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2014年10月05日10:22

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人権116〜家族型的価値観の違いの影響

●家族型的価値観の違いの影響

 最後に第5点として、家族的価値観の違いの影響について述べる。
 家族型価値観については第1章に書いたが、人権の発達には家族的価値観の違いが関係している。人権の観念は、イギリス、アメリカ、フランスで発達したが、そこには家族型による価値観の違いが現れている。
 エマニュエル・トッドによると、家族型には平等主義核家族、絶対核家族、直系家族、共同体家族の四つがある。これらの家族型は、結婚後の親子の居住と遺産相続の仕方に違いがある。その違いが親子間における自由と権威、兄弟間における平等と不平等という価値観の違いとなって現れる。そして自由と権威、平等と不平等の二つの対の組み合わせによって、四つのパターンに分かれる。すなわち、平等主義的核家族は自由と平等、絶対核家族は自由と不平等、直系家族は権威と不自由、共同体家族は権威と平等である。
 イギリスのイングランドを中心とする地域では、絶対核家族が支配的である。初期のアメリカも同様である。絶対家族は遺産相続において、親が自由に遺産の分配を決定できる遺言の慣行があり、兄弟間の平等に無関心である。この型が生み出す価値観は自由である。自由のみで平等には無関心ゆえ、諸国民や人間の間の差異を信じる差異主義の傾向がある。
 フランスのパリ盆地を中心とする地域は、平等主義核家族が優勢である。平等主義核家族は、遺産相続において兄弟間の平等を厳密に守ろうとするため、兄弟間の関係は平等主義的である。この型が生み出す価値観は、自由と平等である。この家族型の集団で育った人間は、兄弟間の平等から、諸国民や万人の平等を信じる普遍主義の傾向がある。
 以上、二つの家族型と異なる型のうち、直系家族は、子供のうち一人のみを跡取りとし、結婚後も親の家に同居させ、遺産を相続させる型である。その一人は年長の男子が多い。他の子供は遺産相続から排除され、成年に達すると家を出なければならない。父子関係は権威主義的であり、兄弟関係は不平等主義的である。この型が生み出す価値観は、権威と不平等である。また共同体家族は、子供が遺産相続において平等に扱われ、成人・結婚後も子供たちが親の家に住み続ける型である。父子関係は権威主義的で、兄弟関係は平等主義的である。この型が生み出す価値観は、権威と平等である。共同体家族は、ロシア、シナ等、ユーラシア大陸の大半に分布する。共産主義が広がった地域は、外婚制共同体家族の地域と一致する。共同体家族の権威と平等という価値観は、共産主義の一党独裁と社会的平等という価値観と合致する。
 こうした家族制度の違いが、価値観、法律、経済、イデオロギー等の違いにまで、深く影響していることを、トッドは明らかした。私見を述べると、自由=不平等的個人主義のイギリスにはロック、自由=平等的個人主義のフランスにはルソー、権威=不平等的集団主義のドイツにはヘーゲル、権威=平等的な集団主義のロシアにはレーニンが出た。それぞれの家族型に典型的な思想だと思う。ただし、家族制度によって価値観等が一元的に決定されるわけではなく、気候・風土・歴史等様々な要素が複合的に作用することに注意を要する。

 次回に続く。
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