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2018年10月11日09:36

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宗教消滅13〜宗教は存続し、新たな発展へ向かう

 最終回

●第4の動向として、中国における宗教弾圧がある

 宗教の世界的状況を見る時、島田の上げる三つの動向以外に、第4の動向として、中国における宗教への弾圧を加える必要がある、と私は考える。中国における宗教弾圧は、旧ソ連におけるキリスト教(ロシア正教)への弾圧に続き、さらに大規模で苛烈な共産主義による宗教弾圧である。チベットでのチベット仏教への迫害、新疆ウイグルでのイスラム教徒への迫害、また法輪功等の新宗教への取り締まりは、深刻な人権問題となっている。今後、中国がアジアから世界へと覇権を拡大していくと、中国の支配下にある諸国では、こうした宗教弾圧が行われることが予想される。
 習近平総書記兼国家主席は、平成29年10月の中国共産党第19回全国代表大会で、習思想を党規約に明記し、独裁体制の確立を進めた。中国共産党は「宗教を僕(しもべ)にしてしまおう」としており、その一方、中国の仏教協会・道教協会には宗教の信念を曲げて政権党に媚びる動きがある。そうした中国の動向について、平成29年10月ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、次のように書いた。
 「『中国の特色ある社会主義』の下、各民族は『ザクロの実のように寄り集まり』、宗教は『中国化』され『社会主義社会への適応』を求められる。文化も社会主義イデオロギーに導かれ、社会主義の『核心的価値観』が人々の心にぴったりはまり(アイデンティティーとなり)、行動・習慣に自然に反映されるよう、家庭、子供に至るまで教育を徹底させる。かくして『愛国主義、集団主義、社会主義』の教育が一層強化されるというのだ」
 「習氏は『偉大なる中華民族の復興』を謳い、『中華民族は世界の諸民族のなかにそびえ立つだろう』とし、『人類運命共同体』の構築を提唱した。これからの中国を読み解く上での重要な言葉となるであろう人類運命共同体構想は『世界制覇宣言』と同義語かと思う。人類は皆、中国の下で中国主導の運命共同体の一員として生きることを要求されるのか」と。
 櫻井氏が指摘した宗教の「社会主義社会への適応」は、すでに中国では強力に進められつつある。やがて中国共産党が支配する領域を広げていくにしたがって、中国以外の国でも、宗教の「中国化」が強要されることになるおそれがある。
 人類社会における宗教の衰退は、中国の世界的な覇権拡大によってこそ、最も深刻な形で進行する可能性がある。島田は、この点も全く視野に入っていない。もし島田が予測するように、世俗化が世界的に進行し、宗教が消滅して社会が無宗教化するならば、そのような地球社会は、中国共産党が支配する「社会主義社会」となるだろう。島田氏は、資本主義の終焉の先に、そのような「社会主義社会」が到来することをよしとするのだろうか。私は、世界が唯物論による全体主義に支配されないようにするために、人類は宗教の価値を再発見すべきであると考える。また同時に、世界の諸宗教は旧来の教義や慣習にとらわれずに、真に人類の幸福と発展に寄与する道を真剣に求めるべきだと呼びかけたい。

●宗教は存続し、新たな発展へ向かう

 島田氏は、宗教の必要性を資本主義経済の成長による経済格差の拡大における弱者への社会的救済としてしか見ていない。島田氏の見方は、戦後日本で新宗教に入信するものの動機として挙げられた貧・病・争のうちの貧を中心とした見方である。貧しさであれば、経済成長で物質的に豊かになり、社会保障が発達すれば、改善される。それによって宗教に対する関心は低下するだろう。だが、宗教の必要性は、貧しさの改善だけではない。宗教は、人間の中にある自己実現・自己超越の欲求に根差したものであり、貧富に関わらず、人々は自己実現・自己超越を求める。宗教は、人々に自己実現・自己超越の方法を示す。また宗教は、人間の実存的な悩みや死の問題について取り組む智恵を与える。これはいかに科学や文化が発達しても、人間にとって逃れられない課題である。そして、宗教の価値の多くは、自己実現・自己超越の欲求の実現や実存的な悩みや死の問題について、独自の役割を担うところにある。島田氏はこうした宗教の価値についての理解が浅く、それを評価できていない。
 自己実現・自己超越の要求については、拙稿「宗教の諸相と発展可能性」の「7.宗教と自己実現」に書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion11g.htm
 また、死の問題とその解決については、拙稿「宗教、そして神とは何か」の「7.生と死の問題」「8.大安楽往生と魂の救い」に書いた。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion11d.htm
 人間に自己実現・自己超越の欲求があり、また人間が死すべきものである限り、宗教の必要性はなくならない。私は、世俗化によって宗教の個人化ないし私生活化が進むなかで、宗教は社会における役割を変化させながら、これまでとは違う形で宗教独自の価値を発揮していくだろうと考える。
 ただし、近代化・合理化の進展のなかで、既成宗教は科学の知見との矛盾を広げ、時代遅れになっている。そのため、これらの課題についても、現代人の要求に応えられなくなっている。先進国を中心に、人々は、自分が生まれた社会の伝統や慣習であるような形式的・制度的宗教から離れて、自分にとって本当に価値あるもの、本物を探し求め出している。そして、この科学が発達し、人々の知識が増大した時代において、現代人の要求に応えられるような新しい宗教、宗教を超えた宗教の出現が待望されている。
 従来の宗教は、天動説の時代に現われた宗教である。今では、地球が太陽の周りを回っていることを、小学生でも知っている。パソコンやスマートフォンや宇宙ステーション等がないどころか、電気や電燈すらなかった時代の宗教では、到底、現代人の心を導けない。
 伝統的宗教の衰退は、宗教そのものの消滅を意味しない。むしろ既成観念の束縛から解放された人々は、古代的な宗教から抜け出て、精神的に成長し、さらに高い水準へと向上しようとしている。また、より高い精神性・霊性を目指す人々が徐々に増えている。先進国における既成宗教からの人々の離脱は、こうした方向への変化の過程における一つの現象とみることができる。
いまや科学が高度に発達した時代にふさわしい、科学的な裏付けのある宗教の出現が待ち望まれている。また、宗教には、人類が核戦争と地球環境破壊の危機を乗り超えるように、人類を精神的に導く力が期待されている。宗教はこれまでの古い殻から脱け出て、より高度なものへと向上・進化すべき時を迎えている。21世紀に現れるべき新しい宗教は、従来の宗教を超えた宗教、すなわち超宗教となるだろう。そうした宗教に求められる特長は、次のようなものとなるだろう。

◆実証性 実証を以て人々の苦悩を救う救済力を有すること
◆合理性 現代科学の知見と矛盾しない合理性を有すること
◆総合性 政治・経済・医学・教育等のすべてに通じる総合性を有すること
◆調和性 人と人、人と自然が調和する物心調和・共存共栄の原理に基づくこと
◆創造性 人類普遍的な新しい精神文化を生み出す創造力を有すること

 こうした特長を持った超宗教が出現・普及することによって、新しい精神文化が興隆し、現代文明の矛盾・限界を解決する道が開かれることが期待される。そして、従来の宗教を超えた超宗教が出現し、世界に普及することによって、発展的解消に向かうだろうと私は予想する。この点については、拙稿「宗教の諸相と発展可能性」の「8.科学と宗教の融合」、及び「ユダヤ的価値観の超克〜新文明創造のために」の「第4章 人間観の転換を」に書いたので、そちらをご参照願いたい。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion11g.htm
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12-4.htm
(了)

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