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2018年05月19日09:03

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改憲論11〜自衛隊の任務・行動・権限等

(3)任務・行動・権限等

 自衛隊法は、自衛隊の任務、部隊の組織・編成、行動・権限、自衛隊員の身分の取り扱いなどを定める。自衛隊の任務は、同法第3条に、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする」と定められた。国の防衛を主たる任務とし、必要に応じて治安維持も担う実力組織である。それゆえ、自衛隊は、前身の警察予備隊等の警察軍的な組織から、国防軍的な組織へと移行してきたと言えよう。
 昭和29年(1954年)の自衛隊法成立時、自衛隊の行動は、主に防衛出動と治安出動とされた。他に海上保安庁の統制、海上における警備活動、災害派遣、領空侵犯に対する措置などが加えられてきた。
 最も重要な防衛出動は、外国による直接侵略に対するもので、内閣総理大臣が出動を命ずる。ただし、国会の承認を得たうえでとされている。自衛隊法76条に規定されている。治安出動は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力で治安を維持することができないと認められる場合に命じられる。国会の承認は事後で良い。自衛隊法78条に規定されている。
 自衛隊の権限については、「自衛隊は、その任務の遂行に必要な武器を保有することができる」(第87条)と定められている。自衛隊は戦力ではないとされているから、自衛隊法は自衛隊について戦力という用語を使っていない。実力という用語も使っていない。使用されているのは、武力の語である。
 自衛隊は、防衛出動時に「わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる」(第88条1項)と定められている。また、この際の武力行使に際しては、「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする」(88条2項)と定められている。
 次に、治安出動に関しては、自衛官の行動は、警察官職務執行法を準用することとされている。この点では、自衛官は警察軍の警官に準ずる立場にとどまっている。
 占領下における警察予備隊・海上警備隊から、独立回復後の自衛隊への改編までの過程で、これらの組織が、日本国憲法第9条に照らして、合憲か違憲かを巡る論争が繰り返された。9条1項はすべての戦争を放棄したものであり、2項は一切の戦力を保持せず、自衛のための交戦権も否認したと解釈する者は、これらの組織を憲法違反として批判した。だが、その解釈と主張に立てば、わが国は独立主権国家として存立できない。米国の占領終了後も、永久に被保護国の立場を続けるか、米国に見捨てられれば旧ソ連や中国の占領・支配を受けるかのどちらかである。どちらの方向も、日本は亡国に至る。それゆえ、第9条を上記のように解釈して自衛隊等に反対する者は、自滅主義者か、日本を亡国に至らしめることを目的とする反日日本人だろう。

(4)政府の見解と反対意見

 日本人は本来、独立回復後、すみやかに占領下で押し付けられた憲法を改正し、自らの手で新憲法を制定すべきだった。だが、独立回復後、日本人は憲法改正による真の主権回復を行うための気概を失い、また左翼思想・反日思想等の信奉者が増えて国論が分裂し、この最大の課題を遂行できないまま、歳月を重ねた。この間、世界は第2次世界大戦終了後の一時的な平和ムードは、わずかのうちに消え去り、東西ドイツの対立や朝鮮戦争等を通じて、米ソの冷戦体制へと激変した。恐怖の均衡の中で核開発競争が行われ、核兵器を使用する第3次大戦が勃発すれば、人類が滅亡する危機が高まった。
 こうした内外の情勢のもとで、わが国の政府は、現行憲法のもとで国家の存立を図る道を取ってきた。警察予備隊・保安隊の時代には、それらは警察的組織であって戦争を目的とするものではなく、装備および編成も「近代戦を有効かつ適切に遂行しうる能力」を持たないから戦力ではないとした。またそれらが改組されて自衛隊が発足すると、政府は昭和29年(1954年)12月21日に、「自衛のために必要な限度において持つ自衛力は戦力に当たらない」との新解釈を示した。この解釈に対して、自衛隊に反対する者は「自衛のための必要な限度」はどの程度かと政府を追求した。これに対して、政府は昭和53年(1978年)2月14日に、「その時々の国際情勢、軍事技術の水準その他の諸条件により変わり得る相対的な面を有する」という見解を示した。
 わが国は戦後、現行憲法のもと、戦力を保持しない方針を取り、専守防衛や非核三原則等の政策を行ってきたが、この間、中国は核兵器や大陸間弾道弾等を開発し、また猛烈な勢いで軍拡を進めてきた。これに続いて、近年は北朝鮮が活発に核・ミサイルの開発を行い、わが国の安全と生存を脅かしている。
 こうしたなか、わが国は、平成27年(2015年)9月に従来の安全保障政策を転換する安全保障関連法を成立させた。平和安全法制とも呼ばれる。改正武力攻撃事態法、改正国際平和協力法など10の法律を束ねた平和安全法制整備法と、新たに制定された国際平和支援法から構成される。自衛隊法も前者の一環として改正された。安保法制の成立で特に重要なのは、憲法解釈を変更して集団的自衛権の限定的行使が認められたことである。また、米軍など外国軍への後方支援の内容が拡大されたり、PKOでは駆けつけ警護などの新任務が認められ、武器使用権限が拡大されるなどした。それら一連の法案は、平成28年(2016年)3月に施行された。これによって、自衛隊の役割は、一層大きなものとなった。
 この間、自衛隊は、平成23年(2011年)3月11日に勃発した東日本大震災をはじめ、多くの災害における救助活動を行ってきた。首都直下型大地震や東海大地震、南海トラフ大地震の発生確率が高まっているなか、国民の安全と安心のために自衛隊の存在は大きさを増している。
 だが、今も憲法学者のうち約7割は、自衛隊を憲法違反とする見解を出している。また左翼や左派の政党は自衛隊に反対し、憲法第9条改正に反対の人たちは、国民の4割以上いると見られる。

 次回に続く。
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