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2022年08月01日11:35

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戦略論36〜ジョミニの概要と思想

 本稿の第2部は、戦略論の基礎的な研究のノートである。筆者は、軍事学や安全保障学に関しては素人である。紙の書籍を主たる参考資料とするとともに、ネット上に公開されている専門家や篤学の士の掲示に学ぶことも多い。ネット上のサイトに特に多くを負っている項目は文中にその旨を書き、感謝をもって紹介させていただく。

●ジョミニ

◆生涯

 クラウゼウィッツとともに19世紀を代表する軍事思想家が、アントワーヌ=アンリ・ジョミニである。スイス出身の軍人で、軍務の経験をもとに軍事理論と戦争史を研究した。クラウゼウィッツより1年早く1779年に生まれ、クラウゼヴィッツより38年長く生きて1869年に死去した。
 最初は傭兵としてフランス軍に勤務した。ナポレオン1世に認められ、ミシェル・ネー将軍の幕僚としてナポレオン戦争に参加した。しかし、ロシア遠征の後、参謀総長ベルティエと対立し、ロシア軍に投降した。1813年からはロシア軍に仕え、アレクサンドル1世の幕僚を勤め、陸軍大将となった。ニコライ1世の軍事顧問として第4次露土戦争を指揮した。その後、フランスに戻り、ナポレオン3世のイタリア遠征の顧問となった。
 軍事理論家・歴史家として、20歳代から多くの著書を出した。そのうち最もよく知られているのが『戦争術概論』(1838年)である。

◆著書

 ジョミニの著書『戦争術概論』は、クラウゼウィッツの『戦争論』とともに、ナポレオン戦争に参加した経験に基づき、ナポレオン戦争以降の近代戦争について総合的に研究した軍事理論書である。『戦争論』と同年の1838年に発表された。『戦争概論』という邦題も使われているが、「術」を入れた方がよいのは、原題が ”Précis de l'art de la guerre”であることによる。
 本書は、序説と結論を除く8つの章で構成されている。「戦争との関係における政治」「軍事政策」「戦略」「大戦術と戦闘」「戦略的または戦術的な作戦」「機動する部隊の兵站または実践的技術」「諸兵科連合部隊」の8章である。内容は、戦争の類型、戦争と政治、軍事政策、軍事制度、戦略、戦術、兵站、指導者、部隊等の全般にわたっており、網羅的・体系的である。

◆思想

#戦略の定義
 ジョミニは、「戦略とは地図上において戦争を計画する技術であり、作戦地全体を包括する」と定義した。この定義は、私の分類では作戦戦略に当たる。
 彼のいう戦略は、以下の点を含むものとされる。

(1)戦域の選択とそこに含意されるさまざまな関連に関する考察
(2)戦域の組み合わせにおける決勝点と、最も有利な作戦方針の決定
(3)恒久的な基地と作戦地帯の選択と設定
(4)攻勢と防勢における目標地点の選択
(5)戦略正面、防衛線、作戦正面
(6)目標地点と戦略正面を接続する作戦線の選択
(7)所定の作戦で最良の戦略線とあらゆる事態に対応するために必要なさまざまな機動
(8)必然的に使用する作戦基地と戦略予備
(9)機動と考えられる軍の行進
(10)補給処の位置と軍の行進との関係
(11)軍の避難場所として、また攻囲や守備に見られるように軍の前進の障害となる戦略的手段としての要塞
(12)駐屯地や橋頭堡に適当な地点
(13)牽制の実行とそれに要する大規模な分遣隊

#戦略・戦術・兵站
 ジョミニは、「戦略はどこで行動するかを決定し、兵站は部隊をこの地点に動かし、大戦術はその部隊の要領と展開を決定する」とした。
 戦略が作戦図上で戦争計画を立てる技術であるのに対し、戦術は図上計画に基づき、現場に応じて部隊に戦闘をさせる技術である。兵站は部隊を戦場に輸送する準備や手段である。

#戦闘と戦術
 戦闘は我が軍と敵軍の武力衝突である。戦術はその衝突において戦闘の形式を規定する。戦闘の形式には、防御戦闘、攻撃戦闘、遭遇戦の3種類がある。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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 『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』(星雲社)
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