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2018年10月24日09:41

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キリスト教110〜キリスト教に代替する社会主義・共産主義

●キリスト教に代替する社会主義・共産主義

 次に、社会主義及び共産主義について述べる。
 イギリスにおいて、自由は、極少数の人間の自由と大多数の人間の不自由の対比の中で拡大されてきた。不自由な状態にある大多数の側が自由を求めるとき、それは平等への志向となる。ピューリタン革命では、水平派が急進的に平等を求めた。その動きは、クロムウェルによって弾圧された。18世紀に始まった産業革命は、それまでの社会を大きく変え、階級分化を促進した。この過程でイギリスではリベラリズム(自由主義)とデモクラシー(民衆参政制度)が融合してリベラル・デモクラシー(自由民主主義)となり、それが西洋の他の多くの国家の理念となった。
 その一方、自由民主主義に対抗するものとして出現したのが、社会主義である。社会主義は、社会的不平等の根源を私有財産制に求め、それを廃止ないし制限し、生産手段の社会的所有に立脚する社会を作ろうとする思想・運動である。19世紀前半における社会主義初期の代表的な思想家はフランスのアンリ・ド・サン=シモンとシャルル・フーリエ、イギリスのロバート・オーエンである。彼らの社会主義は、キリスト教的な社会思想から離れて、啓蒙主義的・合理主義的なものとなっている。彼らに続いて、ドイツのカール・マルクス、フリードリッヒ・エンゲルスは、1848年に、『共産党宣言』を発表した。マルクス、エンゲルスは、サン=シモンらの初期社会主義者の思想を「空想的(ユートピア的)社会主義」と呼び、資本主義の分析に基づく自分たちの理論を「科学的社会主義」と自称した。彼らの説く科学的社会主義は共産主義とも言われる。
 マルクス=エンゲルスは、フランス革命をブルジョワ革命と規定し、一定の評価をするとともに、その限界を主張し、プロレタリア革命の理論を提示した。彼らは社会的な不平等の原因を、所有の概念で分析し、財産の私有に階級の発生を求め、歴史の動因として階級闘争を強調した。被支配階級は、支配階級の権利を戦い取るべきものとされた。そして、それが人間の解放であると説いた。
 マルクスは、1849年から83年の死まで、イギリスのロンドンを中心に活動した。ここで『資本論』等の主要著書を書いた。先進国イギリスは、マルクスの資本主義研究と革命理論構築の対象となった。
 1864年にマルクス、エンゲルスの理論を取り入れた国際労働者協会(第1インターナショナル)がロンドンで結成され、国際的な社会主義運動が広がった。その後、社会主義は、主として議会を通じて平和的に目標を実現しようとする社会民主主義と、武力革命によって社会改革を行おうとする共産主義の二つに大きく分かれた。前者を社会主義、後者を共産主義とする分け方もある。
 19世紀末から社会主義が勢いを強め、多くの国で社会民主主義の政党が結成された。社会民主主義は自由を保ちつつ平等の拡大を図る態度である。これに対し、共産主義は平等を価値とする。ごく少数ではあるが、共産主義者は武力革命を目的とする活動を展開した。
 平等を志向する社会主義が広がると、自由の思想の側にも変化が現れた。イギリスで発達した伝統的な古典的自由主義は、国家権力の介入を排し、個人の自由と権利を守り、拡大していこうという態度のことである。これに対し、19世紀半ばイギリスでそれまでの自由主義を修正した修正的自由主義が出現した。その代表的な思想家が、先にふれたJ・S・ミルである。修正的自由主義は、社会的弱者に対し同情的であろうとし、社会改良と弱者救済を目的として自由競争を制限する。
 古典的自由主義は、個人の自由を中心価値とする。古典的自由主義は、主に米国でリバータリアニズム(絶対自由主義)として存続した。修正的自由主義は、自由を中心としながら自由と平等の両立を図ろうとする態度である。修正的自由主義は、社会主義に対抗して、労働条件や社会的格差を改善し、平等に配慮するものである。古典的自由主義は国権抑制・自由競争型、修正的自由主義は社会改良・弱者救済型で、思想や政策に大きな違いがある。平等に配慮する修正自由主義は、古典的自由主義よりも、ナショナリズムと親和的である。また、キリスト教の社会思想に根差している。
 こうして19世紀末以降の欧米では、自由と平等という価値の対立軸をめぐって、政治や社会運動が展開された。重点のありかを自由から平等の方へと順に並べると、古典的自由主義、修正的自由主義、社会民主主義、共産主義になる。20世紀は、レーニンが言ったように「戦争と革命の世紀」となった。その時代に、イギリスは第1次世界大戦、第2次世界大戦、共産主義革命の広がりの中で、自由民主主義の側の指導国であり続けた。

 次回に続く。

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