mixiユーザー(id:525191)

2019年10月01日09:48

169 view

中東がまた面倒な状況に〜イランとフーシー派の動き3

●サウディアラビアとイエメンの関係

 2014年9月シーア派の過激派フーシー派が首都サヌアを占領し、2015年1月22日にクーデタを起こし、ハディ暫定大統領とバハーハ首相を辞めさせ、政権が崩壊した。2月6日にはフーシー派が議会を強制的に解散し、暫定統治機構として大統領評議会を開設し、「憲法宣言」を発表した。これによって、イエメンは2011年以来の政権移行期プロセスが崩壊し、国家そのものも崩壊の危機に瀕した。
 隣国イエメンの民主化過程の後ろ盾になってきたのが、サウディアラビアである。イエメンのクーデタは、サウディにおける王位交代の隙を突いたものと見られた。中東問題の専門家・池内恵氏は、当時、「サウジの内憂と裏庭のイエメンの外患は連動している。そして、サウジが揺らげば、中東の混乱は極まる」と述べた。
 サウディはスンナ派アラブの盟主を自任する。イエメンのフーシー派はシーア派の一派、ザイド派を信奉する。シーア派大国のイランはザイド派を支援している。サウディは、イエメンでイランが影響力を増すことを警戒している。
 2015年2月15日国連安保理は、全会一致で、政府施設を制圧しているフーシー派に即座・無条件で権限を大統領・首相に戻すように要求する決議をした。ただし、決議を主導した湾岸協力理事会(GCC)の求めていた国連憲章第7章の軍事的強制力は盛り込まれなかった。そのため、実力行使でフーシー派を排除する手段はなく、犬の遠吠えに終わった。そうしたなか、サウディは、同年3月末、イエメンの内戦に介入し、フーシー派への空爆を開始した。イエメンは、サウディなどから経済封鎖を受けており、世界最悪といわれるほどの人道的危機に直面することになった。また、サウディのイエメン空爆によって、サウディとイランとの対立が深まった。
 2016年(平成28年)1月に、サウディアラビアとイランが断交するに至ったが、その理由の一つに、イエメン問題が挙げられる。
 サウディアラビアとイランが断交した情勢について、山内昌之氏は、著書『中東複合危機から第三次世界大戦へ』に次のように書いている。
 「1980年のイラン=イラク戦争で始まったシーア派対スンナ派の対立激化は、次々と新たな衝突ひいては戦争に発展し、宗派と政治の絡んだ文明内対立はこれから深化することはあっても、薄まることはない。政治化したセクタリアン・クレンジング(宗派浄化)の恐怖は、いまや中東の広い範囲に及んでいる。言い換えれば、『宗派戦争』とその脅威は、もはやシリア戦争やイエメン内戦やバハレーン紛争を超えてしまった。2016年のイランとサウディアラビアの危機は、現代中東のいちばん深い『宗派的断層線』(sectarian fault lines)がどこに横たわっているかをまざまざと見せつけたのである」 と。
 ここで、「セクタリアン・クレンジング(宗派浄化)」とは、エスニック・クレンジング(民族浄化)の概念を、イスラーム教の宗派間に応用したものである。また「断層線」は、ハンチントンが使った概念であり、ハンチントンは、文明の衝突は文明間の断層線(フォルトライン)で起こると指摘した。山内氏は、これを文明内の宗派間にも用いているものである。

●イエメンの内戦でフーシー派が優位に

 フーシー派は、サーレハ元大統領と蜜月関係にあったが、サーレハがサウディに接近したことによって、両者の関係が悪化した。2017年12月はじめ、フーシー派とサーレハ派が決裂し、戦闘が激化した。中東問題の専門家・高岡豊氏によると、サーレハ派が、サナア空港、国防省、中央銀行、国営通信社やテレビ局を制圧する一方、フーシー派はサーレハ派のネットサイトや系列の報道機関などを停止した。サーレハの与党である国民全体会議党(GPC)もフーシー派に対する蜂起を宣言した。サーレハは、サウディが率いる連合軍に対し、イエメンに対する攻撃と封鎖をやめるよう呼びかけ、双方の関係で「新たなページを開く」と表明した。連合軍に参加した諸国やその報道機関は、サーレハ派によるフーシー派への決起を「脱イラン、アラブへの回帰」と認識して歓迎した。
 だが、フーシー派とサーリフ元大統領派との連携と対立は、2011年以来のイエメン政情の混乱の中での政治・経済的な権益争いを原因としたものであり、ハディ前大統領派、各地の部族、南イエメンの独立運動等の紛争の諸当事者が持つ権益、また獲得を目指す権益が複雑に絡み合っているとのことである。
https://www.meij.or.jp/kawara/2017_132.html
 フーシー派は、2017年12月4日にサーレハを殺害した。これによって、フーシーア派が、優位に立った。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 細川一彦著『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

************************************
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する