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2020年08月19日10:39

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人種差別9〜米国の二大政党と黒人・ユダヤ人の関係

●反ユダヤ主義の黒人への影響

 ユダヤ人は、ヨーロッパで中世から差別を受けて来た。近代になっても差別は続いた。ヨーロッパには、歴史的に反ユダヤ主義が存在してきた。反ユダヤ主義は、アメリカにも持ち込まれた。アメリカの反ユダヤ主義の特色の一つは、人種的・民族的な集団の重層的な対立構造の中で、反ユダヤ主義が生み出されたことである。白人多数派のキリスト教徒対ユダヤ人という、一元的な対立の図式だけではなく、その他の被差別少数派の集団対ユダヤ人という対立からも、反ユダヤ主義が生み出された。例えば、WASPから差別を受けたカトリックのアイルランド系移民がユダヤ人攻撃の担い手になったりした。
 ユダヤ人が最大の苦難に出会ったのは、20世紀前半のドイツにおいてである。ナチスによって多くのユダヤ人が虐待を受け、生命を失った。米国には、ナチスの迫害を逃れて、多くのユダヤ人が亡命した。第2次世界大戦後、彼らは「ホロコースト」と称する被害体験を強調して、反ユダヤ主義を牽制している。そのための表現と宣伝の手段として、ハリウッド映画や文芸書等が活用されている。
 アメリカの反ユダヤ主義の担い手は、長年、キリスト教徒の白人優越主義者(white supremacist)が中心的だった。しかし、第2次大戦後、WASPによる反ユダヤ主義が衰え、1960年代以降は黒人が反ユダヤ主義の担い手として登場した。
 黒人の多くは、米国社会で最下層にあり、貧困から抜け出せないでいる。一方、ユダヤ人の一部は、年間所得の上位1%や0.1%を構成する大富豪に名を連ねている。黒人の多くは、社会的な格差の是正を求める。だが、富裕なユダヤ人は、古典的自由主義を信奉する白人とともに、「機会の平等」を主張し、「結果の平等」に強く反対する。困窮する黒人たちは、そうしたユダヤ人の姿勢に敵意を募らせるようになった。
 この対立は、宗教的・人種的な対立というより、社会的・経済的な対立という性格が強い。話が複雑なのは、この対立は、社会的・経済的な格差をめぐるものでありながら、ユダヤ人にとっては、黒人による反ユダヤ主義として警戒され、黒人にとっては、ユダヤ人による黒人への人種差別として憎悪されることである。
 黒人の側からのユダヤ人への批判において、ユダヤ人が黒人奴隷貿易に携わったことが問題として浮上している。このことについては、後に述べることにする。

●米国の二大政党と黒人・ユダヤ人の関係

 ここで米国の二大政党、民主党・共和党と黒人・ユダヤ人の関係について書いておきたい。
民主党は、合衆国独自のデモクラシーを形成した第3代大統領トマス・ジェファーソン、第7代大統領アンドリュー・ジャクソンの流れを汲み、1830年から「民主党」を名称にしている。当初、北部では大都市のカトリックやユダヤ系移民に支持され、南部では奴隷制廃止に反対する白人層が支持者であった。しかし、1929年の大恐慌後、フランクリン・ルーズベルトのもとで、所得再分配・中小企業重視・弱者救済を重視する政策を行い、北部や労働者に支持層を広げた。
 一方、共和党は1854年に奴隷制反対の地方政党が各州に成立し、56年これらを統合して現在の党が成立した。共和党は、民主党とは逆に1960年代以降、南部へ進出して、さらに保守的な性格を強めた。その結果、現在は共和党がレッド・ステイツと呼ばれる南部を中心に勢力を持ち、民主党はブルー・ステイツと呼ばれる北部を中心に勢力を持つことになっている。
 政治的立場は、大まかに言って共和党は保守、民主党はリベラルと分類される。共和党は富裕層に支持者が多く、主に大企業・軍需産業・キリスト教右派・中南部の保守的な白人層などを支持層とする。民主党は労働者や貧困層に支持者が多く、主に東海岸・西海岸および五大湖周辺の大都市の市民、ヒスパニック、アフリカ系、アジア系など人種的マイノリティなどを支持層とする。
 民族的・宗教的な集団の関係という点からみると、建国以来アメリカの支配的集団をなしてきたWASPは今日も上流階層をなし、共和党支持者が多い。非WASPには、白人だが労働者集団のカトリックでホワイト・エスニックと呼ばれる集団やユダヤ系が含まれる。彼らは民主党支持者が多い。
 民主党は労働者や貧困層に支持者が多いと書いたが、民主党にはニューヨークの金融資本家から多額の資金を得ているという別の一面がある。これは、ユダヤ系米国人には民主党の支持者が多いことと関係がある。
 黒人とユダヤ人の多くは、民主党を支持しているという点では、政治的に共通の価値観を持っている。民主党を支持するユダヤ人の中には、米国で最も富裕な金融資本家たちもいる。その一方で、富裕なユダヤ人と貧困の黒人との間の社会的・経済的な格差をめぐる対立が存在するという複雑な関係がある。
 ユダヤ人の中には、共和党を支持する者もいる。私は、ユダヤ人は民主党と共和党の両方に資金を出し、どちらの政権になっても米国の政治・経済・外交に影響を与えられるように両掛けしているものと思う。共和党トランプ大統領の長女イバンカの夫、ジャレド・クシュナーはユダヤ人である。トランプは、クシュナーを通じて、国際的なユダヤ社会の巨大な後ろ盾を支えにしていると見られる。彼がエルサレムをイスラエルの首都と認定し、米国大使館の同市への移転を進めたのは、ユダヤ人の期待に応えることで、政権への支持を固めたいという狙いがあると見られる。

 次回に続く。

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