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2020年06月22日10:15

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仏教18〜修行者と聖職者、労働と喜捨

●修行者と聖職者

 仏教には、聖職者は、本来存在しない。ヴェーダの宗教及びヒンドゥー教において祭儀を行うバラモンのような特別の階級や、ローマ・カトリック教会において人間と神の中間に位置し、神へのとりなしを果たす役割を持つ者はいない。出家者は、自らの解脱を目指す修行者である。しかし、大乗仏教では、僧侶が在家者のために儀礼や指導を行うようになり、職業化した。
 ヒンドゥー教では、人生を四住期に分け、それを段階的に辿る生き方が原則である。学生期・家住期を経て、林住期・遊行期へ進む。遊行者は集団をつくらず、個々に修行して解脱を目指す。釈迦は、当時のインドの慣習に従い、結婚して跡継ぎになる長子を設けてから出家した。だが、仏教では、家住期の家長の義務を果たすことなく出家する者が多い。
家族的な共同体から離脱して、教団に入って集団で修行を行うのが出家者である。基本的に僧侶は、出家者である。出家者でない僧侶がいるのは、日本だけである。

●女性修行者

 釈迦の生前から仏教では、インドでは認められない女性の出家者を受け入れている。彼女らを比丘尼という。女性にも解脱を目指す出家修行の道を開いたことは、画期的である。

●寺院

 仏教の寺院は本来、修行者である僧侶の修行の場所である。それが、在家者が参拝したり、指導を受けたりする場所となった。また、寺院は巨大化し、先住の職員を多く置くようになった。
 インドでは一般に墓を造らないが、日本では墓を造る慣習があり、多くの寺は墓所を設け、僧侶がそれを管理している。

●労働

 サンガ(教団)は、労働を禁止していた。物を生産するために労働していたのでは、解脱をめざす修行に差し支える。また、生き物を傷つけない、殺さないというアヒンサーの思想により、農作業等は虫等を殺す恐れがあるからと、労働を控えたといわれる。
 教団は生活共同体ではなく、修行者の集団である。労働をせずに修行生活を維持するためには、人々の喜捨(寄付)に頼らねばならない。食事・衣類等の生活必需品は、すべて信者の喜捨によった。教団は、次第に、信者から土地の寄進を受け、大規模な土地経営者になり、多くの富を所有するようになった。
 大乗仏教では、僧侶の修行生活を支える在家信者は、勤勉が美徳とされる。シナで発生し主要な宗派となった禅宗では、宋代以降、自立した共同生活を行うために、食糧を生産するなどの労働(作務)が重視され、それが修行の一環となった。
 キリスト教の修道院は、厳格な戒律のもとに修行を行う集団であり、仏教のサンガと似ている。だが、修道院では労働が行われた。「祈れ、そして働け」と教え、信仰生活だけでなく労働を重視し、荒れた土地を開墾し、農業技術やそれに伴う醸造・製造技術を発展させた。彼らの集団労働は強大な生産力を発揮し、修道院はその生産力によって、経済的に完全な独立を成し遂げた。また、結果として富を蓄積することになった。信者から多くの土地の寄進を受け点は、仏教の寺院と共通している。

●喜捨

 仏教の喜捨は本来、義務ではない。出家者に対して行う自発的な寄付である。だが、在家者の組織化によって、喜捨は在家者にとって寺院を支えるための実質的な義務となっている。ただし、日本では社会的な制度とはなっていない。
 この点、イスラーム教では、喜捨(ザカート)は五行の一つとして、シャリーア(イスラーム法)の定める信徒の義務であり、貧しい者の救済・援助のために寄付を行う。義務化された施しなので、実質的な宗教税、救貧税である。

●政治と宗教

 仏教は本来、国家・社会とは直接関係のない教えである。だが、古代インドで国王や政治的有力者が仏教に帰依したことにより、国家の鎮護を説く経典が作られ、鎮護国家が祈念されるようになった。インド以外の地域に広がった後も、それぞれの地域で国王や政治的有力者が仏教に帰依することによって、仏教が国家体制を支える宗教となった場合がある。仏教が国家宗教になった国家の多くでは、僧尼が国家の管理の下に置かれ、公務員として宗教業務を行った。また、官位が設けられ、それに地位と権力と富が伴うことによって、しばしば僧侶の堕落が生じた。
 近代西洋文明の影響によって近代化が進んだ後は、政治と宗教の分離が行われた国家が多い。ブータンは、チベット仏教を国教としている。

 次回に続く。

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