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2014年05月14日08:48

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集団的自衛権の限定的行使案を政府が準備4

 4月24日安倍首相とオバマ大統領による日米首脳会談が行われた後の記者会見で、安倍首相は、「集団的自衛権の行使容認に向けた検討状況を説明し、オバマ米大統領から『歓迎し支持する』との立場が示された」と述べた。首脳会談に先立って4月5〜7日に来日したヘーゲル米国防長官は、日本の安全保障の取り組みについて、「歓迎し、努力を奨励し支持する」と語った。これは昨年10月の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の「歓迎」よりも踏み込んだ表現だった。今回は、大統領がわが国の集団的自衛権行使検討への支持を表明したことで、米国政府の支持はゆるぎないものとなった。安倍首相は、これを受けて集団的自衛権行使を容認する憲法解釈見直しに向けて政府・与党内の調整・説得を進めると見られる。
5月9日の産経新聞は、安保法制懇の報告書の全容が明らかになったとして、首相に提出される前に、先行的に報道した。
 記事によると、安保法制懇は報告書をまとめる契機として、中国が軍事費を経済成長を上回る勢いで増加させている上、近隣海域で海洋進出を強めていることへの懸念を表明し、さらに北朝鮮による核・弾道ミサイル開発など日本を取り巻く安全保障環境が悪化していること、テロやサイバーなど脅威が多様化していることなどを挙げている。
 憲法に関して、戦後の政府は首相や防衛庁長官、内閣法制局長官らの国会答弁や質問主意書に対する答弁書によって憲法解釈の変更を行ってきたこと、憲法の最終的な解釈者である最高裁判所の砂川事件判決は自衛権を認めていることなどを述べ、集団的自衛権の「権利」を保有しているが「行使」は許されないとする政府見解の課題のほか、環境や情勢が大きく変化する中で解釈変更が迫られていることなどを指摘する。
 基本的な考え方としては、日本が保有する自衛権には個別的自衛権と集団的自衛権があるとし、憲法第9条は個別的自衛権はもとより、集団的自衛権の行使や国連の集団安全保障への参加を禁ずるものではないことを明記している。
 集団的自衛権の行使については、密接な関係にある国が攻撃を受けた場合などの条件を提言し、集団的自衛権によって不測の事態を抑止することの重要性を訴えているという。
 集団的自衛権と集団安全保障、武力攻撃に至らない「グレーゾーン」事態については、先に書いた平成20年の報告書の4類型と今回議論されたケースを合わせ、下記の9事例を列挙しているという。

1 公海における米艦の防護
2 米国に向かう弾道ミサイルの迎撃
3 米国が武力攻撃を受けた場合の船舶検査など対米支援
4 わが国近隣有事の際の船舶検査、米国への攻撃排除、国連決定があった場合の関連活動への参加
5 国際的な平和活動における自衛隊の武器使用
6 国連平和維持活動(PKO)に参加している他国への後方支援
7 国際秩序の維持に重大な影響を及ぼす武力攻撃が発生した際の国連決定に基づく活動への参加
8 わが国の船舶の航行に重大な影響を及ぼす海域における機雷の掃海
9 わが国領海で潜没航行する外国潜水艦が退去要求に応じず徘徊を継続する場合への対応

 これらのグレーゾーン事態では、個別的自衛権として実力で排除できるよう法整備を求めている。特に注意したいのは、尖閣諸島に、漁民に偽装した中国民兵が上陸した場合は、武力攻撃ではないグレーゾーン事態に当たるため、自衛隊は出動できないことである。この状態を改善するには、自衛隊法を改正するか領域警備法を制定する必要がある。日米安保条約第5条の日米「共同防衛」作戦は、尖閣防衛に関する限り個別的自衛権行使の問題であり、集団的自衛権の行使容認とは別に、自主防衛の課題としての法整備が早急に必要である。
 安保法制懇の報告書に戻ると、集団的自衛権を行使する条件については、(1)密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、(2)放置すれば日本の安全に大きな影響を及ぼす場合、(3)当該国からの明示的な支援要請の三つにに加え、「国会の承認」を求めている。事前承認が原則だが、弾道ミサイルへの対応など緊急時は事後承認でも可能にする。手続きとして「首相の総合的な判断」や「第三国の領域通過する場合の当該国の同意」の必要性を指摘している。地理的制限は求めていない。集団安全保障では、自衛隊の行動に関してポジティブ(できること)リストからネガティブ(できないこと)リストへの転換を前提として、世界的な標準に合わせた武器使用の緩和を求めている。
 また、在外邦人の救出・保護については、その領域国の許可を得て妨害行為を排除するため、自衛隊の武器使用を可能にする法整備を求めているという。
 上記のような内容の報告書は、15日に安倍首相に提出され、首相が「政府の基本的考え方」を示す。「政府の基本的考え方」は、「わが国を取り巻く安全保障環境が極めて厳しい中、どのような形で国民の生命、財産、国の安全を守れるかについて政府の考えを示す」(菅官房長官)ものとなる模様である。

 次回に続く。
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