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2021年08月01日10:11

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仏教189〜遺骨の処理方法の多様化

#葬儀の簡略化と経費節減(続き)
 簡略化・低費用の葬儀の形態として、家族葬・直葬が増えている。遺骨についても、墓地に埋葬しない方法も現れている。
 家族葬とは、家族・親族を中心に営まれる葬式である。少数の参列者で、通夜・告別式等の儀式を行う。家族・親族に加えて、故人の親しい友人が参列するものもある。それも含めて、家族葬と総称することが多い。
 家族葬という言葉は、平成時代の初期から使われたとみられる。それ以前は密葬といい、後日、本葬を行うのが普通だったが、現在では家族葬のみで済ませる場合が多くなっている。また、家族葬の後日に「偲(しの)ぶ会」「お別れ会」等を行う例もあるが、密葬に対する本葬とは異なり、儀式的な要素は少なく、非宗教的な集会とする場合も多い。
 核家族化と少子化によって、家族・兄弟姉妹の人数が少なくなっていること、親族の居住地が分散し親族関係が希薄になっていること、高齢化によって故人の友人や職場での人間関係が減り、従来型の葬儀を行う必要がなくなっている世帯が増えている。
 こうした傾向の中で、1998年(平成10年)頃から現れたのが、直葬である。直葬とは、通夜・告別式等の宗教的な儀式を行わず、遺体を法律で定められた死後24時間の間、自宅や病院等に安置した後、直接火葬場へ運び、火葬に付す葬儀をいう。近親者や友人等の限られた関係者だけが立ち会い、僧侶は呼ばない場合が多い。火葬場で読経や祈祷が行われる事例もある。
 葬儀費用は、棺、遺体を運ぶ車両代、火葬場の利用料等のみゆえ、20万円前後とされ、平均的な葬儀費用の1割未満である。また、通夜・告別式等の儀式がなく、短時間で終わる。
 直葬は、もともと経済的に困窮している人や身寄りのない人に対して行われる福祉的な葬儀の方法だったが、家族葬のところに書いた社会的な傾向が進む中で、家族・親族による一層簡素な葬儀の形態となってきている。
 NHKは、2013年(平成25年)に、全国の葬儀業者200件を対象に葬儀に関する調査を行なった。その結果、葬儀全体に占める直葬の割合は、関東地方では22.3%を占めた。近畿地方では9.1%とそれより少ないが、大都市圏では葬儀の一つの形態として定着したとみられる。
 家族葬・直葬に共通する傾向として、特定の宗教に基づかない無宗教式の葬儀を行う例も珍しくなくなりつつある。

#遺骨の処理方法の多様化
 人が死んだ後、遺体をどうするかに続いて、遺骨をどうするかが、次の課題となる。伝統的には、遺骨を骨壺に入れて、墓所に埋葬する。墓地や納骨堂に収めるのが一般的であり、遺族は墓所の管理を寺院や霊園に委託し、管理料や永代供養料を支払う。これに対し、新たな方法が現れ、遺骨の処理方法が多様化している。
 新たな遺骨の処理方法として、増えつつあるのが、散骨である。散骨とは、死後、火葬された遺骨を墓地に埋葬せず、細かく砕いて遺灰を海や山、空等に撒く葬送及び遺骨処理の方法である。
 わが国では、墓地埋葬法によって墓地以外に遺骨を埋めることを禁じており、散骨は、違法行為と認識されてきた。しかし、1991年(平成3年)にNPO法人「葬送の自由をすすめる会」が、散骨を「自然葬」と呼んで相模灘で初めて公に実施した。自然葬とは、故人が自然に還ることを願って行われる葬送をいう。同年、法務省は、散骨について、「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り違法性はない」という見解を示した。これを受けて、同会はその後も各地で散骨を実施してきた。
 近年、多額の費用のかかる葬式を不要としたり、自然への回帰を願望する考えから、散骨を希望する人が増えつつある。海での散骨は、法の規制の対象とならないことから、「海洋散骨」を行う業者が営業している。遺骨を粉骨し、船舶で東京湾等に散骨する。代行費用は5万円程度、船舶を遺族の貸し切りでする場合は10万円程度とされる。陸地でも埋葬地として許可された場所であれば、散骨は合法である。寺院や霊園等が所有する山林に散骨する方法も行われている。
 墓を建てずに遺骨を処理する方法としては、散骨以外に樹木葬、宇宙葬、手元供養という方法も現れている。樹木葬は、墓石を建てる代わりに植樹をして、その下に遺骨を埋葬するものである。寺院や霊園が所有する土地で一定の区画を販売するものは、東京近郊で50万円程度とされる。宇宙葬は、人工衛星にカプセルに入れた遺骨を入れて、宇宙に打ち上げるものである。100万円ほどの費用がかかる。手元供養は、遺骨を納骨容器やペンダントに入れたり、プレートや人工ダイヤモンドに加工したりして、自宅や手元に置いて供養するものである。これらの方法を請け負う業者が現れている。
 以上、葬儀の簡略化と経費節減、遺骨の処理方法の多様化について概述した。今後、ますますこれらの新しい傾向が強まっていくだろう。その進行は、葬儀と法事、墓の管理を主としてきた仏教の寺院には、大きな収入減となる。葬式仏教と化していた日本の仏教は、人々の意識と行動の変化によって、存立の土台が崩れてきているのである。

 次回に続く。

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