mixiユーザー(id:525191)

2018年02月24日10:02

38 view

自衛隊明記の場合の9条改正案〜西修氏

 昨年5月3日、安倍首相が自民党総裁の立場で、2020年に新憲法施行というスケジュール案を示し、憲法改正論議を活発化することを求めた。また、9条の1項、2項を維持し、3項に自衛隊を明記する案を提示した。以後、憲法改正に関する議論が活発化し、早期に改正を実現しようとする勢力と、改正に絶対反対するという勢力が対立している。
 安倍首相の提案は、それまで自民党が作り上げた憲法改正案とは異なる提案である。平成24年版の自民党憲法改正原案は、9条を本格的に改正するものだった。9条1項の言葉を整え、2項は削除して、「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」という条文を入れる。9条の二を設けて、自衛隊ではなく「国防軍」について規定し、最高指揮官、任務、組織、軍人等の裁判等について定める。9条の三を設けて領土の保全等についても定めるものだった。
 しかし、安倍首相は、9条の大幅な改正は連立与党の公明党の理解を得られにくく、発議後の国民投票で過半数の賛成を得られるかどうかも難しいと考え、現実的に改正が可能な案として提出されたものだろう。 
 安倍氏の案は、24年版の条文案を止めて、9条の1項、2項を維持し、3項に自衛隊を明記するというシンプルなもので、条文案は示されていない。また、9条の二、三を設ける考えは見られない。自衛隊の明記に目的をしぼっている。
 安倍首相は「自衛隊員に『君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれ』というのはあまりにも無責任だ。そうした議論が行われる余地をなくしていくことが私たちの世代の責任だ」と述べている。最低、これは実現したいという考えと見られる。
 この提案に対し、自衛隊は国民の大多数が認めており、今更憲法に書き込む必要はないという反対意見がある。しかし、国民が自衛隊を認めているということと、自衛隊が合憲かどうかは別の事柄である。裁判所の判断は曖昧であり、高裁判決を含め多くは「統治行為論」を採用し、正面からの判断を避けている。統治行為論とは、国家の基本にかかわる高度に政治的な問題については、国会や内閣の判断に委ねるという理論である。下級審判決の中には、長沼事件1審判決のように自衛隊を違憲としたものもある。それゆえ、最終的な憲法判断を行う最高裁が合憲判断が下せるよう、自衛隊を憲法に明記し、その法的地位を確立するという狙いがあると見られる。
 ただし、仮に自衛隊を明記する改憲案が国民投票で承認されなくとも、国民投票は自衛隊の合憲か違憲かを決めるものではない。あくまでその判断をするのは、裁判所である。
 安倍首相は、3項の具体的な条文案を示していないので、自衛隊の役割と目的をどのようなものとしたいと考えているかは、わからない。自衛隊を自衛のための最小限度の実力組織という従来の性格のままとするのか、自衛のための戦力とか国防のための軍隊と位置づけ直すのか。二つの方向性がある。どちらの方向性にも、2項を削除または改正する必要があるという考え方、詳細を定めるため9条の二を追加するという考え方等がある。

 私は、目指すべき憲法には、安全保障の章を設け、以下のような要素を盛り込む必要があると考える。
 国際平和の希求/侵攻戦争の否定/平和的解決への努力/個別的・集団的を含む自衛権の保有と行使/国民の国防の義務と権利の一時的制限/国軍の保持/国際平和維持のための協力/最高指揮権の所在/軍の活動への国会の承認/軍人の政治への不介入/軍人の権利の制限/軍事裁判所等である。これらを盛り込んだ私案をネット上に掲載している。
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion08h.htm
平成18年(2006年)に発表したものだが、その6年後に出された自民党の平成24年版の案より徹底したものとなっている。独立主権国家と国防のあるべき姿を追求したものである。
 しかし、国会と国民の現状から見て、私は、まず現実的に可能な改正をし、段階的に整備していくという方法論も検討されるべきと考える。

 ここでは、自衛隊を明記する案の一つとして、駒澤大学名誉教授の西修氏の提案を紹介する。氏の提案は、次の通り。

 「現行の第9条をそのまま残し、新たに第9条の2を加える。

第9条の2
 (1)日本国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、自衛隊を保持する。
 (2)自衛隊の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属し、自衛隊の行動については、文民統制の原則が確保されなければならない。
 (3)自衛隊の編成及び行動は、法律でこれを定める。」
 
 提案の主旨は、下記の記事に述べられている。自衛隊明記の案としては、優れたものと思う。弱点は、現状の9条と新設の9条の2との関係が明記されていない点である。氏の案を発展させるとすれば、現状の9条に3項を設け、「前2項の規定は、自衛権の発動を妨げない」と加え、そのもとに9条の2を設ける必要があるだろう。
 以下は、西氏の記事。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞 平成30年2月22日

http://www.sankei.com/politics/news/180222/plt1802220006-n1.html
2018.2.22 11:00更新
【正論】
私の憲法9条改正案を提示する 駒沢大学名誉教授・西修

(略)

≪2項と自衛隊明記は矛盾せず≫
 いうまでもなく、現行憲法の最大の問題点は、わが国の平和を維持するための安全保障条項を欠いていることと、自衛隊の合・違憲性をめぐり、果てしのない神学論争が続いてきたことである。
 この問題点を解決すべく、いくつかの改正案が提起されている。自民党では、自衛隊を憲法に明記することで案のとりまとめが進められているが、「戦力の不保持」を定めている9条2項を維持するのか、あるいは同項を削除するのかで、意見の対立がみられる。
 後者は「戦力の不保持」規定を残したまま自衛隊を明記することは、つじつまが合わないと主張する。しかし、この主張は正しくない。
政府は、自衛戦力を含む一切の「戦力」の保持を禁止するとしつつ、「自衛権の行使を裏付ける自衛のための必要最小限度の実力を保持することまでも禁止されておらず、わが国を防衛するための必要最小限度の実力組織としての自衛隊は、憲法に違反しない」との解釈をとっている。それゆえ、「戦力にいたらない自衛隊」を2項とは別に規定することに、矛盾は生じない。
 なお、私はいわゆる芦田修正後に展開された極東委員会の熱論を経て、66条2項の文民条項が導入されたいきさつを精査すると、本来、9条2項は「自衛戦力」の保持まで禁じられていないと解釈すべきであると考えるが、ここでは控える(本欄平成29年11月27日付)。

≪独立国家に国防条項は不可欠≫
 私案について、いくつかの面から説明しておきたい。
 第1に、平和を維持するための安全保障条項を設定することは、独立国家として、憲法上、不可欠である。近年、多くの国の憲法に平和条項が導入されているが、それと同時に、その平和を担保するための国防条項が設けられているのが通常だ。少なくとも、人口500万人以上の独立国家で、国防条項を欠いている憲法を日本以外に私は知らない。
第2に、憲法を改正するには、多くの国民の支持を得なければならない。内閣府が27年1月に実施した世論調査によると、自衛隊に「良い印象を持っている」人たちが92・2%にのぼり、「悪い印象を持っている」人たちは、わずか4・8%にすぎない。また、自衛隊を憲法に明記することに関する最近の世論調査では、産経・FNNの合同調査で「賛成」58%、「反対」33%(産経新聞30年1月23日付)、テレビ朝日系のANN調査で「賛成」52%、「反対」34%(1月22日発表)という数値が示されている。
 これに対して、「戦力」としての軍隊あるいは国防軍の設置については、いまだ多くの国民のあいだにアレルギー現象が払拭されていない。

≪立憲主義に従い国民の意思問え≫
第3に、憲法に自衛隊を明記するとすれば、シンプルでかつこれまでの政府解釈の範囲内に収まるものであることが望まれる。私案「第9条の2」の1項は、現在の自衛隊法第3条1項「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする」のうち、主任務を設定したものであり、現状となんら齟齬(そご)はない。
私案2項は、おなじく自衛隊法第7条「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」を援用したものであって、新たな権限を内閣総理大臣に付与しない。
 自衛隊の行動をシビリアンコントロールのもとにおくようにすることは、必置の憲法事項である。私案では「文民統制」の語を使用した。先述したように、憲法に「文民」の語があり、新奇な用語ではない。
 第4に、私案にあって、「自衛のため必要最小限度の実力組織」としての自衛隊が存続されるわけであるから、「自衛のため必要最小限度の実力」の中身が問われ続けられることになる。国の平和、独立、安全、そして国民の生命、自由および幸福追求の権利を確保するためにいかなる措置を講ずるべきか、従来の法律レベルではなく、憲法レベルで、国民全体が考究していくことが求められる。
 憲法改正は、憲法自身が定めている国民主権の最大の発露の場である。延々と議論を重ねているだけでは、なんら得るものがない。立憲主義にのっとり、国民の意思を問うてみようではないか。(駒沢大学名誉教授・西修 にしおさむ)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する