mixiユーザー(id:525191)

2014年11月10日10:08

147 view

中国サンゴ密漁船の真の狙いは尖閣である〜山田吉彦氏

 9月から小笠原諸島および伊豆諸島周辺海域に中国漁船団が出没し、赤サンゴの密漁をしている。10月30日には、212隻ものの漁船が来た。中国では、赤サンゴの平成24年の平均取引額が1キロ約150万円だった。現在は1キロ270万円で取引され、金(きん)より高値で取引されることもあるという。漁民は一攫千金を目指して日本の領海を侵犯しているというわけだが、気になるのは、尖閣諸島の警備と、大量の密漁船の関係である。
 東海大学海洋学部教授の山田吉彦氏は、11月6日の産経新聞の記事で、「これほどの漁船団となると単なる密漁とは考え難い。中国から2千キロ以上も離れているため、燃料代だけで300万円ほどになる。また大漁船団で漁を行い過当競争になったのでは採算がとれないだろう」と言う。
 山田氏によると、通常、中国の漁船団は基本的に中国海警局の管理下にあり自由に動き回ることはない。今回の動きの伏線には、海保の尖閣警備の強化があるとして、山田氏は、次のように述べる。「中国は日本による尖閣諸島管理の強化を恐れ、日中首脳会談開催の条件のひとつとして、尖閣諸島における領土問題の存在を認めることを要求した。時を同じくして、海保の機動力を試すかのように、尖閣から離れた小笠原海域に大漁船団を投入したのであろう」と。

 この点に関しては、昭和53年(1978)の春、尖閣諸島沖の領海に200隻以上の中国漁船が押し寄せたことがある。ちょうど日中平和友好条約をめぐる交渉の最中だった。漁船は数日後に、一隻残らずいなくなった。交渉に圧力をかけるため、中国共産党の指示で行動したものだろう。今回の密漁船団が大挙してやってきているのは、北京で11月10、11日に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前にして、過去2年半ほど行われていない日中の首脳会談が実現するかどうか注目されている中でのことである。中国共産党流の圧力のかけ方と思われる。
 首脳会談は行われることになったが、わが国は、中国に対して日中間に尖閣をめぐる領土問題が存在することは認めず、首相の靖国参拝等でも譲歩せず、無条件での首脳会談の実施を実現し、安倍首相の筋の通った外交が貫かれた模様である。ただし、11月7日に出された日中合意文書には、「尖閣諸島に関して日中に異なる主張がある」ことが文字化されたことで、中国側がこれを曲解・悪用するおそれはある。

 中国船密漁問題では、わが国の政府は重い腰をあげ、違法操業の取り締まり強化と罰金引き上げの検討に入った。だが、その程度では抑止力を期待できない。他国であれば、外国船が領海に侵入して密漁している疑いがあれば、当然拿捕し、指示に従わねば威嚇射撃、場合によっては撃沈するだろう。
 山田氏は、今後考えられる事態を挙げる。中国漁船が、小笠原諸島のいずれかの島に上陸する。台風等で海が荒れた場合、緊急避難を名目に港に侵入し、不法に上陸する。海賊のように略奪を行う。無人島を占領し拠点を作る等である。
 これらの場合について、山田氏は、「相手が漁民なので、対処するのは洋上では海保、陸上では 警察の役目となる。しかし、海保、警察ともに離島において大量の不法入国者に対処する機動力を持たない。また漁民が武器を行使したとしても、すぐに自衛隊を動かすこともかなわないのだ。これがグレーゾーンだ」という。そして、「密漁漁船や不審船の対策において広範囲の監視と機動的な展開が可能な自衛隊と、警察権を持つ海保、警察の連携体制を作ることが必要であり、グレーゾーンに対応する法整備が求められる」と述べている。
 尖閣諸島の場合、中国の民間船が大量に押し寄せて、島に上陸し、それをきっかけに中国人民解放軍が尖閣諸島に侵攻するというシナリオが想定される。この場合、わが国の自衛隊、海保、警察が連携して対応するための法整備ができていない。今回の中国密漁船の大量来航は、わが国の海上警備態勢を試すという意味合いがあるだろう。
 わが国の現状としては、同時に尖閣諸島と小笠原諸島に、中国民間船が100隻単位で来て、島に上陸を始めると、警備力を分散されて、ただでさえ困難な対応がますます困難になる。
 山田氏は「根本的に日本の沿岸警備体制の見直しを進めなければならない」「国家の総力を挙げて、島そして海を守る体制整備が急務なのである」と主張している。山田氏は触れていないが、中国は新潟・佐渡も狙っている。海洋安全保障の体制整備は、まさに急務だと思う。
 以下は山田氏の記事の全文。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞

http://www.sankei.com/column/news/141106/clm1411060001-n1.html
2014.11.6 05:02更新
【正論】
サンゴ密漁の真の狙いは尖閣だ 東海大学教授・山田吉彦

 海洋国家・日本に迫り来る脅威は、尖閣諸島周辺ばかりではない。小笠原諸島および伊豆諸島周辺海域に大量の中国漁船団が出没し、縦横無尽に動き回っている。目的は1キロ当たり150万円以上の価値がある赤サンゴの密漁のためだ。
 姿を現し始めたのは9月からだが、10月30日に海上保安庁は、この海域に212隻の漁船が展開していることを確認した。漁船団は小笠原諸島父島からも見え、島民は恐れ、上陸などの不測事態に備え警戒態勢にある。また、漁業やホエールウオッチングなど観光産業への影響が懸念される。島民の生活を脅かす由々しき事態だ。しかし、海上保安庁は水産庁とともに、5隻の船舶により密漁の警戒に当たるのが限界だ。

≪密漁船は中国当局の関与?≫
 これほどの漁船団となると単なる密漁とは考え難い。中国から2千キロ以上も離れているため、燃料代だけで300万円ほどになる。また大漁船団で漁を行い過当競争になったのでは採算がとれないだろう。既に海保により密漁と検査忌避罪で5隻が拿捕(だほ)されているにもかかわらず、漁船団はなお出没海域を拡大し活動を続けている。
 さらに、存在を誇示するかのように地元漁船に近づいて来る。通常、中国の漁船団は基本的に中国海警局の管理下にあり自由に動き回ることはない。日本政府は中国側に密漁船の抑止を求めているが、中国側による密漁抑止の動きは消極的だ。むしろ、中国当局の関与を疑う。
 その伏線には、海保の尖閣警備の強化がある。海保は尖閣諸島警備のための専従チームとして600人の海上保安官と12隻の巡視船を配備することを表明し、先日、2隻の新造警備船が石垣島に到着したばかりだ。
 中国は日本による尖閣諸島管理の強化を恐れ、日中首脳会談開催の条件のひとつとして、尖閣諸島における領土問題の存在を認めることを要求した。時を同じくして、海保の機動力を試すかのように、尖閣から離れた小笠原海域に大漁船団を投入したのであろう。

≪五島で起きた漁民不法上陸≫
 いかに海保が勢力を増強しても、大量の漁船を使った中国による攪乱(かくらん)への対処は難しい。実際に尖閣警備のために日本中から巡視船を交代で動員しているため、各管区ともに警備人員、装備ともに余裕はない。中国の要求を受け入れて尖閣の問題を認めなければ、日本の海を混乱に陥れるという脅迫行為とも受け取れる。
 中国は以前にも同様の手口を使っている。2012年7月、民主党政権が尖閣諸島の国有化の意思を示した直後、五島列島の入り江に106隻もの漁船を侵入させた。この漁船には2千人以上の中国人が乗船していたと推測され、島民は中国漁民が上陸する可能性に怯(おび)えた。五島では、過去に中国漁民が不法上陸をしたことがあるのだ。しかし、警察、海保、五島市役所は、監視体制をとることしかできなかった。現在の国内法においては、上陸を開始しなければ対応ができないのだ。
 仮に2千人が一斉に上陸を開始したら、島の警察官だけでは身柄を拘束することさえできないだろう。その後、野田政権は中国とのトラブルを避け、尖閣を国有化しても、何も利用しないという道を選んだ一因になったとも考える。

≪住民監視が行き届く整備を≫
 同様に小笠原近海に姿を現す中国漁船が、小笠原諸島のいずれかの島に上陸を開始しても阻止することはできない。また、海が荒れた場合、漁船団は緊急避難を名目に港に侵入し、不法に上陸することが考えられる。中には、海賊のように略奪をする者も現れかねない。無人島を占領し勝手に拠点を作ることもあり得る。相手が漁民なので、対処するのは洋上では海保、陸上では警察の役目となる。しかし、海保、警察ともに離島において大量の不法入国者に対処する機動力を持たない。また漁民が武器を行使したとしても、すぐに自衛隊を動かすこともかなわないのだ。これがグレーゾーンだ。
 有事体制の整備は不可欠である。さらに有事に発展する前に対処する能力を持つことが重要だ。密漁漁船や不審船の対策において広範囲の監視と機動的な展開が可能な自衛隊と、警察権を持つ海保、警察の連携体制を作ることが必要であり、グレーゾーンに対応する法整備が求められる。
 根本的に日本の沿岸警備体制の見直しを進めなければならない。
 既に、海保と海自はソマリア沖海賊対策において、自衛艦に海上保安官が同乗し、法の執行に備えた連携体制をとっている。外国船の密漁に対しても、自衛艦に海上保安官が同乗する施策をとれば、機動的に海洋警備を行うことが可能になるだろう。
 さらに、政府が進める地方創生の中核に離島の振興を置き、インフラや社会システムの整備を進めることで、住民による監視が行き届き、他国が侵入できない環境を作ることも重要だ。国家の総力を挙げて、島そして海を守る体制整備が急務なのである。(やまだ よしひこ)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

関連掲示
・拙稿「尖閣を守り、沖縄を、日本を守れ」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12o.htm
・拙稿「尖閣:中国海警局の新設に対抗策を〜山田吉彦氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6caa38e73a21dd5cb3c4323bbc725f23
・拙稿「海洋強国を目指す中国に警戒を〜山田吉彦氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/15692f467a22a6fb5a7405c7539aa080
・拙稿「新潟・佐渡が中国に狙われている」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12v.htm

13 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する