読売の記事の切り抜きがたまったので、纏められそうな部分を取って処分することにした。
書評が３本、記事１本
�．ぅ錺鵝Ε�ラステフ「アフター・ヨーロパ」岩波書店 2018.9.30
著者はブルガリア人である。
極右の台頭とトランプの米国優先は欧米社会を危うくする革命である。
欧州のポピュリズムの台頭の原因は大量の難民とEUの緊縮政策であり、リベラリズムと寛容を象徴した難民条約の精神は失われた。ポピュリストたちは難民と同様にEU官僚らを攻撃する。この現象はトランプ政権でも日本でも同様である。
EUが生き残るためにはポピュリストを打倒しようとするのでなく、ハプスブルク帝国に学んでポピュリストの主張も取り入れながら長期的に彼らを疲弊させるべきだと主張をする。
☆海風：こんな時にもハプスブルグ家が振り返られる。中世のローマ帝国のようなものか。
��飯山陽「イスラム教の論理」新潮新書 2018.3.11
イスラム教を特権化して、彼らの主張する「イスラーム」などと表記する必要はない。イスラムは唯一神をひたすら讃えるべきとして、イスラム法による統治のために戦うことを正義と見なす。それは穏健派も、アルカイダやイスラム国も同様である。
異教徒がイスラムは平和の教えだ、などと説けば、過激派をますます憤激させるだけである。そもそも穏健派も自由、人権、民主主義はイスラム教と相いれないことを公然と主張している。
☆海風：実際、片倉もと子「イスラームの日常世界」岩波新書 など、イスラムを平和な宗教、平穏な生活を勧める教えという印象を与えている。実際は厳格な戒律で縛る宗教国家のはず。
��「トランプ氏 国連と溝深く」2018.9.23
トランプ政権はユネスコ、国連人権理事会、イラン核合意からの脱退・離脱表明、気候変動枠組みパリ協定離脱、パレスティナ難民救済事業への資金提供停止などトランプ政権の米国第一主義は加速している。
国連演説では「米国が憎いと言う国でなく、価値観を共有する国と協力する」と表明するとのこと。
一方、中国の存在感は高まっていて、多国間主義の旗印を掲げ、国連憲章の趣旨と原則を守ると宣言した。
☆海風：中国はやっていることと主張していることと、その整合性が感じられない。誰も習主席や報道官の言葉をまともに受ける人間はいない。このいかにも平等に扱う態度が「リベラル知識人」的。これが知性ある礼儀正しい人間の言葉だと言うなら本音を見分けようとする大衆の「反知性主義」には大きな価値がある。
実際、国連の多数を形成するアジア、アフリカ、南アメリカはエリートでさえ、というかエリートこそに賄賂が横行している。これは個人のエゴイズムだけでなく、大家族、部族主義の残っている国では一族を養うためのものでもある。だからこそ深刻なのだが。
さて、トランプはアメリカ人の本音には違いない。東部のエリートや近年の移民たちとは全く違うもの。しかし、賛否いずれにしろ本音を知っておくべきだろう。
そもそも常任理事会はほとんど機能しないし、多数決の国連総会をまとめるのは金、援助だし、ユネスコなど下部機関は活動家が牛耳っている（それを知らせてくれるのが杉田水脈議員だった）。
この「国連とトランプ政権の関係悪化を伝える記事」の隣には、司法省のローゼンスタイン副長官がトランプ大統領の免職を画策していたとする記事がある。トランプのロシア疑惑を追及するモラー特別検察官を任命したのは彼であって、トランプ氏は「司法省の悪臭を取り除く」と述べたとのこと。
☆海風：ニクソンの時のディープ・スロートもFBI副長官だったとのこと。今回のローゼンスタイン氏は失敗したということか？ モラー氏も動けなくなるかもしれない。
�た綱椒▲鵐蝓岼枌爾了�代」岩波新書 2018.9.23
著者は、かねてより反知性主義とは、既成秩序を破壊しつつ更新する運動と位置付けている。本章では、政党と異端の発生メカニズムを説明している。
丸山真男は普遍的な教義に基づく正統性を「O（オーソドックス」正統」と名付けて（もう一つは国家内で通用するL（レジシマティ）正統）、これが西洋にはあるが日本にはないとした。
しかし、著者は正統とは長い時間をかけて大衆の中に確立したものであり、凡俗に宿るものである。西洋では政治と異なる宗教の価値軸があって、正統を形作る要素が複数存在した。それに対して日本には政治論しかなかった。下克上だけでは秩序破壊と創造を共に成し遂げる異端とはなりえない。
ただし現在では、情報化と大衆化により異端らしさのハードルが下がり、個人が自らの価値観を表明する真の異端は生じ得ない。
トランプ現象も真の異端ではないとする。
ここで評者の三浦瑠璃氏は疑問を呈する。19世紀の民主化運動に直面したエリートの憤激を思い出せば、トランプ現象の裏に真の異端思想が隠れているかもしれない。異端の生成過程ではデマゴーグも帯同するからである、と。
☆海風：妥協なき真の対立があってこそ、新しい秩序が生まれる。日本の足して二で割る妥協政治では何も生まれない、とはマルクス主義哲学者の主張だった。今名前を調べるのも面倒なのだが。丸山や森本アンリ氏にも同じ匂いがする。森本氏の方が丸山より現実的ではあるのだが。
確かに、カトリックは西欧で正統を独占していたことだろう。それを破るためには科学者もプロテスタントも血みどろの戦いがあった。それで宗教的寛容を説くヴェストファーレン条約が成立した。
ただしこれはあくまでもカトリックとプロテスタントの間の話。ユダヤ教もイスラム教も関係がない。実際、イスラム教とはいまだに許されざる仲と言ってよい。
ところで「19世紀の民主化運動」と言っているのはフランスで何度も起きた革命のことなのか？ その憤激の中で、あるいはナポレオン三世みたいな人を経過して新たな正統が生まれたと？ この点はペンディングということで。
☆海風：まとめ
森本氏が凡俗に正統が宿ると言うのは、確かにそうあらねばならない。皆が納得しない教えが根付くはずがないので。
その場合大事なのは大衆の本音だろう。本音が互いにもまれて角が取れて丸くなったところでことわざのように（言霊でもある）教義化されて正統になる。
ということで日本の正統はことわざ（ことわざ化された言葉）にある。それくらい何度も人の口をついて出る言葉の中にある。
そのあたりは山本七平などが言っていたと思う。
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