小津安二郎の監督作品が相次いでBSプレミアムにて放送されました。
いずれも昨年、IMAGICAと国立映画アーカイブの共同事業で修復された、デジタル修復版です。
小津作品の修復版は、2013年の『秋日和』『彼岸花』などで、その完成度の高さを見ておりますが、今回はいずれもモノクロ作品です。そして今回も、キズひとつない驚異の修復が施されています。
今回立て続けに見た3本のうち、『お茶漬けの味』はDVDで見ておりましたが、DVDのSD画質とは比べ物にならないぐらいの高画質です。
●『お茶漬けの味』 (1952(昭和27)年松竹)
戦時中に書かれたシナリオを、現代(戦後)に置き換えて映画化したものです。
上流階級出身の妻(木暮実千代)をもつ、市民階級出の夫(佐分利信)。
何かにつけて夫の言動が気に入らない妻は、あるときついに家出を敢行するが…。
「気兼ねしないのが好き」で、白飯に味噌汁をかけて食べるのが好きな夫を佐分利信が好演。対する妻役の木暮実千代は、いかにもお家柄のよい出身で鼻持ちならないのが、だんだん可愛らしく見えてくる不思議さ。
小津監督は本作を失敗と見なしていたようですが、愛すべき小品です。★★★★
●『早春』 (1956(昭和31)年松竹)
東宝から池部良を招いて撮った異色作。
丸ビル勤務のサラリーマン(池部良)が、社内の女の子(岸恵子)と一夜を共にするが、それを機に妻(淡島千景)との関係にヒビが入る…という物語です。
これは凄い。見事でした。
東宝から出張った池部良は、もちろん小津組初参加な訳で、しかも映画の冒頭で、山村聰・笠智衆・東野英治郎とバーで過ごすシーンがあります。そのときの緊張感たるや、尋常では無かったことでしょう。しかし池部良、自分のペースを崩さずに好演しています。
岸恵子、淡島千景という個性的な女優をバランスよく配置して見せる演出にも見入ります。
2時間20分の長尺ですが、俳優の確かな演技と演出でぐいぐい引っ張っていく。脱帽です。
★★★★
●『東京暮色』 (1957(昭和32)年松竹)
小津作品史上、最も暗い映画と言われる作品です。
幼い頃に分かれた母(山田五十鈴)との再会を警戒する長女(原節子)、妊娠を言い出せない次女(有馬稲子)、会社重役の父(笠智衆)が、三者三葉に思い悩みつつ、噛みしめるように日常を送る姿を描く物語。
小津監督の作品群には珍しく、若い登場人物の突然の死が描かれ、絶望的な場面も多い映画でした。ラストに僅かな希望を見せますが、終始暗いトーンが続き(実際、夜間のシーンが非常に多い)、現実を冷徹に見つめる視線を感じます。
こちらも2時間20分の長編。しかし飽きません。★★★
この調子で大映の『浮草』、東宝の『小早川家の秋』のデジタル修復版もぜひやって欲しいところです。
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