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2018年06月12日09:28

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改憲論23〜今回の自民党の改正案(続き)

7.今回の自民党の改正案(続き)

 自民党の9条追加の改正案は、9条は変えないということで、改正に反対する心理を考慮したものと思われる。現行9条の規定は「必要な自衛の措置」を取ることを妨げないとし、戦力不保持に関しては、自衛のための戦力の保持ではなく、現状の自衛隊を「必要な自衛の措置を取る」ための「実力組織」として盛り込み、文民統制を定めるものである。
 この案の狙いは、次の点にあると見られる。「自衛の措置」という表現で自衛権を行使できることを明確化しつつ、「自衛権」明記の声にも理解が得られやすい「必要な自衛の措置」という表現を採用した。代わりに「前条の規定は〜」と前置きすることで、既存の9条2項との連関性を担保した、と。
 交戦権については、「妨げない」規定によって、戦力ではない実力組織の行動を国際法上有する交戦権の行使と認めることになるのかどうか、この文言だけではわからない点がある。
 しかし、自衛隊を違憲とする解釈の余地のないように根拠規定を設けるとともに、現在は法律上の組織である自衛隊を憲法上の組織に格上げすることにはなる。単なる法律上の組織であれば、左翼政党が政権を取った際、法の改正によって自衛隊を解散することが出来てしまう。憲法上の組織であれば、国会発議と国民投票という手続きを要するから、その地位は法的に安定したものとなる。
 また、山田宏参議院議員は、上記の改正案について次の旨を述べている。「9条2項はそのままでこれまでの政府解釈が維持されるので、『必要な自衛の措置』の範囲は、これまで通り『自衛のための必要最小限のもの』、つまり『個別的自衛権』と『限定的な集団的自衛権』となる」と。
 山田氏の理解が正しければ、改正案の狙いは、現行9条と改正自衛隊法を含む安保関連法の関係を強化することもあると理解される。野党の一部に集団的自衛権の行使を認めた安保法制は違憲だとして改正を求める主張があるからである。
 3月25日の自民党大会で安倍晋三首相兼総裁は、演説で憲法改正について、大意次のように述べた。
 「私は防衛大学校の卒業式に出席した。陸海空の真新しい制服に身を包んで、任官したばかりの若い自衛官たちから『ことに臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応える』と重い宣誓を最高指揮官、首相として受けた。
 彼らは国民を守るために命を懸ける。しかし、残念ながらいまだに多くの憲法学者は彼らを憲法違反だと言う。ほとんどの教科書にはその記述があり、自衛官の子供たちもこの教科書で学ばなければならない。
 このままでいいのか。憲法にしっかりとわが国の独立を守り、平和を守り、国と国民を守る。そして自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とうではないか。これこそが今を生きる政治家、自民党の責務だ」と。
 二階俊博幹事長は、党憲法改正推進本部が9条を含む「改憲4項目」の「条文イメージ・たたき台素案」をまとめたことを説明。「衆参の憲法審査会で議論を深め、各党の意見も踏まえ、憲法改正原案を策定し、憲法改正の発議を目指す」と明言した。
 同党は、本大会で平成30年度運動方針案を採択。運動方針は、最初の項目に改憲を掲げて「改憲の実現を目指す」とうたい、「憲法審査会での幅広い合意形成を図るとともに、改正賛同者の拡大運動を推進する」と記した。
http://www.sankei.com/politi…/…/180325/plt1803250049-n1.html

 なお、第9条の改正ととともに、早急に新設すべき緊急事態条項については、次のような改正案が示された。

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【緊急事態条項】
第73条の2
大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
2 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
(※内閣の事務を定める第73条の次に追加)

第64条の2
大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
(※国会の章の末尾に特例規定として追加)
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 参議院の合区解消と広域地方公共団体の明記、教育の充実に関する条文案は、憲法改正において憲法の根幹に関わるものではなので省略する。
 私は、自民党の今回の改正案は、GHQから押し付けられた現行憲法の呪縛のもとで、国家として生き延びるために、とりあえずのうえに、とりあえずを重ねたような弥縫策だと思う。いずれにしても、日本国憲法は全面的な改正が必要であり、全面改正に向けた第一歩にすぎない。
 さて、自民党は上記のような改正案を以て、各党との議論に臨もうとしている。本年(30年)4月中旬に全国各支部に対して、憲法改正を目指す運動方針を通達し、年内の発議を目指すと聞く。年内発議が実現した場合、単独の国民投票が平成30年12月から31年3月の間に行われる可能性がある。
 だが、まず大きな関門が、連立与党の公明党である。公明党はもともと加憲の立場を取り、9条改正には消極的である。昨29年10月の衆院選での議席減を受け、9条改正には一層消極的な姿勢をみせるようになった。まだ態度がはっきりしない日本維新の会が賛同の方向で議論するかも注目される。自民党の提案を真摯に受け止め、国家国民のために積極的かつ建設的な議論をしてほしいものである。
 立憲民主党など他の野党は改正に反対を唱える者が多く、改正への動きに烈しく抵抗・反発することは確実である。昨29年から野党の多くが森友学園問題、加計学園問題を安倍政権の支持率低下、憲法改正阻止に利用しているが、今年30年に入って浮かび上がった森友文書書き換え問題や自衛隊のイラクでの日報問題も、これと同様にして政治的に利用している。さらに財務事務次官のセクハラ疑惑が重なり、野党の多くは国会で審議拒否の方針を打ち出し、国会が空転する事態となった。こうしたなか、左翼やマスメディアの影響を受けやすい無党派層は、9条改正の危険性を煽る論調や報道に触れると、改正反対に向く可能性がある。それゆえ、なんとか国会で改正案の発議にこぎ着けても、国民投票で過半数の賛成を得られるかどうかは疑わしいという見方もある。そこで重要なのが、国民の側の取り組みである。その点について、次の項目に書く。

 次回に続く。
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