〜〜〜〜〜〜〜〜〜 細川一彦著作集（ＣＤ）のご案内 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
拙著『人類を導く日本精神』の付属ＣＤに、「ほそかわ・かずひこの＜オピ
ニオン・サイト」のデータを収納しました。その後、２年９か月ほどの間に、
新たな掲示や一部修正を多く行いました。
そこで、本年４月１２日時点のデータを＜確定版＞としたＣＤ−Ｒを作り
ました。今後このサイトが閉鎖・消滅した後も、資料としてご利用いただけ
ます。単行本にすると約３０冊分になります。
１枚４００円です。枚数に限りがあります。申し込み期間は１か月限定
（５月２７日まで）です。
申し込みを希望する方には、詳細をお伝えします。下記にご連絡下さい。
fhoso@m8.dion.ne.jp
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■国家論１０〜国家と資本
●国家と国家を超えるもの（続き）
◆国家と資本
国家は、領土・人民・主権・思想を要素とし、各国は歴史的・社会的・文化的に個性的な特徴を持つ。これに対し、資本は、利潤の獲得を目的として自己運動を行なう組織である。経済的な利益の最大化の追求が、資本の論理である。マックス・ウェーバーの概念を使って言うならば、国家の論理は、部分的には価値合理的で、部分的には目的合理的である。また目的合理的な部分も、実質合理的な面と形式合理的な面の両方がある。資本の論理は、これと異なり、全く目的合理的かつ形式合理的である。資本が進める合理主義は、目的合理的かつ形式合理的な合理性を徹底しようとするものである。
資本は、ある国家において発生し、その国家に属するものとして活動する。資本は成長するに従い、国家を利用して利益を増大しようとするとともに、国家を超えて経済的な利益の最大化を追求する。資本は商品を生産し、流通させ、消費させることで、利益を挙げる。それが資本の本来の活動である。だが、資本の活動は、貨幣の流通なくして成り立たない。そこに金融の重要性がある。そして、資本が国家を通じて利益を上げるうえで最大の機能となっているのは、通貨の発行権である。国際金融資本は、中央銀行制度によって各国の通貨の発行権を握ることによって、常時莫大な利益を得ている。
ただし、資本にとって、国家の持つ国境や主権は、時に障害となる。また国家の歴史的・社会的・文化的な特徴も、資本には意味がない。利用することが利益になれば利用する。利益にならなければ無視する。場合によっては、それらを排除しようとする。ウォール街やロンドン・シティ等で活動する巨大国際金融資本を中心とした所有者集団（註1）にとって、国家は守るべき絶対的な価値ではない。自らの利益になるのであれば、国家を維持し発展させる。利益にならないのであれば、国家が衰退し崩壊しても意に介さない。
次に、資本が国家を使って莫大な利益を上げているものに、戦争がある。生産は財の創造であり、戦争は財の破壊である。だが、破壊はさらなる財の創造を必要とする。戦争という大規模な消費の機会は、大きな利益を生み出す。中でも軍需産業は、戦争を生み出し、戦争を広げ、戦争を長引かせることによって利益を得る。軍需産業の背後には、巨大国際金融資本が存在する。戦争と破壊は、彼らに貨幣の増大をもたらす。米ソの冷戦構造においては、無制限核戦争にならない範囲で、各地で戦争が繰り返され、軍需産業には大きなビジネス・チャンスとなっていた。その典型がベトナム戦争である。冷戦終結後も、この構造は変わっていない。戦争の種類と場所が変わっただけである。９・１１以後のアフガニスタン戦争、イラク戦争も、その深刻な事例である。
ところで、国家と資本の関係において注意すべきものに、資本主義と共産主義の問題がある。一般に共産主義は私有財産制に基づく資本主義を打倒する思想と考えられている。また、資本は私有財産制を否定する共産主義を壊滅しようとしていると考えられている。
だが、歴史が示しているのは、この認識は正しくないことである。
共産主義は、帝政ロシアのような前近代的国家において、強力に近代化を進める。政府による上からの近代化であり、その実態は資本主義を変形した統制主義的資本主義である。巨大国際金融資本は、前近代的国家における共産主義を歓迎する。徹底した合理化によって、急速に近代化を進めるからである。統制主義的資本主義も、一種の資本主義であるから、巨大国際金融資本はその政府と契約することにより、市場と資源を獲得することができる。
資本の論理を体現する所有者集団は、米ソ二大超大国が対立した冷戦期において、どのように行動したか。彼らは、自由主義・民主主義の理想を以って、共産主義・統制主義と対決したのではなかった。ソ連側との貿易・通商を行なうことによって、利益の拡大を図った。米国側とソ連側が衝突した局地的な戦争も、軍需による利益を生み出す格好の機会となっていた。１９８０年代、米国のレーガン政権が軍拡競争でソ連を崩壊に追い込んだのは、もはやソ連という国家の存続が所有者集団にとって利益を生まないと見切りをつけた段階だったからだろう。
ソ連の崩壊後、巨大国際金融資本は共産中国に目を向けた。��小平が社会主義的市場経済の概念によって改革開放を進めると、巨大国際金融資本は莫大な投資を行う対象とした。中国はこれを利用して急速な経済成長をし、発達する経済力を以て猛烈な軍拡を行った。今や米国の覇権に挑戦するようになった中国にどう対処するかが世界的な課題となっている。
註
(1) 西欧発の近代文明では、１９世紀後半から今日に至るまで、社会は、大まかに分けて、四つの集団で構成されている。その四つの集団とは、所有者（the owners）、経営者（the managers）、労働者（the workers）、困窮者（the distressed）である。これらのうち、所有者集団とは、大規模な土地や資産を所有する富裕者をいう。西欧やアラブの王侯・貴族や各国の資本家等である。詳しくは、拙稿「現代世界の支配構造とアメリカの衰退」第１章（１）「現代社会の集団構成」をご参照ください。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09k.htm
次回に続く。
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