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2020年08月22日10:14

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人種差別10〜人種問題の米国大統領選挙への影響

●人種問題の米国大統領選挙への影響

 今年(令和2年[2020年])は、11月に大統領選挙が行われる。5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで白人警官による黒人死事件が起こり、これに対する抗議デモが全米各地に拡大しことによって、にわかに人種差別問題が選挙の一つの争点として浮かび上がった。それと同時に、米国社会の深刻な事情が浮かび上がった。
 福井県立大学教授で国際政治学者の島田洋一氏は、米国の黒人と治安の問題について掘り下げた考察を行なってきた。今から4年半ほど前、島田氏は月刊正論2015年11月号の「アメリカの深層3」に、次のように書いた。
 「2014年8月、ミズーリ州ファーガソンで起こった事件を、日本のメディアは、アメリカの主流メディアにならい、通常、『丸腰の黒人少年が白人警官に射殺された』と表現する。警官が不起訴となった直後に大規模な抗議デモが発生、一部が暴徒化して略奪、焼き討ちに発展した。Hands Up!Don’t Shoot(手を挙げた!撃つな)、Black Lives Matter(黒人の命は大事だ)が、以後、運動の標語となり、同名の政治団体も生まれた。
 が、ファクトはどうだったか。『丸腰の黒人少年』とされるマイケル・ブラウンは身長193センチ、体重133キロの18歳で、警官と遭遇する前、コンビニ強盗をしていた。公開された監視ビデオ映像を見ると、店員を突き飛ばし悠々と歩み去っている。両手を挙げたのに警官が発砲したという通行人の証言(後に、この『通行人』はコンビニ強盗の共犯と分かる)に反して、ブラウンは警官を襲い銃を奪おうとしたという、別の目撃証言(複数)も現れた」
 「ウォール・ストリート・ジャーナル記者のジェイソン・ライリー(黒人)は、『黒人の命にとって、現実には、マイケル・ブラウンのような男の方が警察より遙かに大きな脅威なのだ』と疑問を呈する(2015年9月8日付)。事実、アメリカの殺人事件は、低所得層居住地区において黒人が黒人を殺害というケースが最も多い。
 同記者は、『警察が萎縮することで最も危険に晒されるのは黒人だ』というある知事の言葉を引きつつ、警察バッシングが続いたファーガソンなどいくつかの地域で、凶悪犯罪の検挙件数が顕著に減る一方、発生件数が顕著に増えている事実に触れる。警察が『おとなしく』なった分、犯罪者が大胆になったと見る他ないだろう」。
 「『正義なければ平和なし』(No Justice, No Peace)を掲げ、白人警官糾弾運動の先頭に立ったアル・シャ−プトン師を、主流メディアは『黒人指導者』と描くが、保守派は典型的なデマゴーグと捉える。トークラジオ・ホストのケビン・ジャクソン(黒人)は、シャープトンらを『人種ゴロ』(race pimp)と呼んだ上、彼らの煽動のせいで強盗、焼き討ちに遭い、営々と築いた資産や職場を失った商店主、従業員こそ真の犠牲者ではないのかと怒りを露わにする」
https://jinf.jp/feedback/archives/17548
 島田氏は、本年5月のミネアポリス白人警官黒人殺害事件の後、ファーガソンでの黒人少年射殺死事件について補足を書いた。7月15日付け産経新聞の同氏の記事によると、
「複数の証言によれば、(註 射殺されたブラウンは)パトカーの窓越しに警官を殴って銃を奪おうとし、さらに車外でも襲いかかったため警官が発砲した」という。また、「大陪審は正当防衛と判断し警官を不起訴とした。しかし、暴動となったため、州当局が再検証を行い、さらにオバマ大統領の指示でホルダー司法長官(黒人)主導の再々検証も行われた。そのいずれも警官は不起訴相当という結論に達している。 にもかかわらず、リベラル・メディアは『白人警官が無抵抗の黒人少年を射殺』を暗示する報道を続けた。『手をあげた!撃つな』のプリントシャツを着るスポーツ選手や芸能人も多数出た。何よりオバマ大統領が『構造的な人種偏見が事件の背後にある』とした当初の発言を取り消さず、逆にBLMのリーダーを招いて指導力をたたえるなどしたことが大きい」と島田氏は書いている。
 さて、日本では、今年5月の白人警官による黒人殺害死事件で初めて“Black Lives Matter” “No Justice, No Peace”というスローガンを知った人は、日本に多いだろう。だが、これらのスローガンは4年以上前から使われているものである。黒人殺害事件への抗議デモは、この事件によって突発的に起こったものではない。組織的な活動が行われてきているのである。しかし、日本のマスメディアの報道は、こういうことを視聴者にほとんど伝えていない。島田氏が「アメリカの殺人事件は、低所得層居住地区において黒人が黒人を殺害というケースが最も多い」と書いている事実についても、日本のマスメディアの多くは伝えていない。
 2016年の大統領選挙は、民主党ヒラリー・クリントンと共和党ドラルド・トランプが争った。人種差別問題は争点の一つになった。島田氏は、大統領選挙を前にして月刊正論の同年9月号の「アメリカの深層13」に次のように書いた。
 「アメリカではもう一つ、治安における懸念事項がある。『警察の人種差別に反発』した黒人による白人警官射殺事件が相次いで起こるなど、オバマ政権下で顕著に悪化した『黒人対警察』あるいは『警官との戦争』(war on cops)と呼ばれる状況である。草の根保守に絶大な影響力を誇るトークラジオ・ホストのラッシュ・リンボーは、『昔は親が子に、警官に逆らうな、素直に応じろと教えた。今や何か事件が起こるたびに人種差別を示唆する大統領の下、警察への反抗こそ正義という雰囲気になっている。オバマは差別の要素がないと明らかになっても、決して発言を訂正しない。そんな状況下、警察による“脅威の誤認”も増えざるを得ないが、それをまた偏見のせいにされる』と述べる。
 ここ数年来、対警察抗議デモの中心にあったのが運動体『黒人の命は大事だ』(Black Lives Matter, BLM)である。民主党や様々な左翼団体のタニマチとして知られる相場師のジョージ・ソロスが最大の資金提供者となってきた。オバマ大統領も、リーダーらをホワイトハウスに招き、その指導力を称えるなど、BLMの社会的認知に一役買ってきた。
 一方、保守派はこの運動を厳しく批判する。ニューヨーク市の治安を劇的に改善させたことで知られるルドルフ・ジュリアーニ元市長は、『黒人の命が大事だというなら、極めてまれな白人警官による発砲死にのみ焦点を当てるのではなく、黒人が14時間に一人の割合で、主に黒人によって殺されているシカゴ(オバマ大統領の地元)に行って問題に取り組むべきだ』と発言し、物議を醸した」
 「民主党のヒラリー大統領候補は、従来からの黒人の支持層を固めるべく(黒人の90%以上が民主党に投票)、オバマ氏同様、警察の人種偏見を示唆し続けている。一方、共和党のトランプ候補は、犯罪分子に迎合しない『法と秩序候補』を自称し、警察全面支持を打ち出している。『治安』がますます大きな争点となってきた」
https://island3.exblog.jp/26187469/
 最後に島田氏が触れている2016年の米大統領選は、得票数ではヒラリーがトランプを286万票上回ったが、獲得した選挙人数ではトランプが306人で、ヒラリーの232人を上回った。米国の主要メディアは、直前までヒラリーの大勝を予想し、わが国のマスメディアはその予想を真に受けて流し続けた。選挙後、主要メディアは実際の世論の動向を把握していなかったことが明らかになり、マスメディアへの信頼は大きく低下した。

 次回に続く。

関連掲示
 私は、米国の大統領選挙について、2012年の民主党バラク・オバマと共和党ミッド・ロムニーの戦い、2016年民主党ヒラリー・クリントンと共和党ドナルド・トランプの戦いについて、それぞれの時期に書いた。
・拙稿「オバマVSロムニー〜2012年米国大統領選挙の行方」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12m.htm
・拙稿「トランプVSヒラリー〜2016年史上最低の米国大統領選挙」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12.htm
 目次からD08へ
・拙稿「トランプ時代の始まり〜暴走か変革か」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12-3.htm

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