東宝ゴジラ・シリーズの第29作(国産のみ)となり、『ゴジラ FINAL WARS』以来12年ぶりとなるゴジラ映画の最新作『シン・ゴジラ』を見てきました。
監督の庵野秀明はアニメーション界の鬼才。
自分にとっては「ふしぎの海のナディア」(1990)から入り、「新世紀エヴァンゲリオン」(1995)で人生を狂わせられた才人ですが、長編実写映画監督としては『ラブ&ポップ』『式日』『キューティーハニー』というあまりにスタイルの異なる異色作に戸惑ってばかりでした(もちろん全部映画館で見ています)。
『風の谷のナウシカ』の前日談を描いた衝撃の短編特撮映画『巨神兵東京に現る』(2012)を見て、ゴジラ映画の監督就任には期待していました。
しかし『シン・ゴジラ』は、それどころか期待をはるかに上回る素晴らしさに満ちた作品でした。
目下のところ、個人的に本年の映画第一位であることに、疑問の余地はありません。
【物語】
東京湾内で無人のボートが漂流しているのが発見されたと同時に、湾下のアクアトンネルが崩落するという事故が発生。たちまち高温の水蒸気が噴き出し、現場は騒然となった。
大河内首相(大杉蓮)率いる総理官邸では、危機管理センターが立ち上げられた。
海底火山の噴火を想定する閣僚たちの中で、内閣官房副長官の矢口(長谷川博巳)だけは、巨大生物の出現だと進言。やがて海中から、正体不明の巨大生物が現われ、東京を蹂躙し始める。
驚異的な速さで進化を遂げた巨大生物は”ゴジラ”と呼称され、自衛隊の火器による集中攻撃が行われるが、まるで歯が立たない。米軍を中心とする国連軍も介入し、最悪の事態が訪れる。
…ハリウッド版も含めて、これまでに何度もリブートを繰り返してきたゴジラ・シリーズ。
今回、あの伝説的な第一作(1954)以来実に61年ぶりに、子供向けではない、真の恐怖と激しい攻防を描いた極めて映画的なゴジラ映画が誕生しました(それは1960年代に円谷英二が描いていた願いとは異なるかもしれませんが、本当の意味で、第一作のゴジラの恐怖を描いた作品は、あの第一作以来です)。
これまでにも、未曾有の災害に巻き込まれる人々を描いた作品はありました。
金子修介監督版『大怪獣総攻撃』(2001)では、ゴジラの厄災を命からがら免れた少女が、入院先の病院ごとゴジラに吹き飛ばされるというシーンもありました。
しかし、避難準備をしていた幼い子どもが両親ごとマンションの屋内でゴジラに押しつぶされるという凄惨な描写を見たのは初めてです。
後手後手に回る政府の対応、自衛隊の矛盾と日米協定、放射能汚染の深刻さをここまで生々しく描いたのも初めてです。『シン・ゴジラ』は、その”シン”に”新”という意味が含まれるかのごとく、過去60年間のゴジラ映画で描ききれていなかった鮮烈な映像に満ちています。
圧倒的な映像情報量と編集で見せてきた庵野秀明監督らしく、「一見すると荒唐無稽に見える題材を、大真面目に、しかも面白く見せる」映画魂は、ここにひとつの頂点を迎えたと言えます。ゴジラ映画でありながら、それまでアニメーションでやってきた庵野作品の集大成であり、最高傑作のひとつであることは、控えめな一ファンである自分から見ても明らかでした。
★★★★★。新時代の、堂々たるゴジラ映画の誕生です。
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