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2019年03月16日06:32

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在韓米軍を非核化の梃子に〜島田洋一氏

 2月27〜28日にベトナムのハノイで行われた米朝首脳会談は、事実上決裂に終わった。北朝鮮の非核化をめぐって行われたこの会談は、北朝鮮による具体的な行動と、経済制裁解除を中心とする米国の「見返り」で折り合いが付かず、トランプ大統領が途中で席を立つという結果になった。米側は金正恩朝鮮労働党委員長が過大な見返りを要求したと主張し、北朝鮮側はトランプ大統領が無理な行動を求めたと反論する。
 私は、トランプ大統領が安易な妥協や譲歩をしなかったことが大変良かったと思う。米国では、共和党、民主党に限らず、主要な政治家がこの点を高く評価している。トランプが非核化を具体的に進めなければ、制裁解除はしないという強い意志を示したことで、金正恩を追い込んだ形になった。この結果に対し、金正恩がアメリカに対して取り得る道は、限られる。制裁解除を求めて非核化を具体的に進めるか、それとも核開発・ミサイル開発を再開して再び軍事力で対抗するかーーこのどちらかだろう。前者は、大幅な譲歩であり、北朝鮮の国内体制が持たなくなる可能性が高い。ただし、それで北朝鮮の民主化が進めば、人民の安寧が得られる。後者は、軍部を中心とした勢力の支持を得られるが、経済的なひっ迫は進む一方だろう。仮に一か八かの軍事的な冒険主義に賭けた場合、米国も韓国も日本も大きな損害を受けるが、最も大きな損害を被るのは北朝鮮である。
 会談後、北朝鮮では、核開発・ミサイル開発施設が再稼働されている模様である。このことは、金正恩は後者の道を選んだことを意味すると思う。この場合、米国が在韓米軍を今後どのようにするかが注目のポイントとなる。トランプ大統領は、在韓米軍の撤退を選択肢に入れている。わが国にとって、在韓米軍の撤退は、防衛線が38度線から対馬海峡にまで下がることを意味する。わが国にとっては、極めて厳しい国際環境になる。だが、トランプ政権の中枢は、在韓米軍の撤退を進める可能性が高い。この件について、福井県立大学教授の島田洋一氏は、次のような見方をしている。
 「仮に北の非核化が在韓米軍撤退との見合いで達成されるなら(ビッグ・イフだが)、戦略的にマイナスとはいえないだろう。米政権内で最強硬派に位置するボルトン大統領安保補佐官は「北が非核化するなら、在韓米軍は釜山の橋頭堡を除いて撤退してよい」を持論とする。北の攻撃に対して特に脆弱な地上部隊の撤退は、先制攻撃を含めた米側の作戦の自由度を増す」「韓国政府が南北境界地帯で武装解除し防諜機関の無力化を進める中、韓国内の「平和団体」による米軍の移動妨害に加え、北の特殊部隊や工作員による米軍基地への攻撃の脅威度も増している。在韓米軍も、かつての西ドイツのミサイル同様、動けぬ「不発弾」と化す可能性が強い」「在韓米軍撤退は、防衛線が対馬海峡まで下がることを意味するとの懸念は「時代遅れ」だろう。防衛線はすでにそこまで南下したとの前提で戦略を立てていかねばならない。ボルトン氏は首脳会談後、北に対する「最大圧力作戦」を続け、抜け穴を塞いで効果を上げていくとの方針を明らかにしている。日米中心にこの方向が徹底できるなら、米朝会談開催と決裂には意味があったことになる」と。
 わが国は、朝鮮半島を中心とした国際環境の急速な変化にしっかり対応できるよう憲法の改正を急ぎ、国防体制の強化を進めていかなければならない。
 以下は、島田氏の記事の全文。

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https://special.sankei.com/f/seiron/article/20190306/0001.html
在韓米軍を非核化の梃子にせよ 福井県立大学教授・島田洋一
2019.3.6

≪決裂の模範例となる米ソ会談≫
 米保守派が、生産的な決裂の模範例として挙げるのが、アイスランドの首都レイキャビクで行われた1986年10月の米ソ首脳会談である。相互核軍縮の条件としてゴルバチョフ書記長が、米側の戦略防衛構想(SDI=包括的ミサイル防衛システム)を「実験室内にとどめる」よう求め、これをレーガン大統領があくまで拒否したため、物別れに終わった。
 同席したシュルツ国務長官は、「もし大統領がSDIを死なせることに同意していれば、われわれは、こちらが望む形でソ連を動かす梃子(てこ)を完全に失っただろう」と振り返っている。ゴルバチョフ書記長がSDI阻止に全力を挙げたのは、対抗するだけの資金力と技術力がなかったためである。レーガン政権は軍事費の大幅増、ココム(対共産圏貿易規制)違反の徹底摘発など、対ソ締め付けを強化していた。軍事圧力と制裁が効いていたわけである。
 結局翌年、ソ連はSDI阻止を断念し、中距離核に絞った相互撤廃条約が締結された。あくまで相互措置だが、米側にはこれを一大成果と見なすべき事情があった。
 当時レーガン政権の軍備管理軍縮局長で首脳会談にも同行したエーデルマン氏は、ソ連の公開文書も参照の上、こう回顧している。
 「西ドイツに配備されたミサイルは移動式である点が重要で、危機に際しては、30台の護衛車両とともにアウトバーンを走行し続ける計画だった。しかし現実には、いかなるドイツ政府も、とりわけ危機の際には、それを承認しなかったろう。仮に政府が承認しても平和運動が移動をブロックしたはずだ。従ってわがミサイルは、堂々たる評価にもかかわらず、実際には不発弾に等しかった。幸い、ゴルバチョフにそうした報告は上がっていなかった」
 さて、同じく物別れに終わった第2回米朝首脳会談と比較してみよう。一部核施設の廃棄と引き換えに、軍事関連以外の全ての制裁解除という北朝鮮の要求は明らかに「吹っ掛けすぎ」で、米側に受け入れる余地はなかった。米議会はトランプ大統領の退席を超党派で支持しており、北の戦略ミスは明らかである。

≪撤退は戦略的マイナスではない≫
 もっとも完全決裂ではなく、北の核・ミサイル実験停止と米韓合同軍事演習停止が実質的に取引された形となっている。在韓米軍撤退につながる動きと懸念する声もあるが、軍事的措置に軍事的措置で応じるのは方向性としては正しい。かつて南アフリカが核兵器を廃棄した際、国際社会は、アパルトヘイト政策が放棄されるまで制裁を解除しなかった。北朝鮮についても人権抑圧がやむまで制裁は維持し続け、非核化には同等の軍縮措置で応じるのが筋だろう。
 この点、在韓米軍に関し、より踏み込んで考察する必要がある。仮に北の非核化が在韓米軍撤退との見合いで達成されるなら(ビッグ・イフだが)、戦略的にマイナスとはいえないだろう。
 米政権内で最強硬派に位置するボルトン大統領安保補佐官は「北が非核化するなら、在韓米軍は釜山の橋頭堡(きょうとうほ)を除いて撤退してよい」を持論とする。北の攻撃に対して特に脆弱(ぜいじゃく)な地上部隊の撤退は、先制攻撃を含めた米側の作戦の自由度を増す。ハードライナーが撤退論者というのは何ら不思議ではない。
 さらに文在寅政権の発足以来、先に引いたエーデルマン氏の言葉が在韓米軍にも当てはまる状況となってきている。韓国政府が南北境界地帯で武装解除し防諜機関の無力化を進める中、韓国内の「平和団体」による米軍の移動妨害に加え、北の特殊部隊や工作員による米軍基地への攻撃の脅威度も増している。在韓米軍も、かつての西ドイツのミサイル同様、動けぬ「不発弾」と化す可能性が強い。

≪防衛線の南下を前提に考えよ≫
 文在寅政権の下では、合同演習をすれば軍事情報がそのまま北に筒抜けになるという問題もある。従って、演習中止には防諜上の合理性もある。
 在韓米軍撤退は、防衛線が対馬海峡まで下がることを意味するとの懸念は「時代遅れ」だろう。防衛線はすでにそこまで南下したとの前提で戦略を立てていかねばならない。ボルトン氏は首脳会談後、北に対する「最大圧力作戦」を続け、抜け穴を塞いで効果を上げていくとの方針を明らかにしている。日米中心にこの方向が徹底できるなら、米朝会談開催と決裂には意味があったことになる。
 一方、正面から制裁解除を得ることに失敗した北は、今後韓国に対し、水面下での制裁破りを強く要求していくだろう。文在寅政権は、訪朝団の「ホテル代」や災害支援などの名目でできる限り応えようとしよう。韓国政府への監視を強めるとともに、適宜制裁を発動していかねばならない。
 北はサイバー攻撃による金銭窃取にも力を入れてくるはずだ。日本は米国同様、反撃も含めて対応すべきで、見えないサイバー空間ですら「専守防衛」にこだわっているようでは話にならない。(しまだ よういち)
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