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2022年05月25日07:56

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戦略論3〜国家総合戦略、各分野の戦略、軍事戦略

〜〜〜〜〜〜〜〜〜 細川一彦著作集(CD)のご案内 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 拙著『人類を導く日本精神』の付属CDに、「ほそかわ・かずひこの<オピ
 ニオン・サイト」のデータを収納しました。その後、2年9か月ほどの間に、
 新たな掲示や一部修正を多く行いました。
 そこで、本年4月12日時点のデータを<確定版>としたCD−Rを作り
 ました。今後このサイトが閉鎖・消滅した後も、資料としてご利用いただけ
 ます。単行本にすると約30冊分になります。
 1枚400円です。枚数に限りがあります。申し込み期間は1か月限定
 (5月27日まで)です。
 申し込みを希望する方には、詳細をお伝えします。下記にご連絡下さい。
 fhoso@m8.dion.ne.jp

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■戦略論3〜国家総合戦略、各分野の戦略、軍事戦略

●国家総合戦略と各分野の戦略の区別

 国家戦略(大戦略)は、国家目標・国家方針のもとに策定されるものであり、その下に国家の活動における個々の分野の活動が行われる。
 私は、国家において特に重要な活動として、政治・経済・外交・軍事・文教・情報・科学技術を挙げる。各活動分野において、それぞれ政治戦略、経済戦略、外交戦略、軍事戦略、文教戦略、情報戦略、科学技術戦略が立案され、それらを総合したものが、国家戦略となる。あるいは、逆に、全体的な国家戦略の下に、個別的な分野の戦略が策定される。
それゆえ、私は、国家に関する総合的な戦略を、単に国家戦略ではなく、国家総合戦略と呼ぶ。一般に、大戦略・統合戦略・全体戦略と呼ばれるものである。

●国家総合戦略と軍事戦略の違い

 国家総合戦略は、国家の政治的な目的を達成するために、軍事的手段だけではなく、非軍事的手段をも活用するものであり、軍事戦略の上位に位置づけられる。 軍事戦略は、国家総合戦略の下における軍事分野の戦略である。
 軍事戦略は、政治戦略・経済戦略・外交戦略・文教戦略・情報戦略・科学技術戦略と連携したものでなければならない。特に対外的な政治に係る外交戦略とは、密接な関係が必要である。
 元外交官の岡崎久彦氏は、『戦略的思考とは何か』(中公新書)で、戦略とは、どの国と同盟を結ぶかだと説いた。彼のいう戦略は外交戦略のことである。国家総合戦略では、しばしば、外交戦略は軍事戦略より重要である。だが、彼のように軍事戦略の持つ独自の重要性に触れていない戦略論は、外交を誤る。
 エチェヴァリアは、『軍事戦略入門』(創元社)で、「大戦略という用語は、今日の防衛に関する文献では同盟や連合の戦略、あるいは国家戦略(ないし国家安全保障戦略)として用いられることもある」と述べている。
 彼は、「軍事戦略とは、敵方の戦闘能力と意志を削ぎ、我方の目的を達するまでそれを継続する営みである」と定義する。そして、「実のところ戦略とは、相手を出し抜くことに尽きる。最初の武力衝突の前から、しばしば戦闘が終結したずっと後まで、軍事面のみならず外交面でも、そして可能ならば経済や文化の面でも、相手を出し抜くのである」と説く。ここで出し抜くとは、裏をかいたり、先手を打つことである。相手を欺くことであり、詭計・詭道に通じる。
 さて、彼によると、軍事戦略とは将軍の「仕事」ないしは懸案事項であり、大戦略は「国家元首の懸案事項」である。大戦略家も軍事戦略家も「敵対勢力を出し抜こうとする点は同じである。大戦略家は通常、同盟や連合を組むことによってこれを行う。すなわち我方の力を相手と比べて増強ないしは維持するために、条約や合意をとりつけるのである。軍指揮官は、そのような協力関係や合意によってもたらされる物質的・精神的優位を利用し、具体的な軍事戦略を組み立てる。大戦略家は、差し迫った武力紛争の潜在的な損失と期待される便益を考慮し、前者を最小化しつつ後者を最大化するような条件を整えようとする。また大戦略家は、同時的に発生している軍事的コミットメントと長期的な利益との釣り合いをとり、それに応じて優先順位を設定する。それを受けて軍事戦略家は、損失が便益を上回ったり、短期的利益によって長期的利益が損なわれることなく、将軍の『仕事』が成功を収めるように努めるのである」と述べている。
 国家総合戦略と軍事戦略の関係は、前者は国家の最高指導者が実施し、後者はその部下である軍事の責任者が実施するという関係になる。政治の軍事に対する優位ということである。戦争を始めるのも終わらせるのも、政治の役割である。軍事は、その間の期間を担う。宣戦布告も講和条約も、政治が行う。仮に軍人が大統領や首相になっている政府においても、このことは変わらない。政治が軍事に優先する。言い換えれば、国家総合戦略が軍事戦略の上位にある。
 ここで軍事戦略と密接な関係のある外交戦略は、国家の最高指導者が行う政治の外交面に関する戦略であり、国家の最高指導者は政治戦略・経済戦略・外交戦略・軍事戦略等を総合し、それらを担う部下(大臣・長官級)の補佐を受けて、国家総合戦略を実施する。軍事戦略は国家総合戦略の一部または下位を構成するものである。

●軍事戦略の構成要素

 現代の防衛分析家、アーサー・ライカ・ジュニアは、軍事戦略を三つの本質的な構成要素に分割する。すなわち、目的、方法、手段である。目的は、敵に対する脅迫、抑止、説得、強制、懲罰、鎮圧、あるいは征服を含み得る。方法とは、基本的に各種の軍事戦略、またはそれらの組み合わせである。手段とは、軍事力と同義である。そして、
 <軍事戦略=目的+方法+手段>
を、ライカの方程式という。
 エチェヴァリアによると、今日ではライカの方程式にリスクの要素を加えることが、一般的になっている。その考え方によれば、優れた軍事戦略とは、三つすべての構成要素(目的、方法、手段)が調和しているもの、つまり所定の「方法」に従い、十分な「手段」をもって「目的」を達成するものをいう。調和を求める基本的な根拠は、それがリスクを低減させることにある。
 ライカの方程式は、国家総合戦略にも応用できる。国家総合戦略も、目的、方法、手段を構成要素とし、それらの調和はリスクを低減させる。今日、国家の安全保障は、軍事的な手段による安全保障だけでなく、外交、経済、情報等、非軍事的な方面も含めた総合的な安全保障を目指すものとなっている。そうした総合的な安全保障においては、戦略を次のように表すことが一般的になっている。
 <戦略=目的+方法+手段+リスク>
である。

 次回に続く。

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