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2014年05月28日08:44

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荒れる南シナ海と米中のせめぎ合い5

●南シナ海での中国VSベトナム・フィリピンの対立

 ロシアがウクライナのクリミアを併合し、ウクライナ東部では親露派が独立を志向する実力行動を起こしている一方、中国はユーラシア大陸の東部で虎視眈々と覇権の確立を狙っている。南シナ海では、領有権を争う中国とベトナム、フィリピンとの緊張が高まっている。
 南シナ海は、豊富な海洋資源を埋蔵し、海上交通の要衝でもある。その権益をめぐり、中国と東南アジア諸国は1960年代末期から摩擦を繰り返してきた。
 南シナ海にはパラセル(西沙)諸島とスプラトリー(南沙)諸島を中心に200以上の島や岩礁などが存在する。中国はすべての島嶼の領有権を主張し、ベトナム、フィリピン等と争ってきた。
 ベトナム戦争末期、米軍がベトナムから撤退するや、中国は1974年、当時南ベトナムが支配するパラセル諸島をめぐって南ベトナム軍(当時)と衝突し、同諸島全域を掌握した。88年にはスプラトリー諸島でベトナム軍を攻撃し、一部の島を実効支配下に置いた。92年には領海法を制定し、南シナ海と東シナ海の島嶼を一方的に領土にした。一方、米ソ冷戦終結後、1992年に米軍がフィリピンから撤退すると、95年にはフィリピンが領有権を主張していたスプラトリー諸島のミスチーフ環礁を占拠した。
 この40年、中国は南シナ海で力づくの領域拡大を進めてきたわけである。他国の実効支配に挑戦し、あらゆる手段を駆使して現状変更を行い、国際社会の非難を受けても、これを無視してきた。
 中国が南シナ海で覇権を確立しようとする狙いは、まず海洋権益の獲得である。中国は南シナ海の資源埋蔵量につき、石油367億8千万トン、天然ガス7兆5500億立方メートルと推計し、「第2のペルシャ湾」と期待している。また別の狙いは、米国の軍事力への対抗である。海南島には潜水艦基地があり、南シナ海の深海から西太平洋への進出を図っている。中国は米国と太平洋を東西に分けて、西太平洋をシナの海にしようとしているものと見られる。
 しかし、オバマ大統領は、4月下旬のアジア歴訪を行い、アジア太平洋地域でのリバランス政策を具体化した。フィリピンでは新軍事協定を結び、米軍の定期的な派遣等を決めた。このことは、22年ぶりの米軍の回帰を意味する。中国はこれに反発するとともに、アジア太平洋地域ですでに実効支配している領域に対して強固な意志を示すとともに、米国がアジア太平洋地域にどこまで本気で関与しようとしているのか、測ろうとしていると見られる。
 その具体的な表れが、5月初めに中国がパラセル諸島海域で石油の掘削を進めたことである。この海域は、中国がベトナムと領有権を争っている地域である。
 5月2日ベトナムは、同国が排他的経済水域(EEZ)としている現場海域に2隻の船を派遣して抗議したが、中国側は撤退に応じない。そこで巡視船など約30隻を現場海域に派遣したが、中国側は80隻を展開し、中国公船とベトナム船が衝突する事態となった。
 パラセル諸島はベトナム戦争末期の1974年、米軍撤退の隙を突いて中国が実効支配した。中国は同諸島を「中国固有の領土」と主張し、ベトナムはこれに反発している。
 米国は5月7日にサキ国務省報道官は、「今回の一方的な行動は、平和と安定を損なう形で係争海域をめぐる主張を押し通そうとする中国の、より広範な行動様式の一部のように映る」と非難した。
 ベトナム側は5月8日、各国の報道機関に中越両国船衝突の際の映像を公開した。明らかに中国公船がベトナム船にぶつけてきている。ベトナム外務省高官は、中国を「国際司法機関に提訴することも排除しない」と述べた。スカボロー礁を中国海軍に事実上支配されているフィリピンは、中国を国際海洋裁判所に提訴している。ベトナムは、フィリピンに同調する姿勢を示したことになる。
 これに対し、中国は同日、外務省国境海洋事務局の易先良副局長が緊急記者会見し、「ベトナム船が故意に中国公船にぶつかってきた。驚いている」と述べ、ベトナム側の主張を全面否定した。石油掘削は「主権に基づく正当なものだ」と唱え、「10年間続けてきた事業で今年始まったわけではない」と強調した。そして、ベトナム側に「妨害を停止せよ」と船舶の撤退を要求した。 
 石油掘削の正当性の根拠として中国が主張しているのが、南シナ海のほぼ全域を9つの点で結んで囲む独自の「九段線」である。中国はその線の中を領海扱いしている。だが、これは陸地を基点とする領海とはまったく考え方であり、国際法上認められるものではない。
 ベトナムはフィリピンと違って、米国の同盟国ではない。だが、ベトナムも米国のリバランス政策の上で重要な国である。米国は非同盟国ベトナムのカムラン湾を米軍艦船の拠点とするために、軍事協力関係を強化しているからである。
 5月8日、ベトナムを訪問中のラッセル米国務次官補は、ミン副首相兼外相らと会談し、パラセル諸島の周辺海域における中国の石油掘削作業を批判し、「領有権問題は平和、外交的に解決されるべきで、力の行使は控えなければならない」と中国に自制を求めた。だが、中国は全く応じようとしていない。
 パラセル諸島の周辺海域は、中国とベトナムが領有権を争っている海域だか、中国は一方的に石油掘削を行っている。このまま中国の掘削作業が常態化すれば、係争海域がそのまま事実上、中国の領海と化していくだろう。わが国の尖閣諸島周辺海域でも、同じようなやり方をされることが容易に予想される。南シナ海で起こることは、東シナ海でも起こり得る。南シナ海と東シナ海は海洋資源でつながり、シーレーンでつながる一つの海の南方と東方である。わが国は、南シナ海での中国と周辺諸国の現在の抗争をまさに生きた事例として、領域防衛の体制を整えなければならない。

 次回に続く。
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