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2015年11月02日08:35

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習近平の対米外交で米中の溝は深まった

 10月27日、米海軍は南シナ海の中国による人工島12カイリ内にイージス艦を派遣した。通常の航行とはいえ、中国に対しては軍事的な示威行為となった。この「航行の自由作戦」の実行の背景には、米中首脳会談が不調に終わったことがある。
 9月下旬、中国の習近平国家主席は米国を訪問し、オバマ大統領との首脳会談や財界人との会談を行った。この訪米は、米国にとっても中国にとっても得るものが少なく、米中の溝は深まった。その結果を受けて、「航行の自由作戦」は実行されたと考えられる。
 米中首脳会談に関して、米国側については、元外交官の宮家邦彦氏が次のような見方をしている。「オバマ大統領はサイバー・南シナ海問題を取り上げ、中国側に直接譲歩を迫ったが、習近平国家主席は実質的にゼロ回答だった」。「サイバー問題では米側が過去2年間首脳レベルで何度も要求したにもかかわらず、今回中国側は『私企業の秘密を盗まないことを確認し、閣僚級の対話メカニズムを創設する』ことしか約束しなかった。経験則では中国がこの種の約束を完全に履行する可能性は極めて低い。どうやら中国側はまんまと逃げおおせたようだ。南シナ海についてもほとんど成果がなかった。オバマ大統領が南シナ海における中国の巨大人工島建設に『重大な懸念』を伝えたのに対し、習主席は『古代からこれらの島々は中国固有の領土』だと強く反論した」「米中の溝は埋まるどころか、むしろ深まったのではないか」と。
 中国側について、シナ系評論家の石平氏は、次のような見方をしている。「先月下旬の習近平国家主席の訪米は、あらゆる意味において外交的失敗であった。念願の米議会演説はかなえられず、国賓の彼を迎えたワシントンの空気はいたって冷たく、オバマ大統領との会談では南シナ海問題や人権問題などに関する米中間の対立がよりいっそう深まった」。「『大国の強い指導者』という自分自身のイメージを国民向けに演じてみせるために強硬な外交路線を進めた結果、アメリカとの対立を招き、国際社会の中国に対する風当たりが強まった。そして挽回するために大盤振る舞いの金満外交を行ったわけだが、逆に国民の反発を買い、国内における彼自身の人気を落とす結果となった。独裁者のやることはいつも裏目に出てくるものだ」と。
 宮家氏は、中国の首脳外交の特徴として、「習主席の国際的権威を高めることにより、国内の政敵と反対派に対し権力を誇示すること」が目的になっていることを指摘する。こうした中国流の国際外交は、国際政治の場では通用しない。一方、石氏は、習主席の大盤振る舞いの「金満外交」に対して民衆から批判が起こり、民心が離れていることを指摘する。独裁者のやることはいつも裏目に出るというわけである。結果として、今回の中国の首脳外交は、対外的には対米関係を悪化させ、国内的には民衆の離反を招くという結果に終わったということができるだろう。
 以下は、宮家氏、石氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成27年10月1日

http://www.sankei.com/column/news/151001/clm1510010008-n1.html
2015.10.1 08:53更新
【宮家邦彦のWorld Watch】
サイバー、南シナ海…国賓待遇にも「ゼロ回答」で逃げ切った習政権 深まる米中の溝

 先週末の米中首脳会談は予想通りの結果に終わった。オバマ大統領はサイバー・南シナ海問題を取り上げ、中国側に直接譲歩を迫ったが、習近平国家主席は実質的にゼロ回答だった。数年来、ワシントンは首脳会談の度に北京を追い詰めようと試みたが、今回も中国側は逃げ切ったようだ。なぜ米中間でこんなイタチごっこが続くのか。今回はそのメカニズムを解明する。
 最大の理由はこの種の首脳会談に対する両国の思惑が異なることだ。米側の発想は単純である。人民解放軍を含む中国の巨大党官僚組織は自己増殖する。事務レベルで何度申し入れても全く効果はない。止めるにはトップダウンの介入が必要だ。米国が最も懸念する問題を習主席に直接働きかけ、解放軍など官僚組織が中国全体の利益を損ねていることをリーダーに理解させる必要がある。いかにも米国らしい発想ではないか。
 対する中国の発想は米国と大きく異なる。首脳会談は議論の中身よりも形式が大事だ。今回の首脳会談でも第1の目的は習主席の国際的権威を高めることにより、国内の政敵と反対派に対し権力を誇示することである。そのためなら使えるものは何でも使う。世界の大国・米国の首都で21発の礼砲という最大限の敬意が示され、国賓として大歓迎を受ける。これこそが中国国内で政治的権威を誇示する最善の方法なのだろう。
 逆に言えば、このような晴れの舞台で中国の最高指導者がメンツを失うような事態はタブーである。だからこそ、習主席訪米の直前にローマ法王訪米日程が組まれることを知った中国側は米側に法王の日程を変更するよう強く求めたのだろう。さらに彼らは内容面でもメンツを重んじる。今回の第2の目的は、中国共産党が指導する中国を、米国と対等の正統な国家として米国に受け入れさせ、その核心的利益を認めさせることだ。ここで習主席が譲歩することはあり得ない。譲歩したとなれば、国家主席のメンツは失われ、国内の政敵と反対派が黙っていないからだ。
 今回の米中首脳会談はこのような環境の中で開かれた。米側は中国側の儀礼上の要求を中国側が内容面で譲歩することを期待しつつ、可能な限り受け入れたに違いない。しかし、結果は散々だった。サイバー問題では米側が過去2年間首脳レベルで何度も要求したにもかかわらず、今回中国側は「私企業の秘密を盗まないことを確認し、閣僚級の対話メカニズムを創設する」ことしか約束しなかった。経験則では中国がこの種の約束を完全に履行する可能性は極めて低い。どうやら中国側はまんまと逃げおおせたようだ。
 南シナ海についてもほとんど成果がなかった。オバマ大統領が南シナ海における中国の巨大人工島建設に「重大な懸念」を伝えたのに対し、習主席は「古代からこれらの島々は中国固有の領土」だと強く反論した。米側は中国側が熱望する「新型大国関係」なる用語は一切使わず、オバマ大統領は台湾問題を取り上げ、従来の「一つの中国」政策を維持しつつも、「台湾関係法」に言及した。米国政府は習主席訪米に合わせ夥(おびただ)しい量の「ファクトシート」を発表し、米中首脳会談での合意を公表したが、その中身はあまりに乏しかった。
 鳴り物入りの国賓訪米だったが、米中の溝は埋まるどころか、むしろ深まったのではないか。共同記者会見での両首脳は明らかに楽しそうではなかった。米国からの厳しい追及に対し、中国はまたしても逃げ切った。外交用語で「率直な会談」とは、「互いに言いたいことは言い合ったが、合意には程遠い」状態を意味する。習主席はサイバーについて米国の経済制裁を阻止し、南シナ海で譲歩せず、国内向けのメンツを保った。中国は今後もかかる戦術を繰り返すのか。いずれ北京は国際政治がそれほど甘くないことを悟るだろう。

●産経新聞 平成27年10月8日

http://www.sankei.com/column/news/151008/clm1510080005-n1.html
2015.10.8 07:36更新
【石平のChina Watch】
習近平氏の訪米は完全な失敗 失地挽回の大盤振る舞いの「金満外交」に離反し始めた民心

 先月下旬の習近平国家主席の訪米は、あらゆる意味において外交的失敗であった。念願の米議会演説はかなえられず、国賓の彼を迎えたワシントンの空気はいたって冷たく、オバマ大統領との会談では南シナ海問題や人権問題などに関する米中間の対立がよりいっそう深まった。
 「サイバー攻撃しない」との合意に達したことは首脳会談の唯一の成果というべきものだが、それはあくまでもオバマ大統領にとっての成果であって、習主席にしては単なる不本意な譲歩にすぎない。その一方、主席自身が熱心に持ちかけている「新型大国関係の構築」に対し、オバマ大統領は最初から最後まで完全無視の姿勢を貫いた。
 ワシントンでの1日半の滞在は、習主席にとってはまさに「失意の旅」であった。
 その代わり、習主席はワシントンより先にシアトルに入り、中国と関係の深い大企業を相手に自らの訪米を盛り上げた。そのために中国企業にボーイング機300機の「爆買い」もさせたが、カネの力で「熱烈歓迎」を買うような行動は逆に、習主席の対米外交が行き詰まっていることを浮き彫りにした。
 ワシントン訪問の後に続く国連外交でも、習主席はやはり「カネの力」を頼りにした。9月26日に開かれた国連発展サミットで、習主席は発展の遅れた国々などに対し、2015年末に返済期限を迎える未償還の政府間無利子融資の債務を免除すると宣言した。同時に、いわゆる「南南協力援助基金」を設立し、第1期資金として20億ドルを提供すると発表した。
 いかにも習主席らしい、スケールの大きな「バラマキ外交」であるが、国民の稼いだお金をそこまで自分の外交に使ってしまうと、思わぬ波紋が国内から広がった。
 同28日、人民日報の公式モバイルサイトが「中国による債務免除は“貧者の大盤振る舞い”なのか」と題する長文の論説を掲載した。論説は、習主席が発表した債務免除に対しネット上では「国内2億人貧困層の苦しみを無視した“貧者の大盤振る舞い”」とする反対意見があることをあっさりと認めた上で、それに対する反論を延々と述べた。
 習主席の債務免除発表からわずか2日後に人民日報がこのような反論を出さなければならないことは逆に、国内の反発が急速に広がっていることをわれわれに教えた。
 人民日報がこのような反論を発すると、当然、国内メディアは一斉に転載して「討議」を展開した。
 たとえば大手ポータルサイトの「捜狐(SOHU)」はさっそくネット上の世論調査を行い、債務免除の是非を問うた。このコラムを書いた2日午前では、債務免除を批判する意見に対して、「反対意見の背後にある民心を直視すべきだ」とする回答が何と56%近くに達している。つまり回答者の半数以上が債務免除への反対意見に同調しているのだ。習主席の展開した華やかな「金満外交」に対し、国民の大半はやはり冷ややかな目で見ているのである。
 習近平政権は成立以来、腐敗摘発運動の展開や民衆の声に耳を傾ける「群衆路線」の推進で国民からの一定の支持を勝ち取ってきているが、ここへ来て彼自身の独断専行が逆に国民の多くの不信を買い「民心」は徐々に離反し始めているようだ。今回の「金満外交」に対する民衆の批判はまさに、民心の「習近平離れ」の表れではないのか。
 結局、彼の場合、「大国の強い指導者」という自分自身のイメージを国民向けに演じてみせるために強硬な外交路線を進めた結果、アメリカとの対立を招き、国際社会の中国に対する風当たりが強まった。そして挽回するために大盤振る舞いの金満外交を行ったわけだが、逆に国民の反発を買い、国内における彼自身の人気を落とす結果となった。独裁者のやることはいつも裏目に出てくるものだ。
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