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2016年11月24日09:31

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人権379〜政治的自治権

●政治的自治権

 次に、政治的自治権について述べる。集団は、対外的に集団として持つ権利を確保・獲得・行使するために、実力を組織し、一定の領域を統治するようになることがある。氏族・部族・組合・団体・社団等の集団のうち、物理的実力を組織し、一定の領域を統治するものを、政治的な集団という。政治的な集団の持つ社会的権力は、同時に政治的権力となる。政治的な権力が国家に係るものとなったものが、国家的権力である。
 氏族・部族・組合・団体・社団等の集団が、自らが所属する上位集団の統治機構に対して自己決定権を主張し、物理的実力を保有し、一定の領域を統治することが承認されたとき、政治的な自治権となる。自治の能力がないと、自治の権利は承認されない。実力を伴う自治の権利を主張するには、自治の能力を政府に対して示して承認を得るか、または闘争によって勝ち取らねばならない。
 世界に広く存在する氏族的・部族的共同体、西欧の封建制社会における領邦国家、日本の封建制社会における領国や藩、自治都市、自治性を持つ村落等においても、近代国家の成立以前から、集団の政治的自治権が存在し、機能していた。
 近代国家は、国家形成の過程で、領域内の自治団体を国家の統治の範囲に取り込み、自治権を剥奪するか、または政府が一定の自治権を与え直すかした。国民国家において、この国家形成を推進した思想・運動が、ナショナリズムである。
 第6章に人権とナショナリズムについて書いたが、私は、ナショナリズムを「国家主義」「国民主義」、ネイションを政治社会としての「国家」または政治的集団としての「国民」、エスニック・グループを「民族」、エスニシズムを「民族主義」と区別する。ナショナリズムとは、エスニック・グループをはじめとする集団が、一定の領域における主権を獲得して、またその主権を行使するネイションとその国家を発展させようとする思想・運動である。ナショナリズムに対し、エスニック・グループが独自に示す現象をエスニシズムという。エスニシズムは、ある集団がエスニック(民族的)な特徴を積極的に維持・発揚しようとする思想・運動であり、前近代及び非西欧にも広く見られるものである。ナショナリズムは、エスニシズムとの関係では、エスニシズムの特殊な形態であり、近代西欧的な主権国家の形成・発展にかかるエスニシズムである。
 集団が政治的自治権を求める運動と、これを認めない国家権力のぶつかり合いは、時に分離独立運動へと発展する。歴史的には、18世紀アメリカの場合、植民地の住民が参政権を得て本国の英国議会に代表を送ることができたならば、イギリスから独立しなかったかもしれない。またイギリスの統治下にあっても、課税等に自治権を与えられれば、独立しなかったかもしれない。ジョージ3世の暴政・圧制が反発を招き、権利の請願運動が昂進し、独立運動に発展した。20世紀には、15世紀から長く白人種に支配されてきた有色人種が民族独立運動を起こし、次々に独立を勝ち取った。その過程で民族自決権が認められ、各地域で実現してきた。20世紀は一面においてナショナリズムの時代であり、政治的自治権の拡大・普及の時代だった。
 1990年代から21世紀にかけて、世界的にアメリカの主導でグローバリゼイションが進められてきた。その一方で、ローカリゼイションも進みつつある。今日、多くの国家で、歴史・文化・宗教・言語等の独自性を持つ地域集団やエスニック・グループが自治権を要求し、政治問題となっている。独立闘争に発展する場合もある。
 一国の統治権の枠内で、権限の拡大を求める地方分権論と、自ら主権を持とうとする地域主権権は異なる。分離・独立を求める集団は、要求が政府の承認を得られない場合、闘争を開始する。政府には領域・人民の統治権があるから、分離・独立しようとする動きを封じ、統一を保とうとする。政府と集団の意思と意思のぶつかり合いは、最終的に実力によって決着をつけることになる。
 わが国では、現行憲法に言論・表現・集会・結社等の自由を保障し、また地方自治の章を設けて地方公共団体について定めている。地方公共団体による地方自治は日本国民である住人の政治的な自治権の行使である。地域主権を唱える政治家・学者がいるが、もし中央政府と地方政府が対等となり、地域主権が現実になると、国家としての統一が緩み、国家の解体に向かう。国民の権利を保障している国家が解体した時、自治団体が独自の防衛・治安等の機能を持たないと、他国から侵攻・支配される危険性が高まる。また在日外国人については、日本政府が許可する範囲で自己決定権が承認されている。わが国では、外国人に日本国の参政権を与えていない。日本国籍を持たない非国民に参政権を付与しないことは、日本国民の意思であり、統治権の行使である。わが国には人権の観念を振り回して、外国人にも地方参政権を与えようとする動きがあるが、これは自国民の「国民の権利」を侵害し、他国民の権利を拡大して、自国の利益より周辺諸国の利益の追求に加担する動きになり得るものである。

 次回に続く。

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