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2020年08月16日10:14

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人種差別8〜米国におけるユダヤ人

●ユダヤ人の存在にも注目すべき

 ここで注目すべきことは、米国におけるユダヤ人の存在である。私は拙稿「ユダヤ的価値観の超克〜新文明創造のために」において、ユダヤ人に関することを総合的に書き、その中で米国におけるユダヤ人について述べている。また拙稿「キリスト教の運命〜終末的完成か発展的解消か」において、キリスト教との関係で米国における人種・民族の問題について書いた。詳しくはそれらの拙稿をご参照願うことにして、ここでは本稿の主題に関係する範囲で、米国における人種差別・民族問題とユダヤ人との関係について述べることにする。
 ユダヤ人は、WASPが主要な集団である米国社会に、後から移民として入った。ユダヤ人は、ヨーロッパで差別を受けた歴史を持っている。だが、米国では、ヨーロッパよりも自由に活動できた。WASPを中心とするキリスト教徒の白人社会は、社会的な流動性を持っている。そこにユダヤ人が参入する余地があった。彼らは人種的には白人ではないが、米国の社会では、黒人ではない有色人種として、広義の白人と意識される。彼らは、優れた経済的・政治的・知的能力を発揮して社会的に上昇していった。ユダヤ教からプロテスタントに改宗し、キリスト教徒となる者も増えていった。
 ユダヤ人の一部は、多くの財産を蓄え、白人の富裕層に参入した。ユダヤ人は、今日アメリカの人口の1.7%(2010年現在)を占めるにすぎないが、アメリカの支配層において、確固たる存在感を示している。
 将来の米国は、ごく少数の富裕な白人とユダヤ系を中心とした集団が社会の最上層を占める。その下の階層は、多民族化が進み、白色人種の大多数と様々な有色人種の集団が併存する。そして、最下層は、多数の黒人が占めるという構成の社会になっていくことが予想される。

●ユダヤ人はWASP支配を崩していった

 米国の社会でユダヤ人が社会階層を上昇する過程は、WASPの支配が緩んでいく過程でもあった。移民の増加と社会階層の変動が続く米国では、WASPの集団に非WASPが流入するに従って、WASPの支配に緩みが生じた。それと同時に、建国以来のアメリカ的な「明白な使命」の観念が薄れていった。20世紀前半からは、超国家的または脱国家的な思想が影響力を持つようになった。超国家的または脱国家的な思想とは、ネイション(国家・国民)の形成・発展に価値を置く考え方に対し、ネイションの枠組みを超えたり外したりして普遍的な価値の実現を追求する思想である。ここでアメリカの支配集団に食い込み、WASPの優位を崩し、超国家的または脱国家的な思想を広げていったのが、ユダヤ人に他ならない。
 歴史的な展開に触れると、1913年設立のウッドロー・ウィルソン政権で、大きな変化が起こった。ユダヤ人金融資本家らによって中央銀行が設立され、第1次世界大戦を通じてユダヤ系軍需産業が発展し、大戦後はユダヤ人の入会を認める外交問題評議会(CFR:Council on Foreign Relations)が開設されるなどして、ユダヤ人が米国の政治・経済に深く参入するようになった。WASP支配が強固だったウォール・ストリートでは、1929年の大恐慌によって、ユダヤ人の投資家が躍進した。1930年代に入ると、ユダヤ人が消費産業やラジオ・映画産業部門で事業を発展させた。1933年誕生のフランクリン・デラノ・ルーズベルト政権では、大統領周辺にユダヤ人が集まり、政治を直接動かすほどになった。ユダヤ人の新興事業家たちはニューディール政策を支持する財界の支柱の一つになった。FDR政権において、アメリカは第2次世界大戦に参戦し、ユダヤ人は軍需産業を中心にさらに勢力を拡大した。
 FDR政権の成立後、ユダヤ人は黒人等の少数民族や労働組合と連携してリベラル連合を形成して民主党を支えつつ政治的な影響力を増していった。それによって、WASPの影響力が低下した。そして、WASP的な価値観に取って代わって、ユダヤ的価値観が支配的になっていった。ただし、このことは、必ずしもユダヤ人の集団が支配集団に成り代わったということを意味しない。WASPの支配集団にユダヤ人が参入し、WASPとユダヤ人が融合して、アングロ・サクソン=ユダヤ連合が出来たのである。
 こうして第1次世界大戦前後から第2次世界大戦終結までの間に、アメリカの支配集団は、WASPだけでなく、彼らと深く結びついたユダヤ系金融資本家とによって構成されるように大きく変化した。ユダヤ人は、1960年代から米国の政治に食い込み、今や米国の外交や軍事を左右するほどの影響力を及ぼすに至っている。

 次回に続く。

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