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2020年08月15日10:11

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仏教41〜インド仏教の衰滅とヒンドゥー教の隆盛

●インド仏教における縁起説の展開

 仏教はダルマについての教えである。その中心となるのは、縁起つまり因縁生起の理法である。教義の縁起の項目に基本的なことを書いたが、その後、仏教の歴史を通じて、様々な縁起説が説かれた。インドで説かれた主なものをここにあげる。
 部派仏教では、縁起説に業の説が加わり、万有一切の現象は衆生の業因によって感じ生じたものとする業感縁起が説かれた。これは、人間の幸不幸や物事の成否のすべては、人間の業(行為)の結果とみなすものである。
 部派最大の学派だった説一切有部は、森羅万象を形成する構成要素を法(ダルマ)と呼び、法は過去・現在・未来の三世に常に実在するとし、諸法相互の関係を縁起ととらえた。そして、その立場から、十二縁起をわれわれの過去・現在・未来の三世にわたる業の因果関係ととらえる三世両重因果説を説いた。過去から現在へすなわち過去因から現在果への因果と、現在から未来へすなわち現在因から未来果への因果という2つの因果関係が、過去・現在・未来の三世に渡って二重になって対応しているとするものである。また、六因・四縁・五果を数え、因と縁との結合から果の生起するあり方を細かく考察した。
 部派仏教の諸説に異論を唱えて大乗仏教運動が起こると、縁起についても様々な説が現れた。
 ナーガールジュナは、説一切有部に反論し、独立の実体や固定した本質すなわち自性を立てようとする考えを完全に否定し、あらゆるものは無自性すなわち空であることが、縁起の意義であると説いた。部派の実体主義に対する関係主義の理論である。本稿では、これを無自性縁起説と呼ぶ。
 唯識派は、阿頼耶識に縁起の原理を求める頼耶縁起を説いた。この派は、心による認識及び心そのものを分析し、根本的な識である阿頼耶識から、いかにして万有一切が現象するか、また悟りに導かれるかを検討した。そして、縁起とは、阿頼耶識・末那識・六識が相互に因果となって転変する関係であるとした。
 如来蔵思想では、万有一切は真如・仏性からの縁に従って顕現するという如来蔵縁起を説いた。この縁起説は、如来蔵を基礎に、人間の迷いと悟り、清浄と穢れの関係を説明するものである。これを説いた代表的なものが、『大乗起信論』である。本書は、大乗仏教の中心教義を理論と実践の両面から要約したものである。インドの馬鳴(めみよう)の作で、シナの真諦の訳とされるが、偽作と疑う見方もある。如来蔵縁起は、真如縁起ともいう。現象世界を、真如すなわち如来蔵が縁に従って現れたものと見ることによる。
 これらの他に、『華厳経』に基づく法界縁起説、密教における六大縁起説等も説かれた。これらは、シナで発展したので、シナ仏教の項目に書く。

●仏教の衰滅とヒンドゥー教の隆盛

 大乗仏教以降のインド仏教の歴史は、数世紀にわたる仏教の有神教化及びヒンドゥー化の過程だった。ヴェーダの宗教から出現した仏教が有神教化し、さらにヴェーダの宗教が発達したヒンドゥー教から逆に影響を受け、ヒンドゥー化した。多神教的な性格を強めた仏教は、積極的にヒンドゥー教の神々や儀礼を採り入れた。これによって密教化した仏教は、一段とヒンドゥー化を深め、ヒンドゥー教と融合し、やがて衰滅していった。
 インド北部では、7世紀半ばにヴァルダナ朝が滅亡した後、13世紀までラージプートと呼ばれる地域的な諸王朝が興亡する分裂時代が続いた。この間、イスラーム勢力が侵入を繰り返し、13世紀にはインド東部にまで勢力を広げた。イスラーム教徒は、各地で仏教の寺院を破壊した。1203年に、当時仏教の最後の拠点だった密教のヴィクラマシーラ寺院が滅ぼされた。これを境に、インド仏教は消滅した。
 仏教は、一方ではヒンドゥー教に大きな影響を及ぼしもした。ヒンドゥー教最大の学派であるヴェーダーンタ学派は仏教、特に唯識説の影響を受け、一切の現象は識の顕現であると解釈するようになった。その学派を代表するインド最大の哲学者シャンカラは、仏教を深く研究して独自の思想を説いたので、「仮面の仏教徒」と呼ばれる。シャンカラをはじめとするヒンドゥー教の哲学者によって、仏教の教義の相当部分がヒンドゥー教に摂取された。ヒンドゥー教は、共通の土壌であるヴェーダの宗教から現れた仏教を、旺盛な同化力を以って包摂してしまったのである。今日、インドにおいて仏教はヒンドゥー教の一派とされている。
 そのため、インドにおける仏教については、現状を詳細に書くことは、ほとんど意味がない。本稿では、先に書いたように簡単にとどめる。

 次回に続く。

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