『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』のヒットメーカーにして、ポスト・スタジオジブリの最有力、細田守監督の最新作『バケモノの子』を見て来ました。
現実世界の渋谷と表裏一体にある別世界の”渋天街”を舞台に繰り広げられるファンタジーです。
【物語】
母が死に、一人ぼっちになった少年・蓮(声:宮崎あおい)は、親戚に引き取られる前に家を飛び出し、夜の渋谷へ。そこで出会った怪物のような男の後をついていくと、人間ではないものたちが暮らす”渋天街”であった。
めっぽうケンカが強く、街を仕切る宗師の跡取り候補である熊徹(声:役所広司)に見初められ、なかば強引に熊徹の弟子になった蓮は、名を九太とあらため、熊徹との修業に明け暮れる。
…幼い主人公が名前を変えて異世界で暮らすというのは、宮崎駿の『千と千尋の神隠し』と似ているようですが、労働が一つのテーマだったあの映画は異なり、弱かった少年がケンカ修行を経て一人前になっていく成長物語であるので、これまでのどの細田守監督作品とも構造が異なる映画です。
また、このジャンルの王道でもある、”異世界に投げ込まれた主人公が成長し、孤軍奮闘する”といった展開にならないのが興味深いところです。
現実の渋谷でも、”裏側”にある異世界の渋天街でも、主人公は戦うことになりますが、一人で戦う展開にはならず、どちらの世界においても協力者がいるのが面白く、2つの世界を舞台に2つの戦いが描かれ、戦うのも主人公とそのパートナーであるという2重構造が面白いです。
細田監督の前作『おおかみこどもの雨と雪』で感じた、クライマックスの冷たい現実感は本作にもあり、ラストで主人公が選択する道は極めて現実的です。そこに評価の分かれ目がありそうですが、『おおかみ…』ほど突き放した感はないので、映画の痛快な世界観を壊すことはありませんでした。
3Dと2Dで描かれたキャラクターの表情の豊かさが見事。ひとつの到達点に達していると言えそうです。
★★★。
ログインしてコメントを確認・投稿する