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2014年05月21日11:43

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荒れる南シナ海と米中のせめぎ合い1

●はじめに

 ロシアがウクライナのクリミア共和国を併合したことにより、冷戦終結後、かつてないほど世界の緊張は高まりつつある。中国は、ロシアに対する米国・EU・日本等の制裁の度合いを見て、尖閣諸島を含むアジア太平洋地域で海洋覇権の拡大を狙っている。これに対して、米国はどう対応するかが注目されてきた。
 そうしたなかで、オバマ大統領は4月23〜28日、日本などアジア4カ国を歴訪した。オバマ大統領のアジア歴訪はアジア太平洋地域での同盟を強化し、覇権拡大政策をとる中国を牽制するために有益なものとなった。これまでの宥和策中心の姿勢から、中国の侵攻を阻止しようとする姿勢に転換したことを示すものとも考えられる。
 冷戦時代に、米国と中国はインドシナ半島で激しく勢力争いをした。ベトナム戦争やカンボジア内戦は、米中の勢力争いの舞台だった。今日その争いの再現を思わせるほど、東南アジアは再び米中が激しく競い合う地域となっている。その点については、拙稿「米中が競い合う東南アジアと日本の外交」に書いた。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12p.htm
 今回はオバマ大統領のアジア歴訪が終了するや、5月初め中国は、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島海域で石油掘削を進めた。これを阻止しようとするベトナム船と中国公船が衝突を繰り返しており、南シナ海に緊張が高まっている。中国は、アメリカがアジア太平洋地域にどこまで本気で関与しようとしているのかを試しているものと見られる。
 本稿は、オバマ大統領のアジア歴訪の意義を踏まえ、南シナ海における中国と東南アジア諸国の対立及び米中のせめぎ合いについて書き、わが国の取るべき対応について述べるものである。7回を予定している。

●オバマ大統領のアジア歴訪の意義

 オバマ大統領の日本、韓国、マレーシア、フィリピンのアジア4カ国歴訪は、アジア太平洋地域での同盟を強化し、覇権拡大政策をとる中国を牽制するために有益なものとなった。オバマ政権は、これまでの宥和策中心の姿勢から、中国の攻撃を阻止する姿勢へと転換したことを示すものとも考えられる。
 オバマ大統領は、平成23年(2011)11月にオーストラリアでリバランス政策(再均衡政策)を打ち出した。海洋進出を図る中国に対抗するため、外交・安全保障の比重をアジア太平洋に移すという政策である。しかし、ダーウィンへの米海兵隊派遣、在沖縄海兵隊の一部グアム移転以外は目立った手を打ってこなかった。
 果たしてオバマ政権は、本気でアジア太平洋を重視する政策を行うのかどうか、日本や東南アジアでは疑問が湧くようになっていた。そうしたなか、本年3月18日ロシアがウクライナのクリミア自治共和国の併合を行った。冷戦終結後、はじめての現状変更の動きである。米国を始めとする先進諸国は、ロシアに対し、G8からの一時除名、資源系企業やプーチン大統領の関係者への経済制裁など、経済的な圧力を強めている。だが、EU諸国の多くは天然ガス等のエネルギー資源をロシアに多く依存しているから、経済制裁の強化は、わが身に返ってくる。米国も世界第2位の核大国・ロシアに対し、強力な制裁を断行することには慎重である。中国は、領土拡張を図るロシアに対し、米・欧・日がどう出るかを注視している。対露制裁とその効果の程度を見て、中国は東シナ海・南シナ海で海洋覇権拡大の行動を起こす機会を狙っている。中国はクリミア問題で、米・欧・日の側ではなく、実質的にロシア側に付いた。世界は、冷戦期のように、米・欧・日の側と露・中の側に、再び別れ出しているようにも見える。
 オバマ大統領のアジア歴訪は、こうした世界情勢における米国の行動だった。大統領は日本では尖閣防衛を明言した。韓国では米韓同盟を確認した。マレーシアでは軍事力行使や威嚇への反対で中国を牽制した。フィリピンでは新軍事協定に調印し、防衛関係を強化した。韓国からマレーシアに飛んだ米大統領専用機が、中国が一方的に設けた防空識別圏を無視したことも意義が大きい。
 米国は、今回のアジア歴訪でようやくリバランス政策を充実させ始めた。わが国やアジア太平洋地域諸国の疑念に対する答えと言えるだろう。地域に一定の安心感が広がっている。また、東南アジア諸国では、中国に対して結束して対応しようという機運が現れている。

 次回に続く。
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