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2019年07月08日10:10

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キリスト教222〜無宗教者や非キリスト教徒が増加

●無宗教者や非キリスト教徒が増加

 米国の民間の調査機関である公共宗教研究所(PRRI)は、宗教を中心に米国民の価値観を調査している。PRRIの2014年の調査によると、PRCの調査で「無宗教」という回答に当たる回答が、全体の22%を占めた。その中には、無神論3%、不可知論4%、無宗派14%、その他1%が含まれる。
 PRRIの2014年の価値観調査は、次のことを報告している。

★「どの宗教にも属さない」という回答
 州別: この回答者が、最大の多数派か、または幾つかの多数派のグループの一つになっている州は、50州のうち23。この回答が番目の多数派である州は、15。
 年齢別: 18歳から29歳では34%。65歳以上では11%。
 人種・民族別: 若年層では、白人38%、アジア系39%、ヒスパニック27%、アフリカ系23%が、「どの宗教にも属さない」と回答した。

★白人キリスト教徒の人口
 白人キリスト教徒が少数派である州は、19。最も少ないのはハワイ州20%、次にカリフォルニア州25%。最も多いのはサウスダコタ州77%、次いでノースダコタ州72%

★同性結婚
 白人の福音派プロテスタントでは、18歳から29歳ののうち45%が、同性結婚を支持している。

 こうしたPRRIの調査結果もまたPRCの調査結果と同じく、米国の宗教事情が劇的に変化していることを示している。その変化による政治や文化への影響が明瞭になりつつある。
PRRIが2016〜2017年に行った調査によると、自分を白人のキリスト教徒だとみなす米国人は43%だった。約40年前には、約80%の米国人が白人のキリスト教徒だったが、今や国民の半数を下回ったわけである。これは、有色人種の移民が増えていること、また非キリスト教徒の移民が増えていることが、主な原因と考えられる。
 また、この調査によると、カトリックの居住地域が変化している。カトリックは、伝統的に北東部に多く居住してきた。全米でカトリックが最も多いのは、ロード・アイランド州である。しかし、近年、米国の南部や西部で、カトリックが多いラテン・アメリカからの移民が増えており、カトリックの多数は、今や南部や西部に居住するようになっている。
 ここでカトリックについて長期的な傾向を書くと、アメリカではカトリックは少数派であり、1948年の国勢調査でプロテスタントは69%だったのに対し、カトリックは22%と3分の1以下だった。2007年のピュー・リサーチ・センターの調査で、カトリックは人口の23.9%、2014年には20.8%だが、1948年の22%から大きな変動を見せていない。この間、プロテスタントが69%から50%以下へと大幅に減っているのに比べて、カトリックはもともとの2割台前半を維持している。
問題は、その中身である。アメリカは、1950年に人口が1億5千万人を超え、2010年には3億人を突破した。この60年間で人口が倍増したわけである。増加した人口のうち、最も多いのはメキシコ等から流入するヒスパニックである。2010年の時点で人口の16.3%を占め、5000万人を超えた。そのヒスパニックにはカトリックが多い。だが、アメリカではヒスパニックの人口が増加している割には、カトリックの割合が増えていない。その理由は、ヒスパニックにおけるカトリックからプロテスタントへの改宗が起こっているからだといわれる。若年層を中心にプロテスタントの福音派に宗派替えする例が増え、信者の老齢化を招いているという。
 ヒスパニックではカトリックからプロテスタントの改宗が起っているといっても、全米の人口に占めるプロテスタントの割合は減り続けている。1948年に人口の69%だったのが、2014年には37%へと減少している。
 ここに見られるのは、アメリカにおいても、ヨーロッパほどではないが、キリスト教離れの傾向が出てきていることである。
 ここでアメリカと関係の深い中南米について書いておくと、2014年現在世界に約12億人いると推計されるカトリック教徒の4割を中南米の信者が占めている。ところがその中南米では、カトリックの信仰を捨ててプロテスタントの福音派に転じる人間が増えている。中南米最大の国家・ブラジルでは、カトリック教徒の割合が1980年には90%を超えていた。だが、プロテスタントの福音派に改宗する人間が多く、2014年現在ではカトリックは約60%に低下している。3分の2への減少は、劇的な変化である。
 欧米におけるキリスト教離れの傾向は、中南米には押し寄せていないが、中南米を含むキリスト教諸文明全体を教派別に見ると、最も目立つのはカトリック離れであり、カトリックからプロテスタントへの宗派替えが増えている。
 アメリカに話を戻すと、まだ大きな変化になっては、長期的には重要な事柄として次のことがある。アメリカでは、ベトナム戦争を通じて、若者や知識人を中心にアメリカの伝統的な価値観が疑われるようになり、1960年代から東洋の宗教や瞑想を評価する文化運動が起こり、西洋文明・物質文明の相対化が進んだ。キリスト教に幻滅や疑いを持つようになった者が、仏教やヒンドゥー教、道教などに関心を持ち、帰依・信仰する者も現れた。また、キリスト教とこれらの宗教をともに評価し、それぞれから宇宙の真理や人間のあり方を学び、自分の生き方に生かすという者も現れた。こうした時期に、欧米の原子物理学者は「老子」「易経」や仏典に表わされている宇宙の姿と、相対性理論や量子力学が描く世界像とが近似していることを発見した。東洋の神秘と想われていたものの背後に、深遠な認識や知恵があることが、欧米の知識層に理解されるようになってきた。そのこともまた東洋の宗教や瞑想を評価する文化運動を促進する力となっている。こうした現象は、これから21世紀が進むにしたがって、その重要性が明らかになっていくだろう。

 次回に続く。

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