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2014年05月30日09:18

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荒れる南シナ海と米中のせめぎ合い6

●ASEAN諸国が中国けん制のために団結

 5月10日東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ミャンマーの首都ネピドーで外相会議を行った。ASEANは域内6億人の巨大市場を抱え、年々世界経済の中で存在感を増している。米中はASEAN諸国を勢力下に置くべく、激しく競い合っている。近年は中国が影響力を増していたが、米国が巻き返しを図り、ミャンマーのように中国離れを進める国も出ている。元来、ASEANは1967年に共産主義に対抗するために発足した地域組織で、武力紛争を終結したカンボジア、ラオス、ベトナムを迎え入れ、経済発展と貧困脱出に成果を上げてきている。
 現在の加盟国は10カ国。そのうち4か国が、中国と南シナ海で領有権を争っている。今回開かれたASEAN外相会議は、南シナ海情勢について「深刻な懸念」を表明する緊急声明を採択した。声明は、中国を直接批判することは避けるながらも、「進行中の事案が海域の緊張を高めた」と中越の対立にふれ、武力の行使や脅しではなく、国連海洋法条約等の順守による「平和と安定を脅かす行為の回避」を求めた。
 ASEANと中国は昨年9月、南シナ海の衝突回避、緊張緩和をめざし、法的拘束力を持つ「行動規範」の策定に向け、初の公式協議を実施した。10月にはブルネイでの首脳会議でも策定へ努力することを確認した。だが、中国は二国間での交渉を優先する姿勢を変えず、協議は進展していない。このため声明は、行動規範の早期策定の重要性についても改めて言及し、中国の対応を促した。
 加盟国外相による緊急声明は、5月11日の首脳会議を待たずに発表されたもので、各国に危機感が共有されたものだろう。ベトナムとフィリピンは、団結して中国に対抗する姿勢を他の加盟国に要望した。加盟国が一致して、力による実効支配を強める中国を牽制したのは、ASEAN諸国に団結が実現しつつあることの表れだろう。
 11日には、引き続きネピドーでASEAN首脳会議が行われた。各国首脳は南シナ海情勢などについて協議し、関係国に自制と武力の不使用を求めることを盛り込んだ「ネピドー宣言」を採択した。
 宣言は南シナ海問題について、「緊張をさらに高めるような行動を控えるよう求める」とした。また、「行動規範」の策定で早期に結論を出すことを要請した。消極的な姿勢を示し続ける中国を、名指しを避けつつも非難する内容となった。
 ASEAN議長国のミャンマーのテイン・セイン大統領は閉幕後、記者会見し、ASEANが南シナ海問題などで連携を密にすることを確認したと語った。軍事政権時代に中国と緊密な関係だったミャンマーの南シナ海問題への対応が注目されたが、議長声明では、ASEAN外相会議による「声明の重要性を認識する」と強調。外相声明には盛り込まれたものの首脳会議の「ネピドー宣言」では見送られた「深刻な懸念」という文言を復活させた。ミャンマーは議長声明でも中国を牽制する姿勢を維持し、初の議長国として、以前の親中一辺倒から脱皮した姿勢を示した。

 中国は、南シナ海地域で孤立しつつある。だが、中国はASEAN諸国によるけん制に対しても、全く態度を変えようとしていない。5月13日、ベトナムは前日また新たな衝突があったと発表した。発表によると、中国側は現場海域に軍艦2隻を含む86隻を展開、石油掘削設備を防護している。同日朝、ベトナム沿岸警備隊の船が石油掘削設備に近づこうとしたところ、中国船3隻が放水等で攻撃し、うち1隻が左側面に体当たりしたため、排気装置や側面が10メートルにわたって壊れたという。
 同日、米国のケリー国務長官はまた中国とベトナムの艦船が衝突した問題について「最も新しい懸念がパラセル諸島に対する中国の挑戦であることは明らかだ」と述べ、この問題で、初めて米国の閣僚が中国を名指しで批判した。またこの問題でオバマ政権がベトナム側に立つことを宣明にした。そして、領有権争いの解決に向けた「行動規範」の策定と、国際法に基づいた平和的解決の重要性を訴えた。国務長官職をヒラリー・クリントンから継いだ時には、中国寄りの姿勢が懸念されたケリーがここまで変わった。それは、オバマ政権そのものの変化である。
 
 5月に入ってから、ベトナムでは中国に抗議するデモが相次いでいる。しかし、中国の行動は全く改まらない。既に中国側の艦船は、140隻以上に増加しており、常時石油掘削設備を防護している。26日には、ベトナムの漁船が中国の漁船から体当たりされ、沈没した。一連の衝突事故で、船の沈没は初めてである。現場は中国が設置した石油掘削設備の南南西約31キロ。ベトナム船1隻に対して、中国の漁船約40隻が取り囲んで、船をぶつけてきたと伝えられる。乗っていた漁民10人は別のベトナム船に救助され無事だったというが、同様の衝突事故で既に10数人のベトナム人が死亡していると発表されている。中国の場合は、民間船といっても、軍の関係者が乗って指揮を執っていると可能性がある。
 中国は、ASEAN諸国の声明を無視し、周辺諸国が諦めて中国の意思に従うまで、無法行為を続けるだろう。中国共産党伝統の持久戦である。また、軍と軍がぶつかり合うことなく、目的を達する孫子の兵法、戦わずして勝つの実践でもあるだろう。日本・米国を含む自由主義諸国側は、共産中国の戦略的な思想と行動をよく分析して、対応を誤らないようにしなければならない。

 次回に続く。
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