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2018年05月16日08:56

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改憲論10〜自衛隊創設の経緯

3.自衛隊とは何か

 憲法第9条をめぐる議論は、自衛隊に関する議論でもある。本稿ではこれまで自衛隊について幾度か言及してきたが、いったい自衛隊とはどのようなものであるか。

(1) 概要
 
 自衛隊は、日本の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略および間接侵略に対して防衛することを主な任務とする部隊および機関である。昭和29年(1954年)6月に防衛庁設置法および自衛隊法によって設置された。現在自衛隊は、防衛省本省、統合幕僚監部、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊、防衛施設庁の総称として使われている。
 自衛隊は、警察と軍隊の中間的な組織であり、警察軍としての一面と国防軍としての一面がある。こうした複雑な性格を持っているのは、その創設までの経緯によっている。
 次に、その経緯を書いたうえで、任務・行動・権限・予算・評価・人員・装備等について述べる。

(2) 創設までの経緯

 大東亜戦争の敗北の結果、わが国は、連合国軍総司令部によって占領され、旧大日本帝国陸海軍は解体された。わが国は、国防のための実力組織を持たない被占領国となった。GHQは秘密裏に英文で憲法の草案を作り、それをもとにした日本国憲法が、占領下の昭和22年(1947年)5月3日に施行された。日本国憲法は、前文で「安全と生存」を「平和を愛する諸国民」に委ねるとし、第9条に戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を規定した。占領期間の終了後、日本が独立と主権を回復した時、国防や治安維持をどのように行うか。それが占領下のわが国の一大課題だった。
 昭和25年(1950年)6月25日、北朝鮮軍の侵攻により、朝鮮戦争が勃発した。これに対処するため、在日米軍が約8万人派兵された。7月8日、連合国軍最高司令官マッカーサーは、空白となった日本の治安維持と防衛を担当させるため、警察予備隊の設立を指示した。これに基づいて8月10日、警察予備隊令が公布され、即日施行された。占領命令を実施するためのポツダム政令によるものだった。警察予備隊は7万5000人で設立され、総理府の機関として組織された。
 警察予備隊の目的は「警察力を補う」ことであり、治安維持のため特別の必要がある場合に内閣総理大臣の命を受けて行動するものとされた。だが、実質的には、在日米軍を補完する小型陸軍の建設が目的だった。師団相当の管区隊4個が全国に配備され、在日米軍の警備任務を引き継いだ。小銃、機関銃、ロケット弾発射筒、迫撃砲などが米軍から貸与された。準軍隊的な組織であり、一部の国に見られる警察軍に当たると言えよう。後にこれが陸上自衛隊に発展した。
 マッカーサーは、警察予備隊の設立を指示した際、海上保安庁の定員を8000人増加することも指示した。海上保安庁は「海の警察」であるが、旧海軍の残存部隊がこれに加わっていた。昭和27年(1952年)4月26日、海上保安庁法の一部が改正され、海上保安庁に海上警備隊が創設された。陸上における警察予備隊に相当するものであり、日本海軍の不在を補うものである。海上警備隊の任務は、海上における人命・財産の保護、治安維持のため緊急の必要がある場合、海上で必要な行動をすることだった。やはり準軍隊的な組織であり、海上の警察軍的なものと言えよう。後にこれが海上自衛隊に発展した。
 昭和27年(1952年)4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効し、わが国は独立を回復した。主権の一部は制限されたままとはいえ、独立主権国家として国際社会に復帰した。
同日、日米安全保障条約(旧日米安保条約)が発効した。この条約は、日本における安全保障のため、アメリカ合衆国が関与し、米軍を日本国内に駐留させることなどを定めたものである。米国には日本を守る義務があるが、日本には米国を守る義務のない片務的な条約であり、形を変えた占領の延長という性格を持っていた。この時点の日本には、自力で国を守る力はなく、国防を米国に依存する体制となった。
 昭和27年4月の独立回復後、保安庁法が国会に提出され、7月31日に可決された。翌8月1日、警察予備隊と海上警備隊を管理運営するために、総理府の外局として保安庁が設置された。警察予備隊は保安隊に改組され、海上警備隊は保安庁の管轄下に移った。これらの部隊の任務は、「わが国の平和と秩序を維持し、人命、財産を保護するため特別の必要がある場合に行動する」ことだった。
 陸上の保安隊には、榴弾砲、戦車、連絡機などが米軍から貸与され、海上の警備隊にはフリゲート艦、上陸支援艇が引き渡された。任務はあくまで治安維持だったが、陸上海上とも準軍隊的な組織が一段と実力を増大することになった。
 昭和29年(1954年)6月、防衛庁設置法および自衛隊法が成立した。これらを合わせて、「防衛二法」という。これらの法律の施行により、保安隊は陸上自衛隊、海上警備隊は海上自衛隊に改編された。翌月、新たに領空警備を行う航空自衛隊も設置され、ここに陸・海・空の3自衛隊が発足した。
 自衛隊は、現行憲法と日米安保条約のもとで、自立した実力組織ではなく、在日米軍を補完する組織として設立された。米軍を「矛」とすれば、自衛隊は「盾」の役割を担っている。言い換えれば、自力だけでは日本を守ることのできない実力組織が、自衛隊である。先に警察力・侵攻力・防衛力について書いたが、この点において、高度の警察力を持つ警察軍としての性格と、防衛力のみを持つ実力組織としての国防軍という性格を併せ持っている。

 次回に続く。

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