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2021年12月23日10:10

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日本の心41〜二十一箇条が家訓の原型に:北条早雲2

 徳川家康は、北条氏が滅亡した後、次のように語ったと伝えられます。
 「武田信玄は近代の良将であったが、自分の父信虎を追い出した報いが、子に表れた。勝頼は猛将であったが運が傾いて、譜代の恩顧ある者まで離れていき、はかなくも滅びてしまった。これは、天道が、武田氏は親に対して当然持たねばならぬ恩義に欠ける点を、憎まれたためである。
 これに対して小田原の北条氏は、百日ほどの長い包囲戦の際に、松田尾張のほかは、反逆した者は一人もいない。またその時、一命を助けられた氏直が高野山に行った時も、命を捨ててお伴をしようと願い出た者が多かった。これは早雲以来、代々受け継がれてきた方針が正しく、諸士もみな節義を守ったためである」と。
 北条早雲は教訓を残し、北条家は代々それを守りました。そこに五代百年の繁栄の秘訣がありました。この『早雲寺殿廿一箇条』は、戦国時代・江戸時代につくられた武家の家訓の原型ともいえます。そこには、当時の武士の生き方や価値観、つまり武士道が表現されています。
 早雲の二十一箇条は、「なによりも神仏を信じること」で始まります。この点は、やはり「神仏を大切にすべき」ということから始まる貞永式目に通じています。
 続いて、第2条は“早起きをせよ”、第3条は“夜更かしをせず、朝は身支度を整え、定時前に出仕せよ”、第4条は“朝は手洗いの前に見回りをし、家人に掃除させよ”等々、武士が日常生活で実行すべきことを、事細かく説いています。
 また、第5条は“信仰は正直に勤めよ”、第6条は“見栄を張るな”、第11条は“まず、他人を立てよ”、第17条は“良き友を求めよ”などと、心の在り方についても具体的な教訓が並んでいます。
 次に武士の心得として、特に興味深いものを挙げてみましょう。

第14条(嘘をつくな)
 上下万人に対し、一言半句にても虚言を申べからず。かりそめにも有のままたるべし。そらごと言つくれば、くせになりてせらるる也。人に頓てみかぎらるべし。人に糺され申ては一期の恥心得べきなり。
 (大意:身分の上下にかかわらず、万人に対して、一言半句もうそをついてはならない。わずかなことも、ありのままに言うべきである。うそを言っていると、それが癖になってしまう。そしていつしか人から見放されることになる。自分のうそを人から追求されることがあれば、一生の恥と思うべきである)

※古代から、嘘をつかず正直であることは、日本人が大切にしてきた徳ですが、武士の間においても重んじられたことがわかります。

第15条(歌道を学べ)
 歌道なき人は無手に賤しき事也。学ぶべし。常の出言に慎み有るべし。一言にて人の胸中しらるる者也。
 (大意:和歌のたしなみのない者は、ひどくいやしい感じがする。是非学ぶようにせよ。それによって普段の発言も慎み深くなるだろう。たった一言の言葉によって、人の心の中がわかってしまうものである)

※武士にとって和歌を詠むことは、大切な教養でした。古くは源平の武将、八幡太郎源義家、平忠度(ただのり)、鎌倉三代将軍源実朝らも、名歌を残しています。皇室から分かれた貴族出身だった武士は、和歌を通じて、朝廷のみやびの文化とつながっていたのです。

第21条(文武は平常の心がけ)
 文武弓馬の道は常なり。記すにおよばず、文を左にして武を右にするは古の法、兼て備へずんば有べからず。
 (大意:文武・弓馬は当然のことであるから、特に記す必要はない。文と武をともに身に付けることは古くからの掟である。日ごろから心がけておかねば、できないことである)

※文武両道ということも、古くから言われていたことがわかります。

 以上のように、北条早雲は、武士のなすべきことを、具体的また詳細に説いて、教訓としています。北条家では、創業者の精神を受け継いで、これらの教訓を守り、実践しました。徳川家康も謙虚に先人・早雲に学んだことが、徳川十五代の繁栄をもたらしたといえましょう。

参考資料
・岡谷繁実著『名将言行録』(ニュートンプレス)

 次回に続く。

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