィッツの戦争は政治の継続という思想を継承し、軍事と外交と結びつける総合的な戦略思想を発展させた。英国が世界覇権国として繁栄した歴史を、軍事力と外交力を総合的に発揮する政策を行ってきたことに見出した。また、その歴史を踏まえて、政治・外交の目的と海軍の活動を一致させることを主張した。

◆比較・考察
 
 19世紀後半から20世紀半ばまでの欧州諸国の勢力争いには、世界的な覇権国家である英国に、新興国のドイツが挑戦するという構図で展開された。地政学的に言えば、英国はシーパワーであり、ドイツはランドパワーである。この英国対ドイツの対立に、大西洋を挟んで北米大陸から絡んだのが、米国である。
 マハンは、新興国・米国をして、海軍力の増強によって、英国に匹敵する海洋強国にしようとした。それが彼の海軍戦略である。これに対し、コーベットは、英国にあって、世界的な覇権国家としての地位を維持するための海洋戦略を構想した。
 マハンにとって英国は到達すべき目標だったのに対し、コーベットにとってマハンの理論は英国が今更模倣してはならないものだった。新興国の国家政策と覇権国家の国家政策が異なるのは当然である。
 ドイツが英国に挑戦し続けたのに対して、米国は英国を凌駕しようとはしなかった。米国は英国に次ぐシーパワーとなることで、英国をドイツの攻撃から守り、衰えゆく英国を支え、助けることになった。ここが英国と米国の関係の特殊なところである。英米は、根本的にアングロ=サクソン・ユダヤ文化でつながっている。また、米国は、金融的には、20世紀初頭からロンドン・シティを中心とする巨大国際金融資本によって支配されている。それによって特殊な同盟関係にある。

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 次回に続く。

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