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2018年05月17日09:27

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キリスト教47〜諸文明の興亡と約5百年ごとの大きな変化

●諸文明の興亡と約5百年ごとの大きな変化

 世界的なキリスト教の歴史を概観するに当たり、最初に文明学的な見方を簡単に述べる。世界的なキリスト教の歴史の過程において、各地域で多くの文明が興亡盛衰してきた。キリスト教は、古代シリア文明で発生したユダヤ教から現れ、古代ローマ文明において発達した。古代ローマ文明が滅亡すると、キリスト教は東方正教文明とヨーロッパ文明で発達を続けた。ヨーロッパ文明は北米にも広がり、西洋文明となった。また中南米ではラテン・アメリカ文明へと転換した。こうした2000年近い歴史を経て、現代の世界に至っている。
 国際政治学者のサミュエル・ハンチントンは、冷戦終結後の世界には7〜8の主要文明があるとした。キリスト教的カソリシズムとプロテスタンティズムを基礎とする西洋文明(西欧・北米)、東方正教文明(ロシア・東欧)、イスラーム文明、ヒンドゥー文明、儒教を要素とするシナ文明、日本文明、カトリックと土着文化を基礎とするラテン・アメリカ文明。これに今後の可能性のあるものとして、アフリカ文明(サハラ南部)を加え、7または8と数えた。私は、この説を支持し、21世紀の今日において、アフリカ文明(サハラ南部)は主要文明に成長したと見て、世界の主要文明を8つと数える。これらのうち、キリスト教が宗教的中核になっている文明は、西洋文明、東方正教文明、ラテン・アメリカ文明の三つである。
 私の定義では、主要文明とは、独自の文明の様式をもち、自立的に発展し、かつ文明の寿命が千年以上ほどに長いか、または現代世界において重要な存在であるものである。主要文明の文化的刺激を受けて発生し、これに依存し、宗教・政治制度・文字・芸術・技術等を借用する文明を、周辺文明と呼ぶ。
 本稿では、世界的なキリスト教の歴史について、次のような時代区分を行う。
 古代を西暦紀元前後とされるイエスの誕生から476年のゲルマン民族の侵攻によるローマ帝国の滅亡までとする。約500年間である。中世を476年から1453年のイスラーム文明の攻撃による東ローマ帝国滅亡までとする。約1000年間である。近代を1453年から1945年の核時代の始まりまでとする。約500年間である。現代を1945年以降、現在までとする。70年間を過ぎたところである。
 この間、キリスト教では、だいたい5百年目ごとに新しい動きが現れている。紀元30年頃のイエスの死から最初の約5百年間に、主流となる教義が形成され、それが正統とされる一方、アリウス派、ネストリウス派、単性論派などが異端とされた。その後、約5百年経つと、西方のローマ・カトリック教会と東方の正教会が分れて、それぞれ独自の道を歩み始めた。またその約5百年後、西方キリスト教では、プロテスタンティズムが登場した。さらにその約5百年後には、教会合同運動が起こり、またローマ・カトリック教会では過去の誤りを認めたり、他宗教とも対話したりする動きが出ている。そして、21世紀において、キリスト教は終末的完成に至るか、宗教を超えたより高次元のものへと発展的に解消するかという大きな岐路に立っている。

●ユダヤ教とユダヤ人の歴史のはじまり
 
 キリスト教の歴史は、ユダヤ教及びユダヤ人の歴史と切り離すことはできない。キリスト教はユダヤ教から派生した後、ユダヤ教の聖書を旧約聖書として共有し、そこに書かれたユダヤ教及びユダヤ人の歴史を自らの前史としているからである。
 旧約聖書によると、ユダヤ民族は、最初の人間をアダムとする。その子孫であり大洪水で生存したノアには、セム・ハム・ヤペテの三人の子があった。その長子セムの子孫であるアブラハムが神と契約を結んだ。契約の時期は紀元前2千年紀の初頭であり、アブラハムは神ヤーウェからカナンの地を与えるという約束を受けた。これをアブラハム契約という。カナンの地のパレスチナはユダヤ民族の「約束の地」になったと信じられている。
 アブラハムは、ヘブライ人であり、遊牧民の族長だった。その孫ヤコブには、12人の子があった。その子らは、12部族の名祖となった。ヤコブは、別名をイスラエルといった。ヤコブとその後裔である12部族を総称して、イスラエル人という。
 ヤコブらは飢饉を逃れて、エジプトへ移住した。その子孫は、エジプト人の奴隷にされて苦役に服すようになった。紀元前13世紀後半、彼らの指導者であるモーセは、族長の神と名のる神の顕現を受けた。そして紀元前1280年ころ、イスラエル人を率いてエジプトを脱出した。これを、出エジプトという。モーセは、紅海で海が割れる奇跡を起こし、エジプト軍の追跡から逃れたとされる。
 モーセは、シナイ山において神と契約を結んだ。これをシナイ契約という。この契約によって、アブラハム=モーセの神はイスラエル人の唯一の神とされ、イスラエル人、後世のユダヤ民族は神ヤーウェに選ばれた唯一の民族と信じられた。これが選民思想である。
 モーセが神ヤーウェから与えられた律法が、十戒である。十戒は、ユダヤ教の教義の中核をなすものであり、ユダヤ教徒としてのユダヤ民族の生き方を決定する規範となった。

 次回に続く。
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