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2015年11月21日09:31

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人権228〜人権の国際的保障と国際法の発達

●人権の国際的保障と国際法の発達

 今日、人権に係る問題は、各国の国内における問題であるとともに、国際社会における問題ともなっている。この点を法制度と国際機構について、見ていこう。
 まず法制度について、各国には法規範として国内法があるが、国際社会には、国際的な法規範として国際法がある。国際法は、西欧において近代主権国家が形成されたことにより、国家間の法として発達した。17世紀前半にグロティウスが、人間理性に基づく人定法として、国家法のほかに国家間・国民間に共通の法として万民法があるべきことを主張したのが、はじめである。その後、西欧で発達した国際法は、19世紀後半から世界に広まった。国際法において人権観念が発達し、その擁護が主張されるようになるのは、20世紀になってからである。
 今日では人権に関する国際的な規範は、国際法の一部となっている。わが国では、ともすると人権を自国の憲法との関係でばかり考えがちだが、それに偏ると島国社会での狭い議論に陥る。かえってそのために、人権に係る国際機関の勧告や、外国人の権利問題において有効な反論ができない状態にある。特に伝統尊重的保守の一部にその傾向があると私は強く感じている。だが、人権を考察するには、国際法の基礎知識が欠かせない。
 国際法は、条約と慣習国際法を主要な構成要素とする。条約は締約国のみを拘束し、第三国を拘束しないのに対し、慣習国際法は国際社会のすべての国家を拘束する。国際法違反を犯した国家には国家責任が生じ、原状回復、損害賠償、陳謝といった事後救済の義務が生じる。しかし、現在の国際社会にはそれを強制執行する仕組みは確立されていない。国際社会では、客観的な事実認定、違法性認定や法適用について制度的な保証がない。そのため、被害国の自力救済措置が認められてきた。自力救済措置とは、自衛権及び非軍事的復仇である。
 第2次大戦中、連合国は、現在国際連合と呼ばれている国際機構を創設し、国際秩序の形成を行うとともに、人権の国際的保障に努めることとした。国連については、次の項目で述べる。
国際法の重要な機能の一つとして、各国の国内法の変更及び発展を外から促進するという役割がある。ただし、これも促進ということであって、強制力はない。
 国際法と国内法の関係については、両者は別箇の法秩序とみる二元論と、統一的な法秩序を構成するとみる一元論がある。一元論には、国際法をもって国内法を委任する上位秩序とみる国際法優位説と、国際法をもっていわば国内法により委任された法秩序とみる国内法優位説がある。後者の国内法優位説の一元論は今日ほとんど支持を失っているが、二元論と国際法優位的な一元論の間には論争があり、決着がついていない。
 国際法と国内法との効力の上下関係については、各国の憲法体系に委ねられている。国内で条約がどのような効力を持つかについては、各国の憲法が定めている。条約が国内的効力を持つために国内法への変形が必要であるという変形方式を取る国と、条約を国内法に一般的に受け入れてその国内的効力を認める一般的受容方式の国に大別される。前者はイギリス、カナダ等であり、後者は日本、米国、フランス等の多くの国々である。条約にどのような国内的効力順位を与えるかについてもまた各国の憲法が定めている。わが国では、憲法、条約、法律、命令、規則という順位が成立している。条約が憲法に優越するという考え方もあるが、その場合、国家主権に優越する権力を認めることとなり、国連等の国際機関は各国の国家主権以上の権力を持つと仮定するに等しい。
 だが、一般に法は、権利義務関係を体系的に表現し、究極的には物理的強制力によって権利を実現する。法を裏付ける強制力は、実力である。国内法は、政府が実力を独占し、抵抗する者には強制執行や刑罰を行う。国際法は、国際社会には国家間を超えた実力装置が未整備であるので、究極的な強制力を持たない。その点で、国際法は国内法に比べて、法としての性格が不十分である。国際法の国内法に対する優位は理念的なものであり、現実的には各国は主権の発動により、対抗することがある。各国の憲法と条約の関係は、憲法が優位と考えるのが妥当である。人権の考察においても、この点をよく押さえることが重要である。
 次に、人権に関する国際法は、国際人権法という。国際人権法は、International Law of Human Rightsの訳語である。国際人権諸条約が定義する人権を、国際人権と呼ぶ。国際人権は、International Human Rightsの訳語である。国際人権諸条約の特徴は、国家間の利害調整によって国家の相互的な利益を実現することを目指すものではなく、国家の壁を越えて、人間的な権利を相互に保障しようとしていることにある。
 国際法及び国際人権法の一部をなすものに、世界人権宣言、国際人権規約(自由権規約、社会権規約、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約等がある。国際法及び国際人権法の具体的な内容については、国際機構に関する項目に書くが、国際的な法制度が発達することによって、人権は現代世界の中心思想の一つとして多数の国々に浸透してきたのである。
 国際法は、かつて平時国際法と戦時国際法に分かれていたが、戦時国際法は今日、国際人道法と呼ばれる。国際人権法が主に平和時に適用される国際法であるのに対し、国際人道法は武力紛争時に適用される国際法であり、敵対行為の遂行や兵器の使用、戦闘員の行動や復仇の行使等を人道原則によって規制する。国際人権法と国際人道法は別々に発達したものだが、個人の権利の保護を目的とする点は共通している。国際人権法は平時だけでなく、武力紛争が発生した場合にも適用を予定している条文がある。平時・戦時を問わず、人権を尊重するための国際法として、国際人権法と国際人道法は補完的な関係となっている。

 次回に続く。
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