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2018年05月27日08:41

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改憲論15〜自民党の過去の改正案とほそかわ私案

4.自民党の過去の改正案とほそかわ私案

 次にこれまで書いたことを踏まえて、憲法第9条の改正を目指す動きについて述べる。
 憲法改正への動きを最も強く推進している政党は、自民党である。自民党は、昭和30年(1955年)の立党宣言に「自主独立の権威の回復」の文言を掲げた。だが、その後、自主独立の権威回復の要となる憲法の改正のできないまま、半世紀が経過した。そこで自民党は、平成17年(2005)の立党50年に当たって、「新綱領」の第一に「新しい憲法の制定を」を掲げた。
 この年、自民党は、憲法改正草案を発表した。そのうち第9条は、次のような案となっていた。

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●自民党平成17年版憲法改正草案より

第二章 安全保障

(安全保障と平和主義)
第九条 日本国民は、諸国民の公正と信義に対する信頼に基づき恒久の国際平和を実現するという平和主義の理念を崇高なものと認め、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する平和国家としての実績に係る国際的な信頼にこたえるため、この理念を将来にわたり堅持する。
2 前項の理念を踏まえ、国際紛争を解決する手段としては、戦争その他の武力の行使又は武力による威嚇を永久に行わないこととする。
3 日本国民は、第一項の理念に基づき、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動に主体的かつ積極的に寄与するよう努めるものとする。

(自衛軍)
第九条の二 侵略から我が国を防衛し、国家の平和及び独立並びに国民の安全を確保するため、自衛軍を保持する。
2 自衛軍は、自衛のために必要な限度での活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動並びに我が国の基本的な公共の秩序の維持のための活動を行うことができる。
3 自衛軍による活動は、我が国の法令並びに国際法規及び国際慣例を遵守して行わなければならない。
4 自衛軍の組織及び運営に関する事項は、法律で定める。

(自衛軍の統制)
第九条の三 自衛軍は、内閣総理大臣の指揮監督に服する。
2 前条第二項に定める自衛軍の活動については、事前に、時宜によっては事後に、法律の定めるところにより、国会の承認を受けなければならない。
3 前二項に定めるもののほか、自衛軍の統制に関し必要な事項は、法律で定める。
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 安全保障を独立した章として新設し、現行9条の主旨を維持しつつ、9条の二、三を設けて自衛軍を保持するとしたものである。
 私は、翌年となる平成18年の拙稿「日本再建のための新憲法――ほそかわ私案」でこの案を批判し、憲法改正私案を提示した。私案の全体は、下記の掲示文をご参照願いたい。私は自民党員ではなく、どの党の党員でもない。一国民として意見を述べている者である。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08h.htm
 本稿では、第9条にかかわる私案の条文のみを掲示する。条文の番号が現行憲法と異なるのは、私案全体における通し番号になっていることによる。

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◆ほそかわ案より

(国際平和の希求、侵攻戦争の否定)

第十三条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国際紛争を解決する手段としては、戦争その他の武力の行使又は武力による威嚇を永久に行わないこととする。
2 前項の目的を達するため、我が国は国際条約を遵守し、国際紛争を平和的手段によって解決するよう努める。

(自衛権、国防の義務と権利の制限)
第十四条 日本国民は、国家の平和と独立、国民の生命と財産、自国の伝統と文化を守るため、自衛権が自然権であることを確認する。
2 わが国は、自衛権の一部である集団的自衛権を保有し、平和を維持するため、国際的な相互集団安全保障制度に参加することができる。
3 日本国民は、統治権を共有する者として、国防の義務を負う。また、国家防衛と治安維持のために、必要最低限度において、自由と権利の制限を受ける場合がある。

(国軍)
第十五条 外国からの武力攻撃やテロリズムから我が国を防衛し、国家の平和及び独立並びに国民の生命及び財産を保守するため、国軍を保持する。
2 国軍は、自衛のために必要な限度での活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動並びに我が国の基本的な公共の秩序の維持のための活動を行うことができる。
3 国軍による活動は、我が国の法令並びに国際法規及び国際慣例を遵守して行わなければならない。
4 国軍の組織及び運営に関する事項は、法律で定める。

(国軍の統制)
第十六条 国軍の最高指揮権は、内閣総理大臣に属する。
2 内閣総理大臣は、国家安全保障会議を組織し、これを統括する。国家安全保障会議については、法律で定める。
3 前条第2項に定める国軍の活動については、第十九条に規定される非常事態宣言が発せられている場合を除いては、国会の承認を必要とし、動員には、外国の侵攻を受けた場合またはその危険が切迫した場合の他は、国会の事前の承認を必要とする。
4 前3項に定めるもののほか、国軍の統制に関し必要な事項は、法律で定める。

(軍人の地位) 
第十七条 現役の軍人は、内閣総理大臣及びその他の国務大臣になることができない。
2 軍人については、軍隊の規律を保ち、その任務を遂行するに必要な限度において、第五章の規定の適用を排除することができる。

(軍事裁判所)
第十八条 軍人は、軍事上の犯罪について、軍事裁判所の管轄に服する。
2 軍事裁判所は、最高裁判所の統括管理に服せず、内閣総理大臣がこれを統括管理する。
3 軍事裁判所の組織、訴訟手続については、法律でこれを定める。

(註 非常事態条項については、本稿では割愛する)
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 次回に続く。
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