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2021年06月24日10:06

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中国はどういうシナリオで台湾・尖閣を攻めるか1

 共産中国の台湾侵攻の時期が迫っている。最も起こり得るシナリオは、台湾侵攻と尖閣奪取を一体のものとしたシナリオである。言い換えれば、台湾有事は、即日本有事となるということである。
 本稿は、その事態に備えるため、日本や米国の防衛・安全保障の専門家たちが想定する中国の台湾侵攻・尖閣奪取のシナリオを紹介するものである。10回ほどの連載を予定している。

●図上演習では何度も米軍が敗れる

 本年3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン前司令官は、「中国が向こう6年以内に台湾に侵攻する」との見通しを述べた。6年後に、人民解放軍は建軍100周年を迎える。それまでに成果を上げようとするだろうという見方である。4月下旬にデービッドソン交代したジョン・アキリーノ現司令官は「中国の台湾侵攻は大多数が考えるより間近だ」と警告している。
 本年3月27日米NBCニュースは、中国の台湾侵攻を想定した米国防総省の図上演習で、米軍がしばしば敗北しているとし、数日から数週間のうちに中国による台湾全面侵攻が完了する可能性が高いことが明らかになったと報道した。
 この図上演習は米国を想定したブルーチームと、中国を想定したレッドチームに分かれて行われた。元米国防次官補代理で、演習に協力している米シンクタンク、ランド研究所のデビッド・オクメネク研究員は、NBCに対して「台湾の空軍は数分間で全滅し、太平洋地域の米空軍基地が攻撃を受け、米国の戦艦と戦闘機は中国の長距離ミサイルに阻止される」と説明した。「ブルーチームが断固として介入した場合も、(レッドチームの)侵攻を退けるとは限らない」とも語った。
 オクメネクは朝日新聞の取材に応じ、「中国の軍事ドクトリンは、紛争の早い段階で台湾の空軍基地やその他の標的を攻撃すると想定している。米軍は台湾防衛を支援するために迅速に対応する姿勢をとらなければならない」と語った。
 また、米国の国防ウエブサイト「Defense News」は、次のように伝えている。
 「2018年に実施された南シナ海シナリオに関する米中戦争の兵棋演習(ウォーゲーム)において、米軍はほぼ現在の戦力で戦ったが、記録的な短時間で大敗北を喫した」「2019年に実施された台湾シナリオでは、米軍のインサイド部隊(註 第1列島線に配置された部隊)とアウトサイド部隊(註 第1列島線の外側から戦力を発揮する米海軍や米空軍など)の効果を比較する形式で行ったが、米軍が敗北した。その結果を基にして、インサイド部隊とアウトサイド部隊の最善の組み合わせを考えることになった」
 「これら2回の兵棋演習の結果を踏まえ、2030年を想定した兵棋演習においては、まだ具体化されていない装備等を含め、様々な施策を実施した想定で米軍戦力を準備した結果、米軍が解放軍に勝利した」と。
 こうした報道か読み取れるのは、現時点では、共産中国が台湾侵攻を行った時、米軍が勝利することは極めて難しいということである。その状況を数年内に逆転できるのかについて、私の知る限り確かな見通しは示されていない。また、中国は、その間にも戦力をさらに増強し、また台湾統一のためにあらゆる手段を取るだろうことを認識しなければならない。

●渡部悦和元陸将氏によるシナリオ

 元陸将の渡部悦和氏は、共著『現代戦争論―超「超限戦」- これが21世紀の戦いだ』 (ワニブックス)で、共産中国の超限戦を解き明かし、これに対抗するため「超・超限戦」を説いている。「超・超限戦」とは、超限戦が邪道であるのに対して、日本が取るべき正道の戦い方である。
 中国の超限戦とは、人民解放軍の喬良と王湘穂という二人の空軍大佐が1999年に発表した戦略である。世界の戦争史の画期となった湾岸戦争(1990年〜1991年)などにおける米軍の戦略、作戦、戦術を研究して導き出された戦略であり、シナの伝統である孫子の兵法を融合したものである。
 渡部氏によると、中国の超限戦とは、「文字通りに『限界を超えた戦争』であり、あらゆる制約や境界(作戦空間、軍事と非軍事、正規と非正規、国際法、倫理など)を超越し、あらゆる手段を駆使する『制約のない戦争(Unrestricted Warfare)』である。正規軍同士の戦いである通常戦のみならず、非軍事組織を使った非正規戦、外交戦、国家テロ戦、金融戦、サイバー戦、三戦(広報戦、心理戦、法律戦)などを駆使し、目的を達成しようとする戦略である。倫理や法の支配さえも無視をする極めて厄介な戦争観である」(「中国が仕かける超限戦の実態と人民解放軍改革」)
 中国やロシアは、超限戦の戦略思想を取り入れ、米軍の戦略を超える新たな戦略を生み出した。欧米では、それを「ハイブリッド戦」と呼ぶ。渡部氏は「全領域戦」と呼んでいる。領域とは、米軍が使用しているドメイン(domain)という用語の和訳である。陸・海・空といった領域に留まらず、宇宙・サイバー・電磁波という領域を合わせて、全領域と言う。
 渡部氏は、共産中国は、台湾侵攻において全領域戦(all-domain operations)を展開すると見ている。2020年代の今日における現代戦は、宇宙・サイバー・電磁波の領域を重視した戦争であり、台湾侵攻が全領域戦として遂行されるのは当然である。我々はこうした認識を以って、中国のシナリオを想定・検討しなければならない。また、中国の戦略は超限戦の思想に基づくものゆえ、戦時と平時、軍事と非軍事等の区別はなく、軍事的な侵攻以前から「非軍事組織を使った非正規戦、外交戦、国家テロ戦、金融戦、サイバー戦、三戦(広報戦、心理戦、法律戦)などを駆使し、目的を達成しようとする戦略」が台湾に対して実行されることを理解しなければならない。
 さて、渡部氏は、JBPress 2021.6.17付けに「衝撃、中国人の7割が武力による台湾統一を支持〜台湾有事の引き金は、中国の自信と驕りによって引かれる」と題した論文を載せた。この論文の中で、渡辺氏は、中国による台湾侵攻のシナリオについて書いている。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65698?fbclid=IwAR1WO7KcaaNHVt6Ll6Q1TecaW6OeK5dOq07z3cm_svr5ZG55WdgPfg2HcoQ
 その論文からポイントなる部分を抜粋して紹介する。
「中国にとって、台湾の平和的な統一を実現できれば理想的だが、言うは易く行うは難しい。そのため、習近平主席は、台湾併合のためには軍事力の使用を含むあらゆる手段を排除しないと明言している。その軍事的統一の裏付けが2015年末から習近平主席が主導してきた人民解放軍の大改革である。軍の大改革の主目的は台湾軍事統一に不可欠な米軍のような統合作戦能力を獲得することである。
 習近平主席は、台湾有事について、やり方によっては米軍に対抗できると思っている可能性が高い。彼が狙っているのは、米軍の対応ができない方法で奇襲的に台湾を占領することであろう」
 「習近平主席の人民解放軍改革は、戦略支援部隊の新編などにより、中国の宇宙戦、サイバー戦、電磁波戦の能力を向上させた。例えば、電子戦を使い米軍の早期警戒システムの機能を不全にすることも考えられる。サイバー攻撃により、重要インフラに局地的かつ一時的な破壊的影響を及ぼす可能性もある。
 弾道ミサイルや巡航ミサイルを含む中国の攻撃兵器は、数日のうちに西太平洋の米軍基地を破壊する可能性がある」

 次回に続く。

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