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2017年04月17日09:21

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ユダヤ38〜宗教的寛容の原理の確立

●宗教的寛容の原理の確立

 近代西欧諸国では、宗教戦争や市民革命を通じて、信教に対する「寛容の原理」としての自由が求められた。そして、宗教的寛容の広がりによって、プロテスタンティズムやユダヤ教の信仰が許容されるようになった。
 ジョン・ロックは名誉革命の理論を提供したことで知られるが、同時にユダヤ教徒等への宗教的寛容を説き、大きな影響を与えた。名誉革命期にオランダに亡命していたロックは、そこで宗教的寛容の思想の影響を受けた。ロックは、『寛容についての書簡』で、キリスト教の中で正統と異端の区別をなくすだけでなく、ユダヤ教やイスラーム教などの異教徒も、キリスト教徒と同じく信教の自由を保障されるべきだと主張した。ただし、社会秩序に反するもの、他の人々の信仰の自由を認めないもの、外国への服従を主張するもの、無神論者には制限を設けるとした。
 『寛容についての書簡』は1689年にオランダ、イギリスで出版され、同年イギリスではロックの主張に沿って宗教寛容法が制定された。同法は非国教徒に対する差別を残し、カトリック教徒やユダヤ教徒、無神論者、三位一体説を否定する者等には、信教の自由を認めないという限定的なものだったが、信教の自由の保障が一部実現した点で、歴史的な意義がある。その保障は、やがて拡張されていった。ロックが直接意図したかどうかはわからないが、彼の主張がユダヤ人の自由と権利の拡大に寄与したことは間違いない。
 宗教的寛容は、他のヨーロッパ諸国にも広がっていった。私は、ユダヤ人の活動なくしては、西方キリスト教圏で信教の自由を実現し、思想・信条の自由を確立する運動は、それほど進展しなかっただろうと考える。ユダヤ人自身の活動は思想運動ではなく、経済活動として進められた。ユダヤ人は富を生み出して、キリスト教社会の発展に寄与することによって、彼らの自由と権利を拡大した。同時に、それはキリスト教社会にユダヤ的価値観が浸透・普及していく過程でもあった。

●中央銀行の設立

 ユダヤ人は、常に追放の可能性にさらされていた。そこで生き延びるための集団的本能から、様々な方策を行った。危険が訪れたら速やかに財産を以て移動し、移住先でもすぐに財産を別のものに交換できるようにする技術を発達させた。それゆえ、新しい土地でもすぐ商売や取引を開始できた。また、彼らは経済の手続き全般を合理化した。
 第一の例は、信用貸しである。ユダヤ人は、信用貸しの制度を生みだし、これを普及させた。
 第二の例は、有価証券である。ユダヤ人は、信用状が発達すると、それをもとに無記名債券を考案した。為替手形や銀行券などは、彼ら移動の民にとって非常に有利なものだった。
 第三の例は、株式取引所の整備である。株式は効率よく合理的に資本を調達し、それを最も生産的に配分するための手段である。ユダヤ人はアムステルダムの株式取引所を牛耳っていた。最初に証券による大規模な取引を行ったのもユダヤ人だった。ロンドンではそれをさらに拡大した。
 第四の例は、中央銀行である。その重要性は、上記の三つの例を遥かに上回る。ユダヤ人は、1694年にイングランド銀行を設立した。イングランド銀行でユダヤ人は、アムステルダム銀行の仕組みをさらに高度に発達させた。イングランド銀行は民間銀行だが、政府に巨額の貸付を行うことで、銀行券の発券特許を得た。民間銀行が一国の通貨の発行権を獲得したのである。それによって、イングランド銀行は、国家の中央銀行となった。近代主権国家は、貨幣経済を管理するために、その国の信用制度の中心となる銀行を必要とする。それが中央銀行である。その中央銀行を民間銀行が務めることになったのである。また、これにより、政府は財政の維持や戦費の調達のために国債を発行し、銀行はそれをもとに貨幣を発行するという仕組みも作られていった。
 ロスチャイルド家が台頭するのは18世紀後半だから、中央銀行の設立はそれより一時代前の話である。その頃すでに、ユダヤ人は中央銀行制度によって国家財政を動かし、とめどない富を獲得する仕組みを作り上げていたのである。1833年には、イングランド銀行券が法貨に定められた。法貨とは、法的強制力を与えられた貨幣である。民間銀行が発行する銀行券が、法定通貨になったのである。これによって、中央銀行制度は完成した。
 近代主権国家は、個人の所有権、財産権、商業活動の自由、職業選択の自由等、国民の自由と権利を保障するための法制度を発達させた。それらは、資本と国家が富と権力を維持・発展することを可能とする仕組みである。そして、それに加えて、この中央銀行制度が完成したことをもって、私は近代資本主義が完成したと考える。
 貨幣は、利子をつけて貸すことで価値を増大させる。それが、資本主義の根本にある。貸し借りは権力関係を生む。この関係が個人と個人の間ではなく、資本家と政府の間で結ばれ、さらにその債権債務は政府が国民から徴税する方法で処理される。こうした仕組みが法制度化されたことにより、近代資本主義は仕組みとして完成したと私は考えるのである。そして、近代資本主義の発展・完成の過程で、ユダヤ人銀行家の果たした役割は極めて大きい。
 さらに重要なことは、民間銀行が中央銀行となり、通貨発行権を握った場合、紙幣を印刷することで、ほぼ無限の利益を得られることである。その仕組みは、「紙幣の錬金術」と呼ぶに値する。中央銀行は通貨発行権という特権を用いて、政府が印刷した紙幣を原価並みの値段で買い取る。それを政府は銀行から額面どおりの値段で借りる。その結果、利子の支払いが生じる。政府は、債務を追うということである。政府からほぼ原価で引き取った紙幣を、政府に額面どおりに売り、そのうえ利子を取るのだから、利益は莫大となる。これこそが中央銀行の本質である。それゆえ、この権益を犯そうとする者に対しては、しばしば暗殺、戦争、クーデタ等の手段が取られる。
 ユダヤ人は経済の手続き全般を合理化し、活発な経済活動を行った。それによって、ユダヤ的価値観が西洋文明に浸透し、普及していった。繰り返しになるが、ユダヤ的価値観は、物質中心・金銭中心、現世志向、自己中心の考え方であり、対立・闘争の論理、自然を物質化・手段化し、自然の征服・支配を行う思想である。こうした思想が近代西洋思想と考えられているのは、近代西洋思想がユダヤ=キリスト教の文化を土壌として発達したからである。そして、近代西洋思想の核心には、ユダヤ的価値観が存在するというのが私の見解である。西欧で発達した近代資本主義の中枢を占める中央銀行制度の存在は、そのことを最もよく表すものとなっている。

 次回に続く。
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