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2021年08月03日10:19

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仏教190〜仏教のアップデートを図る

●仏教のアップデートを図る

 20世紀の半ば、大東亜戦争の敗戦後の日本では、新宗教団体が多数設立された。そのうちの多くは仏教系だった。新しい仏教団体の叢生は、鎌倉時代に新たな宗派群が出現して以来の現象と言える。その一方、既存の仏教宗派は、葬式仏教といわれるような形骸化を一層色濃くした。しかし、既存仏教の中にも新たな動きを見出すことはできる。そうした動きとして注目されるのが、坐禅の実践から現れた仏教のアップデートを目指す活動である。
 仏教のアップデートとは、曹洞宗の禅僧・藤田一照とテーラワーダ仏教の比丘(出家修行者)である山下良道が、共著『アップデートする仏教』(幻冬舎新書)で唱えているものである。その内容を論じるには、日本の大乗仏教、現代アメリカの仏教、東南アジアのテーラワーダ仏教について概説する必要がある。そこで、これらの概説を終えたところで、藤田と山下の説く仏教のアップデートを取り上げ、その可能性を検討することした。
 藤田と山下は、20代で出家し、兵庫県山中の安泰寺で6年間、曹洞禅の修行をした。彼らにとって、安泰寺は、日本仏教が形骸化してしまっている中で、本格的な修行のできる例外的な場所だった。二人は、ここで実践を通じて道元の教えを学んだ。それが現在に至るまで彼らの土台となっている。
 二人は、1980年代後半に曹洞禅を伝えるために米国に派遣され、3年間、共に活動した。ここで彼らは、現代アメリカの仏教と出会った。日本では触れることのなかった様々な形態の仏教に触れた。それが彼らに強い刺激を与えた。
 藤田は、以後も17年半にわたって米国で、禅僧としてアメリカ人や在米の留学生等に坐禅指導を行った。平成17年(2005年)に帰国し、現在は神奈川県の葉山で坐禅会を主宰している。また、曹洞宗国際センター所長を務めている。それゆえ、彼は一貫して曹洞宗の修行者であり、指導者である。大多数の曹洞宗の僧侶との違いは、米国での長年にわたる豊富な経験である。
 一方、山下は、米国でテーラワーダ仏教の指導者ティク・ナット・ハンが説くマインドフルネスに惹かれるようになり、藤田とは別の道を進んだ。イタリアで仏教の修行をした後、平成4年(1992年)に帰国した。その3年後、平成7年(1995年)にオウム真理教の事件が起き、日本中を震撼させた。オウム真理教は、一般に仏教系の団体と理解された。仏教徒としてこの事件に衝撃を受けた山下は、事件後に来日したハンと対談する機会を得た。この時、藤田はハンの通訳として同行していた。
 山下は、ハンとの対談を通じて、マインドフルネスをより深く学び実践したいと考え、テーラワーダ仏教の瞑想に取り組んだ。さらに平成13年(2001年)には本場のミャンマー(ビルマ)へ渡って、比丘となって修行を積んだ。その修行の最終段階で、大乗仏教の教えを自分の体験として「現実に体験できた」という。その後、山下は、大乗仏教でもテーラワーダ仏教でもなく、それらに分かれる前の仏教として「ワンダルマ仏教」を目指すようになった。ワンダルマとは「一つの法」を意味する言葉だろう。山下は、平成18年(2006年)から、鎌倉を拠点に独自の「ワンダルマ・メソッド」を教えている。
平成25年(2013年)、藤田と山下は、互いの仏教体験をもとに対談し、共著『アップデートする仏教』を発刊した。そこで彼らは、それぞれの修行と体験をもとに、仏教のアップデートを標榜している。

 次回に続く。

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