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2020年08月20日08:26

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仏教43〜東南アジアでの展開:ミャンマー、タイ他

●東南アジア
 
 東南アジアの仏教は、一部の地域では廃れ、記録や宗教的遺構、遺物によって知られるのみとなっている。そうした地域では、仏教が衰退した後、イスラーム教、ヒンドゥー教等の他の宗教が支配的になっている。その反面、今日でも国民の多数が仏教を信奉している国々がある。ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムの五か国がそうである。東南アジア諸国連合(ASEAN)の10か国のうちの半数を占める。

◆ミャンマー(ビルマ)
 ミャンマーは、歴史的にはビルマという。ビルマには、5世紀に南インドから、また6世紀にスリランカから上座部仏教が伝わった。大乗仏教やヒンドゥー教も伝わった。11世紀にパガン朝がビルマ全体を統一すると、仏教が重んじられ、以後、人口の約70%を占めるビルマ族の統一国家では上座部仏教が公的に信奉されてきた。11世紀には、ビルマから、当時仏教が衰退していたスリランカに逆輸出された。だが、ビルマでも仏教は衰退と繁栄を繰り返し、18世紀にはタイから仏教が再輸入された。
 ビルマは、1886年に英領インドの一州となったが、1935年にインドから分離した。大東亜戦争で一時日本が占領して植民地から解放したが、日本の敗戦に終わった。戦後、ビルマは1948年イギリス連邦に参加せず、ビルマ連邦として独立した。社会主義共和国となって以降のビルマ政府は、政教分離政策を取り、仏教が政治化することを警戒している。88年に国軍がクーデタを起こして軍政を敷き、89年に国名をミャンマー連邦に改称した。
 ミャンマーは、今日も仏教国である。日本外務省のサイトによると、2014年の国勢調査の結果、仏教徒が人口の87.9%を占める。この割合は、カンボジア、タイに次ぐ。他はキリスト教徒6.2%、イスラーム教徒4.3%である。

◆タイ
 今日、タイと呼ばれる地域は、古代から様々な部族・国家・王朝が興亡した。13世紀初頭には、クメール族が支配していたが、1238年にタイ族が独立して、最初のタイ王国であるスコータイ王朝を築いた。以後、アユタヤ王朝、トンブリー王朝、そして現在のチャクリー王朝に至っている。
 もともとタイでは、先住民族がピー信仰(アニミズム)をしていた。タイ族が支配するようになったスコータイ王朝時代に上座部仏教が伝わり、国教として確立された。西欧列強が席巻する19世紀の東南アジアにあって、タイは英仏の勢力圏の緩衝地帯として唯一独立を維持し、植民地化を免れ、今日まで独立を維持してきた。歴代の国王は仏教教団を保護し、仏教教団は王権の正統性を確立する役割を果たしており、今日もその伝統が続いている。
 タイ統計局が2011年に実施した調査によると、回答者の94.6%は仏教徒で、東南アジアで最も多数の信徒を擁する仏教国である。他は、イスラーム教徒4.6%、キリスト教徒0.7%である。

◆カンボジア
 カンボジアは、クメール人が人口の9割を占める。2世紀にクメール人の建てた扶南国では、ヒンドゥー教と仏教の混交した宗教が信仰されていた。7世紀に扶南を征服した真臘では、大乗仏教が広く信仰された。その後、分裂した真臘は、9世紀初頭に再度統一され、アンコール朝が成立した。アンコール朝では、ヒンドゥー教と大乗仏教の混交した宗教が栄えた。国王は神や仏の化身として民衆を救済するという思想が確立され、王権と宗教との結びつきが強かった。12世紀に建造されたアンコール・ワットは、ヒンドゥー教と大乗仏教が融合した独自の宗教施設である。カンボジアは15世紀以降、ベトナムとタイに国土を侵食され、タイの上座部仏教が浸透して、今日まで栄えている。
 19世紀半ばからフランスがインドシナ半島の植民地化を進め、カンボジアは1887年に仏領インドシナの一部となった。大東亜戦争で日本が進出し、仏領インドシナが解体された。その後、カンボジアは1945年に独立を宣言し、53年に完全に独立を達成した。
 カンボジアは、上座部仏教を国教とする。カンボジア政府当局によると、2013年時点で、国民の96.90%が仏教徒であり、世界の仏教国の中で最も人口に占める仏教徒の割合が高い。他に、イスラーム教徒が1.1%、キリスト教徒が0.5%である。

◆ラオス
 カンボジアの隣国であるラオスは、古代にシナ南部の烏蕃族による王国があった。中世にはラオ族が王朝を建てたが、18世紀に3つに分裂し、隣国の影響下に置かれた。19世紀半ばにフランス人がインドシナに進出した時、それら3国はタイの支配下にあった。19世紀末にタイの支配を免れたもののフランスの保護国となり、仏領インドシナ連邦に編入された。大東亜戦争で日本が占領し、仏領インドシナが解体された後、1945年に独立を宣言し、49年にフランス連合内のラオス王国として名目上の独立を得た。
 フランスが植民地化する前、ラオスはタイから伝わった上座部仏教を信奉する仏教国だった。現在は社会主義国だが、人口の60%を占めるラオ人が主に仏教を信奉している。2009年現在、国民の66.00%が仏教徒である。

◆ベトナム
 ベトナムでは、古代から越人などによる王朝が興亡盛衰した。シナ人やモンゴル人の支配下に置かれた時代もあった。北部はシナ、中部・南部はインドや東南アジア諸国の影響を受けてきた。
 北部は、紀元前3世紀にシナの秦に征服され、漢訳経典を用いる仏教が広まった。10世紀に独立したが、それ以後も、シナ文化の流入が続いた。シナ仏教は、唐代以降に、シナ独自の宗派である禅宗が主流となり、浄土信仰と融合した。そうしたシナ系の大乗仏教が北部に伝来した。中部は、ヒンドゥー教が主流だが、インド系の大乗仏教も伝わっている。南部は、クメール人が活動してきた地域であり、カンボジアの歴史と重なるので、カンボジアの項目を参照願いたい。
 19世紀にベトナムの南北統一がされると、シナの清から越南という国号を与えられた。また、清代の仏教が流入し、浸透した。当時はシナの清朝が宗主権を有していたが、1840年代からフランスが進出し、ベトナムの植民地化を進めた。植民地支配が強まると、カトリック教会が全面的に擁護された。それまでは、民衆の信仰は、大乗仏教と祖先崇拝・自然崇拝を主としていた。20世紀前半にフランスへの抵抗運動が起こり、第2次世界大戦後も続く独立運動に発展した。1954年に南北に分断されたが、米国とのベトナム戦争を経て、南北が統一され、社会主義国となった。
 現在のベトナムは、仏教徒が約80%で、シナ系の大乗仏教が主流だが、南部にはカンボジアの上座部仏教を信仰する民族がいる。キリスト教徒が約10%で、残りの10%ほどを、ヒンドゥー教、新興宗教のカオダイ教が占める。この数字だけを見ると、ベトナムは仏教国といえるが、近年のアンケート調査によると、仏教徒のうちの約70%は無宗教を選択しており、自覚的な仏教徒は12%程度に過ぎない。社会主義政策の影響が大きいと見られる。
 フランスやアメリカで仏教やマインドフルネスの普及活動を行なっている禅僧ティク・ナット・ハンについては、後に欧米の項目に書く。

 次回に続く。

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