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2021年06月16日10:34

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イスラエル・ハマス紛争の複雑な実態2

 イスラエル・ハマス紛争の問題の背景について専門家の中では、アラビストで元外交官の三菱総合研究所主席研究員・中川浩一氏が、ハフポスト2020.10.13付の記事で詳しく語っている。はやりトランプ政権時代の発言である。
 「この26年間、何も動きがなかった中東地域で、中東のシリコンバレーとも呼ばれ、ハイテク産業の集積地であるイスラエルのテルアビブ、中東の巨大経済ハブであるUAEのドバイ、オイルマネーに溢れるアブダビ、中東の金融センターであるバーレーンが結びつく今回の合意は、間違いなく『歴史的だ』と言えます」
 「最後の中東戦争から50年近く経っており、アラブ諸国では若者の人口が増えている。また、指導層も大幅に若返っている。直接戦争を知らない世代が増え、奪われた土地を取り戻すという『アラブの大義』の意義が薄れ、パレスチナ問題への関心が低下している」
 「(註 UAEもバーレーンも産油国だが、脱石油依存を目指している)石油はいずれなくなる。オイルマネーにいつまでも依存していては、いずれ国家運営が立ち行かなくなる。そうした危機感から、製造業やサービス業、観光業などに力を入れ、産業の多角化を進めてきました。そんな中、コロナ禍による経済活動の停滞もあり、中東の『ハイテク国家』であるイスラエルとの国交正常化による経済的なメリットの方が上回った」
 「本音ではパレスチナ問題を消し去りたいイスラエルにとっては、国交正常化でアラブ諸国にくさびを打つことで、国際社会にイスラエルとアラブは和解したと見せかけ、パレスチナ問題の関心を一層低下させたいとの思惑もあります」
 「今回の国交正常化の陰で、置き去りにされているのがパレスチナです」「今回の合意で陰に隠れたパレスチナへの支援を強化することが、国際社会に求められる日本の役割だ」
 ハマスの背後には、イスラエルと敵対するイスラーム教シーア派の大国、イランがある。ハマスはイランからロケット弾を入手してきた。また、イランから技術支援や教育指導を受け、ロケット弾の製造拠点や地下トンネル網を建設してきたといわれる。
 ハマスは、イスラエルとの大規模交戦をすることで戦闘能力を誇示し、パレスチナ内部で求心力を高める狙いがあると見られる。一方、イランは、イスラエルと一部のアラブ諸国が和解したことで、両勢力が反イランで結束するのを防ぐため、イスラエルとハマスを対立させ、ひいてはイスラエルとアラブ諸国の間に亀裂を入れようという思惑があると見られる。
 本年5月中旬、イスラエル・ハマス紛争が勃発すると、パレスチナ自治政府は停戦を呼び掛けたが、ハマスはそれには従わなかった。平和ではなく戦闘を拡大しようとした。イスラエルとの戦闘能力を誇示して、自治政府のアッバス議長の求心力を低下させ、パレスチナ内部で自らの求心力を高める狙いがあると見られた。
 主要なメディアは、ガザ地区に空爆を行うイスラエルを非難する記事を出し続けた。だが、イスラエル・ハマス紛争でイスラエルが戦っているのは、国家としてのパレスチナではなく、イスラーム教原理主義組織のハマスである。イスラーム思想の研究者、飯山陽(あかり)氏が語るイスラエル・ハマス紛争の実相は、主要メディアが描くものとは、全く違う。JBpress の記事から紹介する。
 「イスラエル軍は、ガザからロケット弾攻撃を繰り返すイスラム過激派テロ組織ハマスの拠点やロケット弾発射台、武器庫、地下に張り巡らされたトンネル網、ハマス幹部の自宅などを標的とし、ピンポイントで攻撃している。また攻撃実行の1〜3時間前には、それらの建物の近隣住民に電話やテキストメッセージで退避するよう通告している。これはイスラエル軍がテロリストとテロのインフラだけを攻撃し、できるだけ民間人に被害が及ばないよう尽力しているからだ」
 「メディアはハマスが日本やアメリカ、EUなど主要国でテロ組織指定されていることにも言及せず、『イスラム組織』などと説明してはぐらかす。ハマスに資金や武器を提供しているのは、世界最大のテロ支援国家であるイランやトルコ、カタールであることも伝えない。ハマスがメンバーをUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に送り込んで実質的に支配し、国際的な援助物資や資金を収奪していること、そのせいで一般のパレスチナ人に支援が全く行き届かないことも報道しない」
 「ハマスは子供や女性を『人間の盾』として利用することも厭わない。イスラエル軍は今回の作戦でも、ガザの学校や病院にハマスの『テロ・トンネル』の入り口があるのを多く確認したと報告している。ハマスは弱者を隠れ蓑にする卑怯者でもある」
 「本当にパレスチナ人をかわいそうだと思うならば、怒りを向けるべきはハマスである。メディアの偏向報道と印象操作にまんまと騙されてイスラエルに怒りを向けても、パレスチナの人々が『解放』されることはない。イスラエルに怒りを向けることは、テロ組織ハマスの思惑通りでもある。世界の世論がイスラエルを非難しハマスに同情的になれば、ハマスの思う壺だ」と。
 5月21日にイスラエルとハマスは停戦に合意した。停戦は、イスラエルと国交があり、ハマスとのパイプも持つエジプトが仲介した。マクロン仏大統領は、エジプトに仲介を求めた。マクロンはロスチャイルド家とそのグループの政治部長的存在である。イスラエルはロスチャイルド王国というべき国家である。私は主要メディアの記事は書かない交渉が行われたものではないかと推測する。
 ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区を統治するのはパレスチナ自治政府である。自治政府とイスラエルの和平協議は2014年に中断したままで、自治政府のアッバス議長の求心力低下は著しくなっている。これに対し、ハマスは今回、イスラエルへの攻撃に対して、イスラーム教聖地の「守護者」の立場を強調することで、パレスチナ人の共感を呼び、勢力拡大の機会としたという見方もある。イスラエルの空爆でハマスは大きな打撃を受け、停戦を余儀なくされたものだろうが、今後の反イスラエル闘争のために、ここは一端、矛を収めたとも考えられる。
 停戦後、戦闘が実際に止まり、その状態が安定的に続くかは要観察である。停戦は解決ではなく、次の戦闘までの一時休止に過ぎないだろう。長年、戦闘と停戦が繰り返されてきたからである。
 停戦後、イスラエルでは、政権交代が起こった。今回の紛争が起こる前、3月23日の国会議員選挙で右派のリクードが第1党となり、党首のベンヤミン・ネタニヤフが連立協議に臨んだが、期限までにまとまらなかった。次いで第2党で中道のイェシュアティドの党首ヤイル・ラピドが協議を主導した。ハマスとの紛争の終結後、与党リクードを除く野党8党が連立政権を樹立することで合意し、レウベン・リブリン大統領に通知した。6月13日国会(定数120)において賛成60、反対59の1票差で新政権が承認された。棄権が1だった。この結果、12年連続で首相を務め、在任期間が通算15年に及んだネタニヤフが退任した。後任の首相には、与党リクードより右のユダヤ人極右政党ヤミナのナフタリ・ベネット元国防相が就いた。
 新政権はヤミナなどの右派3党、イェシュアティドなどの中道・左派が4党、これにアラブ系政党のラアムを加えて8党が連立を組んだもの。実に極右から左派までという大連立ゆえ、各党の政策の差が非常に大きい。そのうえ、アラブ系政党がイスラエルの歴史上初めて連立政権に加わる。それ自体は画期的なことだが、政権運営が複雑なものになることは間違いない。大連立政権は収賄罪に問われたネタニヤフ首相を退任させることが唯一の共通目標であり、その一点のみの結合で果たしていつまで続くか懸念される。
 ネタニヤフはイランやパレスチナに対して強硬姿勢を貫いた。後任のベネットはネタニヤフより思想は強硬と見られるが、政権内で中道や左派、アラブ系が反対すれば、有効な政策を打てなくなるだろう。首相は、2年後にはイェシュアティド党首のラピド元財務相に交代する約束だが、こういう政権は非常に不安定である。政権内で大きな対立が起きれば、空中分解して短命に終わるだろう。
 それにしてもネタニヤフは、新型コロナのワクチン接種を世界最速で進め国民に安心をもたらしていながら、収賄疑惑にまみれ、ひどく嫌われたものである。
 11日間の戦闘で停戦したハマスの側としては、結果としてイスラエルの政権を転覆させたという大きな戦果を上げたことになる。(了)

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