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2019年10月30日14:41

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インド15〜ヒンドゥー教の組織

●教団

 ヒンドゥー教には、キリスト教の教派や仏教の宗派のように明確に相互に区別されるような教団は、存在しないと言われる。
 教義の項目にヴィシュヌ宗とシヴァ宗について書いたが、これらはそれぞれが最高神・主宰神とする神を信奉する信者たちの集団を区別する名称にすぎず、キリスト教の教派や仏教の宗派のような制度化された教団組織ではない。
 中村元は『ヒンドゥー教史』に、次の旨を書いている。「ヒンドゥー教諸派の教団はよく組織された緊密な構造をもっていない。果たして、教団といえるものがあるかどうかも疑問である。教会のような組織ももっていない。個々の個人が古来の宗教的な定めに従って生活し、彼らの間で任意に人間関係が形成され、それが教団らしきものに発展するが、またその教団らしき結合は脆弱である」と。
 そのうえ、ヒンドウー教徒の多くは、自分がヴィシュヌ宗徒なのかシヴァ宗徒なのかを普段意識すらしていないようである。山下博司は『ヒンドゥー教〜インドという謎』で、その実態について次のように述べている。ヴィシュヌ宗とシヴァ宗は「相互に排除的な信徒集団として截然と分れて存在しているわけでもないのである。少なくとも、相対立する他者として向き合っているわけではない。一つの地域、一つの家族、一つの個人のなかでも、ヴィシュヌとシヴァの信仰は穏やかに併存し両立し得るものなのである」と。

●聖職者

 ヴェーダの宗教では、祭官階級であるバラモンが古くから聖職者としての地位を保持していた。さらにカースト制が確立されたことによって、バラモンは宗教的な指導集団として、大きな影響力を振るってきた。ヒンドゥー教では、こうした社会構造が継承されている。
 インドにおける2011年の国勢調査によると、バラモンの人口は約6,500万人であり、全人口の約5%を占める。
 バラモンは世襲であり、祭儀を司り、神殿を管理する。また、学生期のヒンドゥー教徒の師(グル)としてヴェーダの学習を指導する。

●神殿

 インドには、ヒンドゥー教の建築物(デーヴァーラヤ)が多数存在する。わが国では、それらを寺院と訳されることが多いが、デーヴァは神に関する言葉ゆえ、神殿と訳す方がふさわしい。
政府には神殿を監督する「神の役所」(デーヴァースターナ)があり、そのもとにバラモンやその後援者が神殿を管理している。
 同じ宗派に属する神殿であっても、互いに独立し併存している。また上下関係はなく、横の連携も持たない。

●政治との関係

 ヒンドゥー教では、歴史的に政治力をもった団体を形成する動きがなかった。また特定の宗派が積極的に国家を統治したり、あるいは政治に干渉することもなかった。
 今日、インド共和国は、世界最大の人口を持つ民主主義国家である。人口の約8割はヒンドゥー教徒だが、イスラーム教をはじめ多数の宗教の信者がいる。そうしたなかで、ヒンドゥー教の集団が政治的な権力を志向せず、他宗教の集団に対して権力を行使しないことによって、デモクラシーが成立している。特に多神教であるヒンドゥー教と唯一神教であるイスラーム教が並存する社会において、このことは非常に重要なことである。
 インドには多数の政党がある。そのうちインド国民党(コングレス)、インド人民党(BJP)、インド庶民党(AAP)が三大政党となっている。これらのうち、BJPはヒンドゥー至上主義の色彩が強いといわれる。
 ヒンドゥー教徒が大多数の社会でありながら、歴代首相のうち3人は、少数派のイスラーム教の信者である。唯一神教を信奉する者が国家の最高指導者でありながら、様々な宗教の信者を一個の国民として統合することが可能になっているのは、ヒンドゥー教の政治姿勢によるところが大きい。

 次回に続く。

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