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2022年05月05日07:16

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国家論8〜民族構成と統治機構、広域的な共同体

〜〜〜〜〜〜〜〜〜 細川一彦著作集(CD)のご案内 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 拙著『人類を導く日本精神』の付属CDに、「ほそかわ・かずひこの<オピ
 ニオン・サイト」のデータを収納しました。その後、2年9か月ほどの間に、
 新たな掲示や一部修正を多く行いました。
 そこで、本年4月12日時点のデータを<確定版>としたCD−Rを作り
 ました。今後このサイトが閉鎖・消滅した後も、資料としてご利用いただけ
 ます。単行本にすると約30冊分になります。
 1枚400円です。枚数に限りがあります。申し込み期間は1か月限定
 (5月27日まで)です。
 申し込みを希望する方には、詳細をお伝えします。下記にご連絡下さい。
 fhoso@m8.dion.ne.jp

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■国家論8〜民族構成と統治機構、広域的な共同体

●国民国家の民族構成と統治機構

 次に、国民国家の国民の構成について述べる。国民国家の国民の構成には、単民族国家(mono-ethnic state)と多民族国家(multiethnic state)がある。
 単民族国家は、国民(nation)が一つの民族(ethnic group)で構成されている国家である。これに比し、国民が複数の民族で構成されている国家が、多民族国家である。多民族国家は、一つの有力な民族が主導する型と複数の有力な民族が主導する型に分けられる。
 単民族国家は、理念的には政治的な単位と民族的な単位が一致し、すべての国民が言語・文化・宗教・歴史・記憶等を共有している国家である。だが、現実には、そのような国家はほとんど存在しない。実際に形成されたのは、多かれ少なかれ、異なる言語・文化・宗教・歴史・記憶等を持つ複数の集団で構成される国家である。イギリスもアメリカもフランスもラテン・アメリカ諸国もドイツもイタリアもロシアもそうである。これらは均質な国家ではなく、程度の差こそあれ、国内に複数のエスニック・グループを持つ。それらの集団を統合して国民意識を創出した国家が、国民国家である。
 日本は、ほぼ単民族国家に近いと見られるが、明治維新によってアイヌ・琉球等の少数民族を包摂する形で、国民国家を形成した。ただし、これらの少数民族は、古代の日本民族と同根と見られる。その後、海外に台湾・朝鮮等を領有し、その地のエスニック・グループをも国民とした。大日本帝国は、日本民族が主導する多言語・多文化・多宗教・多民族の国家だった。
 次に、国民国家を統治機構から見ると、単一国家と連邦国家に分けられる。単一国家は、一つまたは複数のエスニック・グループで構成される国民が中央集権的な政府によって統治されている国家である。これに対し、連邦国家は、複数の州または国家等と呼ばれる政治組織が、連邦政府によって統治されている国家である。連邦を構成する国家は、独立主権国家ではないが、一定の自治権をもつ。連邦国家の国民をネイションとすれば、その下位の政治的な集団はサブ・ネイションである。
 単一国家は連邦国家より中央集権的だが、中央集権といっても、ある程度は地方分権がされている。また地方分権的な国家であっても、ある程度の中央集権がされている。集権度、分権度の度合いと、中央および地方の各政府の権限の内容は、それぞれの国家によって異なる。
 国家の統治には、対内的・対外的の両面がある。対内的には行政・立法・司法、対外的には外交・国防が重要である。国家は、どれほど分権度が高くとも、外交・国防の権限を中央政府に集中できていないと、分裂・解体しやすい。当然、連邦国家においては、一層その傾向が強い。連邦国家において、連邦を構成する州・国家等の自治権の度合いは、連邦国家によって異なる。だが、どのような権限分配の仕方であっても、外交・国防の権限が連邦政府に集中できていないと、連邦国家は容易に分裂・解体する。また連邦国家は、国家の第4の要素としての思想を、連邦全体で共有することが難しい。それゆえ、中核になっている国家で大きな政治的な変動が起こると、分裂・解体しやすい。20世紀末で最大の歴史的な出来事だった米ソ冷戦の終焉後、国家の数は減るどころか、さらに増えているが、新たに誕生した独立主権国家は、連邦国家の崩壊によるものがほとんどである。

●国家と広域的な共同体

 今日、ヨーロッパには、17世紀以来の近代国家の枠組みを超えた広域的な共同体が出現している。欧州連合(EU)がそれである。EUは、単一国家でも連邦国家でもない。2022年4月現在の加盟国は27か国である。それらの国家の集団が地域統合を進めつつある。EU憲法はまだできていないが、統一議会とEU大統領は誕生した。将来的には一個の超国家的な組織をめざしている。だが、一個の国民国家を形成する時に必要とされるような思想を持っていない。
 仮にEUが今後、様々な課題を乗り越えて一個の超国家的な組織となるとすれば、一つのモデルは、連邦国家であるアメリカ合衆国だろう。米国は建国の理念として、「自由の国」という国家像を持つ。根底には、西方キリスト教のプロテスタンティズムがある。これに比べると、ヨーロッパには、米国のような、明確な統合の理念がない。キリスト教が宗教的・文化的な共通基盤ではあるが、カトリックとプロテスタント諸派に分かれており、正教会が主たる国もある。トルコが加盟したことで、少数ながらイスラーム教国もある。また米国は共和制のリベラル・デモクラシーの国家だが、ヨーロッパには君主制の国家が多くあり、政治体制は多様である。そこにイスラーム文化圏から多数の移民が流入している。ヨーロッパには、イスラーム教徒の移民を西方キリスト教に改宗し、彼らの文化に同化する統合力を持っていない。
 2010年代からEUの多くの国では、国民国家の復興とイスラーム教徒の移民の規制を求めるナショナリズムが高揚している。2021年1月には、大国イギリスがEUを離脱した。今後、イギリスに続く国が出てきて加盟国が減少する可能性がある。私は、EUが一個の超国家的な組織となり得るかどうかには懐疑的である。一個の超国家的な組織となり得るには、ヨーロッパを一個の拡大されたネイションとするような強力な思想が登場しなければならないだろう。だが、それは不可能である。なぜなら、EUを生み出した思想は、根本的には地域的な思想ではなく世界的な思想、グローバリズムだからであり、実態としてはグローバリズムを地域的に推進するリージョナリズムだからである。グローバリズムについては、次の項目で述べる。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

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