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2021年12月20日10:41

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民主対専制3〜「普遍的価値」は普遍的にはなっていない

●「普遍的価値」は普遍的にはなっていない
 
 自由、民主主義、人権、法の支配は、しばしば人類の普遍的な価値とされる。日本や欧米ではそのように考える人が多いが、世界的にはそれらを普遍的な価値とは認めない国家や個人も多い。実態としては、後者の方が多いと考えられる。
 自由、民主主義、人権、法の支配は、近代西洋文明で発生・発達した思想である。イギリス・フランスで発生・発達して西欧に広がり、またアメリカに伝播した。さらに近代西洋文明の世界化によって、世界各地に広がった。
 自由、民主主義、人権、法の支配の4つの価値のうち、人権が最も普遍性の高い価値と考えられる。1948年に国連で世界人権宣言が採択され、国連に加盟する190カ国以上がこの宣言に参加しているからである。他の価値については、それほどの支持の広がりはない。人権宣言には、自由と基本的な権利の擁護、平等への配慮、法の順守等に関わることが盛られており、人権の概念が他の普遍性の高い価値を代表している。いわば中心的な価値となっている。
 世界人権宣言は、1920〜40年代の欧米における価値の相克の結果、生まれたものである。すなわち、古典的自由主義、修正的自由主義、社会民主主義、共産主義、ファシズムという種々の思想のぶつかり合いの結果、米英が主導し、自由を中心とした形での自由と平等の両立が、同宣言には盛り込まれている。
 では、どうして、欧米諸国以外の多くの国が同宣言を受け入れたか。根本的には、国際連合こと連合国が、大戦の勝者による軍事同盟であり、当時この軍事同盟に加盟しなければ、国家の安全保障が危うくなる状況であり、加盟することが国益にかなったからだろう。加盟するためには、同宣言に参加しなければならない。だから、参加する。同宣言は法規ではなく、盛られた内容を実行しなくとも罰則はない。形だけ従っていれば、実態は問われない。それゆえ、専制主義といわれるような国々も、同宣言に参加して実益を図ったものだろう。
 世界人権宣言が発せられた後、人権に関わる国際条約が多く締結されて来た。だが、そのことは人権が普遍的な価値として浸透し、確立されたことを意味しない。同宣言が出されて73年後の今日、人権に関する世界の現状は、次の通りである。
 本年(2021年、令和3年)10月21日、国連総会第3委員会(人権)は、オンライン会合を開催した。中国新疆ウイグル自治区の人権状況をめぐって、欧米諸国と中国側がそれぞれ共同発表を行った。
 日米欧などの43カ国を代表してフランスのドリビエール国連大使は、ウイグル自治区で「拷問や性暴力といった人権侵害が組織的に行われている」と懸念を表明した。一方、キューバは発展途上国を中心とする62カ国を代表し、中国擁護の声明を発表した。ウイグル自治区の状況は中国の「内政問題」であり、他国が人権を口実に干渉することには反対するとの立場を表明した。
 国の数で言えば、積極的に人権を擁護する国は43、人権の擁護に消極的な国が62で、後者が前者を上回っている。人権を重視する国々より、人権を軽視する国々の方が多い。
 こうした現状を見ると、人権は、世界人権宣言という言葉の上では、地球人類に普遍的な価値とされていても、実際には普遍性を獲得してはいない。総じていわゆる先進国は人権を重視し、発展途上国は人権を軽視する傾向がある。近代西洋文明が発生・発達した欧米の諸国、またその文明が深く浸透している日本等の国々では人権を重視し、近代西洋文明があまり浸透していない中国・ロシアやアジア・アフリカ・中南米の多くの国々では人権を軽視する。
 私は、人権の問題について、拙稿「人権――その起源と目標」(2017年、平成29年)を書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion03i.htm
 個人が書いた人権論としては、おそらく最も分量の多いもので、単行本にすると5〜6冊分になる。内容は、哲学・思想史・政治学・法学・文明学等に基づいて総合的に人権を論じたものである。学者ではない者がいうのはおこがましいが、学際的に人権を考察した。その拙稿に書いたように、人権の起源は、近代西欧における普遍的・生得的な権利という観念にあるが、人権の実態は歴史的・社会的・文化的に発達してきた権利である。生まれながらに誰もが持つ「人間の権利」ではなく、主に国民の権利として発達する「人間的な権利」である。それゆえ、これを普遍的な権利とは認めない国が存在することは不思議ではない。
 民主主義については、人権における世界人権宣言のようなものはない。そのことから、民主主義は、人権に比べて価値の普遍性が低いことがわかる。それゆえ、民主主義を人類の普遍的な価値と強く主張するならば、抵抗や反発が返ってくることは避けられない。

 次回に続く。

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https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
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