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2016年11月21日08:56

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人権378〜政治的な権利

●政治的な権利

 権利の三つ類型である自由権・参政権・社会権及び「発展の権利」について書いた。ここでこれら全体に係るものとして政治的な権利と経済的な権利について補足したい。
 まず政治的な権利については、自由権と参政権の両方にまたがる権利であり、また「発展の権利」の基礎となる権利でもあるものとして、自治権がある。その点を補説する。
 自由権の項目で述べたように、自由権の一種に自己決定権がある。自己決定権は「発展の権利」の重要な要素である。自己決定権とは、自ら物事を決定する能力であり、それを実現することのできる資格である。自己決定権は、集団においてその成員に認められる権利である。成員には、その集団の決まりごとに反しない限りで、自己決定権が認められる。この権利は伝統・慣習・規約等によって社会的に行使を承認された能力であり、資格である。成員は、その社会の規範に沿って、自己決定権を行使することを求められる。
 集団における個人に自己決定権があるように、集団自体にも自己決定権がある。集団として自集団に関する物事を決定し、それを実現する権利である。集団は他の集団に対して、この権利を主張する。個人及び集団の自律または自活は、人間の生命と知恵と自由による基本的な能力であり、相互の承認を受けて権利となる。こうした集団の自己決定権の一つが、自治権である。自治権は、一定の地域と一定の成員を持つ集団が、自らの意思で自らを統治する権利である。集団が持つ自己統治権である。
 自治権は、成員が集団の自己決定に参加する権利を伴う。この集団的意思決定への参加権は、参政権の元になる権利である。参政権の項目に書いたように、意思決定参加権は国家が成立する前から社会に存在していた。この権利は、社会契約説が想定する抽象的・アトム的な個人の権利ではない。集団においてその成員に認められる権利である。また特定の集団の成員のみが所有する権利であり、他集団に対しては自立的かつ排他的である。またその集団内では成員の身分・立場によって権利の有無・程度が変わる。それゆえ、どの集団の個人にも共通する一般的な個人の権利としての参政権は存在しなかった。国家も一個の集団であるから、他の集団におけるのと同様、国民には成員の権利として、一定の範囲で意思決定への参加権が認められる。近代西欧においては、一定の領域内における諸集団の自己決定権を国家が保障したとき、その集団が属する国家における「国民の権利」となった。近代西欧において、最初は貴族や聖職者の身分に限定された特権だった。後に年齢・性別・財産等に基づいて、範囲が拡大されていった。現在も年齢等によって資格を制限する特殊的な権利である。

●自治権の諸形態

 自治権には、家族的自治権、社会的自治権、政治的自治権がある。この分類は私独自のものである。家族的・社会的・政治的に分けるのは、第3章の権力に関する章で、権力の諸形態について、家族的権力、社会的権力、国家的権力に分けたことに対応する。権利と権力は相関するので、同様の分類が必要となる。
 集団の最小規模である家族は自己決定権を所有し、家族が自らを治める権利がある。これは、家族の持つ集団として持つ基本的な権利である。この権利を一般には自治権といわないが、広い意味で自治権と呼ぶべきと私は考える。
 家族的な自治権は、他の集団における自治権のもとになるものである。家族的自治権は、他の家族に対して、自集団を自らの意思で治める権利である。家族的自治権は、その権利の行使において、家族的権力の行使となる。その自治権の行使は、家族が所属するより大きな集団の中で承認を得て、またその上位集団の利益と両立するものでなければならない。ただし、特定の家族が集団の中で権力を拡大し、集団全体の自治権を主導しようとしたり、これに他の家族が対抗するという闘争的な権力関係が生じることがある。
 次に社会的自治権について、氏族・部族における自治権は、家族と同様に集団として持つ基本的な権利である。より大きな集団との関係は、家族の場合と同様である。組合・団体・社団等の契約集団については、自治権は集団の一員にとって、自分の自己決定権の集団を通じて行使することになる。それゆえ、契約集団も自己決定権としての自治権を所有する。社会的自治権は、その権利の行使において、社会的権力の行使となる。ただし、その自治権の行使は、上位集団の利益と両立するものでなければならない。上位の集団の自己決定に、下位の集団は服従する。上位が認める範囲内で、下位の自己決定権は承認される。ただし、特定の契約集団が社会の自治権に関する主導権を獲得しようとして、闘争的な権力関係が生じることがある。
 集団と集団の関係において、最も上位の集団が国家である。国家の内部における諸集団の自治権は、国家・国民の利益を損なわず、またその利益に貢献する限りで認められる権利である。その利益に反する行動をする下位集団には、制裁が加えられ、自治権の制限や剥奪が行われることがある。社会的自治権をめぐる権力関係は、次の項目で述べる政治的自治権の問題に連なっている。
 
 次回に続く。

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