mixiユーザー(id:525191)

2022年05月10日08:46

220 view

日本の心110〜東洋の理想と日本の目覚め:岡倉天心2

〜〜〜〜〜〜〜〜〜 細川一彦著作集(CD)のご案内 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 拙著『人類を導く日本精神』の付属CDに、「ほそかわ・かずひこの<オピ
 ニオン・サイト」のデータを収納しました。その後、2年9か月ほどの間に、
 新たな掲示や一部修正を多く行いました。
 そこで、本年4月12日時点のデータを<確定版>としたCD−Rを作り
 ました。今後このサイトが閉鎖・消滅した後も、資料としてご利用いただけ
 ます。単行本にすると約30冊分になります。
 1枚400円です。枚数に限りがあります。申し込み期間は1か月限定
 (5月27日まで)です。
 申し込みを希望する方には、詳細をお伝えします。下記にご連絡下さい。
 fhoso@m8.dion.ne.jp

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

■日本の心110〜東洋の理想と日本の目覚め:岡倉天心2

●日本の目覚め

 東洋の理想 を胸にした天心は、明治37年(1904)2月10日、アメリカに渡りました。日露戦争の宣戦詔勅が出された日でした。以後、ボストン博物館に勤務し、美術研究に専心しました。
 この年、天心は『日本の覚醒』をニューヨークで出版しました。本書は、西洋の衝撃を受けた日本がどのように自己に覚醒し、新しい国家をつくったかを、英文で叙述したものです。
 天心は書いています。
 「魔法の杖の一触れをもって、突如として日本人を数世紀の眠りから覚ましたものは西洋人であった、というのが外国人一般の印象のようである。しかしながら日本の目覚めの真因は日本自体のうちにあった。1853年、ペリー提督がわが沿岸に到着したときは、すでに日本人の国民意識は覚醒し始めていたのである。ペリーの来訪は、その覚醒した意識が広汎な国家革新運動に飛躍するきっかけとなったにすぎない」
 すなわち、明治維新はヨーロッパ文明の影響のみによって起こされたものではない。徳川幕府の支配体制が長く続く中で、日本を革新する思想が徐々に用意されていた。そしてその革新の声は西洋の帝国主義の侵略を契機として高まり、ついに維新の変革に導いたのだーー天心はこうして、日本の近代化には日本人の主体性が働いていたことを明らかにしました。
 『日本の覚醒』を出版したもう一つの意図は、当時西洋に高まっていた「黄禍論」を論破することでした。本書で天心は、禍(わざわい)のもとは東洋民族にあるのではなくて、むしろ西洋民族にあると鋭く反論したのでした。「もしも西欧諸国の良心の不安が黄禍の幻影を呼び起こしたとするならば、苦悩するアジア民族が白禍の現実に号泣するのは当然のことではないか」「踏みにじられた東洋人の目から見れば、ヨーロッパの栄光はひとえにアジアの屈辱なのである」と。
 当時、日本はロシアと戦っていました。天心はその戦いは日本人が好戦的だからではなく、やむをえず戦っているものである、と主張します。そして、本来、日本人は平和的な民族であることを強調します。
 「日本の対外政策の歴史を検証するくらいの人間ならただちにわかることは、日本が終始一貫して平和維持を希求し、万やむを得ず戦争に訴えるときはまったく自衛のためにほかならぬという事実であろう。そもそも外国を攻略しないということは、わが国文明の本性そのものからきているのである」と。
 天心が最も訴えようとしたのは、東洋精神が世界平和の実現に寄与できることです。本書の末尾に天心は記します。
 「いったい戦争というものはいつなくなるのであろうか。……西洋が見せるこの奇妙な組み合わせーー病院と魚雷、宣教師と帝国主義、膨大なる軍備と平和の確保――これらはいったい何を意味するのか。こんな自家撞着は古来の東洋文明にはなかった。日本の王政復古の理想はこんなものではなかった。日本の革新の目標はこんなものではない。われらを幾重にも包んでいた東洋の夜は明けた。だが、世界はまだ人類の黎明下(れいめいか)にある。西欧はわれらに戦争を教えてくれた。それなら、いったいいつ、彼らは平和の恵みを学ぶのであろうか」 
 日本は日露戦争でロシアに勝利しました。すると、欧米諸国の間には、日本人が好戦的な民族であるという見方が広がりました。天心は、この誤解と警戒心を解くために、再びペンを取りました。それが、明治39年(1906)刊の『茶の本』です。その中で天心は、日本人が茶や花を愛玩する美風を持つ平和愛好の民族であることを、世界に伝えようとしました。本書に天心はこう記しています。「もしもわが国が文明国となるために、身の毛のよだつ戦争の栄光に拠らなければならないとしたら、われわれは喜んで野蛮人でいよう。われわれの技芸と理想にふさわしい尊敬がはらわれる時まで喜んで待とう」と。
 私たちは今なお戦争の絶えない世界にあります。天心が願った世界平和への寄与のため、この21世紀に、日本人として、また東洋人として、たゆみない努力を続けたいものです。

参考資料
・岡倉天心著『東洋の理想』(筑摩書房版『近代日本思想大系 岡倉天心』所収)

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

************************************
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する