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2014年08月18日10:27

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現代世界史21〜BRICSの台頭

●注目されるBRICSの台頭

 各地域の経済圏が競合する形で、世界経済は新たな成長を続けている。そうした中で、BRICSと呼ばれる新興国の動向が、今後の世界経済に重要な影響を与えるだろうと注目を集めている。ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国をBRICsと呼んだのは、投資銀行のゴールドマン・サックスだった。2011年(平成23年)からは南アフリカを加えて、Sを大文字とし、BRICSと表現するようになった。これら新興5か国には、世界有数の人口を持つことや、国土の広さ、経済成長率の高さ等が共通している。総人口は世界の46%、国内総生産(GDP)の合計は世界の約2割とされる。
 BRICSのうち、中国とインドについては、それぞれ先に書いたが、ブラジルは、南米共同市場(メルコスール)の盟主的存在であり、中国との貿易を拡大している。鉄鉱石を初め鉱物資源を豊富に有している。ロシアは、旧ソ連圏の大国ゆえ、新興経済大国と呼ぶにはふさわしくない点があるが、プーチンのもと、豊富な石油・天然資源を西欧や周辺諸国に輸出し、その利益をもとに経済成長を図っている。南アフリカは豊富な鉱物資源を誇り、特に金は世界の産出量の半分を占める。アパルトヘイトを止めて民主化を進めてから、アフリカ最大の経済大国として経済発展を続けている。
 BRICSは当初投資銀行が投資目的で名づけたものに過ぎなかったが、対象の国々がグループを形成し、首脳会議を行い、独自の活動をするようになった。ユーラシア大陸、南米大陸、アフリカ大陸に分かれており、地理的には5か国に共通する利益はない。だが、新興国としての地位を意識し、アメリカの一極支配に挑戦する構えを見せている。特に、国際決済の手段となっているドルに対し、人民元、ルーブルなどの決済力を強め、ドルの基軸通貨としての地位を奪おうとする動きが注目される。
 21世紀の世界経済においては、従来の先進国が相対的に勢力を弱め、BRICSをはじめ、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの諸国が勢力を伸ばしている。それに伴い、新興国が国際的な発言力を増しており、先進国によるG8に対し、新興国11か国を含むG20が、世界的な経済政策の調整の場として重要性を増してきている。そうした中で、中国とロシアは、それぞれの思惑を持って、BRICSやG20を自国中心に多極化を進める場として利用している。
 多極化の極となる国の多くは、各文明の中核国家でもあり、多極化は同時に多文明化でもある。文明はその中で諸国家・諸民族が興亡する広域的な社会だが、固定したものではなく、範囲が広がったり狭まったり、文化的な要素が変化したりする。文明には主要文明と周辺文明があり、主要文明が滅んだり、周辺文明が主要文明にのし上がったりする。近現代の世界史では、西洋文明が他の諸文明をすべてその周辺文明に変えるかのごとき勢いを振るったが、非西洋文明が興隆することによって、近代化した主要文明が並立するという新たな多文明化の傾向が現れている。

●ナショナリズム、エスニシズムの興隆

 冷戦の終結後、1990年代から、グローバリゼイションが顕著に進んできている。国境を越えた交通、貿易、通信がますます発達し、人・もの・カネ・情報の動きが活発になっている。これをもってボーダーレスの時代ととらえ、もはや独立主権国家は、人類の進歩・発展の障害となりつつあるという見方がある。
 ボーダーレスは、超大国や巨大多国籍企業にとっては、有利である。相手国の主権を無視して、国益や利潤を追求できるからである。だが、弱小国や一般企業にとっては、不利である。政府主導の経済発展政策や国内産業の保護政策ができなくなるからである。特に発展途上国の多くにとっては、先進国主導の自由化の進展は、国内経済をより困難な状態に陥れるものとなる。実際、グローバリゼイションの進行によって、国際間の格差は拡大している。また世界的に貧困層が増加している。貧困と不平等に対する世界的な改善が求められている。
 冷戦の終結後、近い将来に国民国家は消滅し、国境はなくなるという見方が一時大勢を占めた。だが、実際には、その後、グローバル化の進展の中で、むしろナショナリズムは興隆している。ナショナリズムは、世界各地で、アメリカの一極支配に対して、国家の独立・主権・国益を守るという政治的な運動として現れている。またヨーロッパでは、欧州統合の動きに対し、18世紀から発達したネイション(国家・国民・民族)の独自性を保守しようとする動きとして現れている。アジア・アフリカでは、帝国主義や植民地支配から独立を果たした諸国が、国民を形成し、近代国家を建設する取り組みとしても現れている。また先進国を中心に、経済的・社会的・文化的なグローバル化に抗して、ネイションの役割を再評価し、国民の連帯感や共同意識の回復を求めたり、国民経済の再建や保護主義の必要性を説いたりする理論が支持を広げつつある。
 ナショナリズムはネイションを形成・維持・発展させようという思想であり、文化的単位と政治的単位を一致させようとする運動である。ネイションより下位の集団に、エスニック・グループがある。ネイションが文化的単位と政治的単位がほぼ一致した集団であるのに対し、エスニック・グループは文化的単位の集団であり、いわゆる少数民族や地域言語集団等をいう。エスニック・グループが政治権力の獲得や政治的権利の拡大をめざす運動は、広い意味ではナショナリズムに含まれるが、私はナショナリズムと区別する際にはエスニシズムと呼ぶ。統合の進む欧州においては、これに抵抗するナショナリズムのほかに、バスク、カタルーニャ、スコットランド、ウェールズ、ブルターニュ、シチリア等のエスニシズムもある。これらは1970年代に欧州統合の動きに抗して勃発したもので、欧州の事情を複雑にしている。エスニック・グループが所属国からの分離独立を求める運動も世界各地で活発化している。インドネシアの東チモールの独立運動は紛争となり、国連の多国籍軍によって治安が回復された後、2002年に独立に至った。一方、カナダのフランス語地域であるケベック州では分離独立運動が起こったが、多数原語の英語文化と少数言語のフランス語文化が協調する形で、国民的な統合がなされた。
 先進国を中心に少数者の文化や権利を積極的に認める多文化主義の思想が影響力を強めている。だが、多文化主義を推進すれば、国民がとめどなく差異化され、国民の絆が失われるおそれがあり、ネイションとしての一体性を保ちつつ、そのもとでの少数文化の尊重という共存調和の原理が求められている。

●国際テロリズムの脅威

 第2次大戦後、アジア・アフリカ諸国は、帝国主義や植民地支配から脱し、次々と独立を果たした。しかし、それらの国々には、近隣諸国との間に国境紛争の要因を抱えていたり、国内に多数の民族・宗教が存在している国が多い。
 冷戦時代には、米ソが、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの国々を、自陣営に引き入れ、その国の支配体制を支援するなどして、勢力の維持を図っていた。しかし、冷戦終結後、二大超大国の対立構造によって保たれていた秩序が消滅した。その結果、それまで自由主義と共産主義というイデオロギーの対立のもとに抑えられていた民族問題や宗教問題、天然資源の分配問題等をめぐる紛争が各地で表面化するようになった。1990年代におけるイラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸戦争や、民族独立問題、石油パイプラインの利権等が絡むロシアのチェチェン紛争は、ポスト冷戦時代の典型的な地域紛争と言えるものである。
 さらに、21世紀にはいると、地域紛争の増加に加えて、国際的なテロリズムの脅威が世界中に拡散した。宗教的・民族的・思想的な理由によるテロが各地で破壊や殺害を引き起こしている。ロンドンやマドリード、バリ島、モスクワ等の各地でテロが相次いでいる。1990年代以降、先進国の主導で国際経済の自由化が進められたが、これは発展途上国の一部から途上国をより困難な状況に陥れる政策であるとみられた。とくにイスラム圏では、こうした先進国主導の国際経済に組み込まれることに強い反発が起こり、純粋にイスラム的な国家や社会の実現を目指すイスラム復興運動が民衆の支持を得るようになった。
 2001年9月11日の米国同時多発テロ事件をきっかけに、米国とイスラム過激派の対立が激化した。イスラム教徒が多数を占める国は発展途上国が多く、人口増加率が高い。国際的な格差の拡大と人口増加によって、貧困層の増大が大きな問題となっている。貧困は乳幼児の死亡率の高さ、識字率の低さ、不衛生、環境破壊等をもたらす。イスラム復興運動の中で一部の過激な勢力は、暴力によって貧困に伴う問題を解決しようと考えるようになった。こうした事情が国際テロリズムの要因の一つとなっている。
 イスラム復興運動は、世界的な広がりを持つ宗教によるもので、ナショナリズムやエスニシズムよりも広範囲にわたる。近代西洋的な主権国家を超えた広域的なイスラム社会の連帯に基づいており、イスラム文明による西洋文明や東方正教文明への対抗という性格を持っている。現代世界は、グローバリズムが進展する一方、文明、地域機構、ネイション、エスニック・グループ等が重層的に絡み合いながら、闘争と対話を繰り広げていると言えるだろう。

 次回に続く。
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