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2014年05月12日09:59

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集団的自衛権の限定的行使案を政府が準備3

 集団的自衛権に関し、私は、6年ほど前、拙稿「集団的自衛権は行使すべし」に課題と見解を書いている。わが国の基本的な課題は、変わっていない。前進がないからである。その間、わが国の置かれた国際環境は、悪化を続けている。米国が国力の低下を露わにするなかで、中国が急激な軍事力の増強のもとで海洋覇権の奪取に躍起となり、北朝鮮は核・ミサイル開発を強行している。今年に入ると、ロシアがクリミアの併合を行い、領土拡張の意思を示したことで、世界は冷戦終結後、最も緊張を高めている。わが国の対応がこれ以上遅れると、国家の存亡に関わる事態に陥る恐れがある。この6年間、安倍首相ほど深く状況を理解し、真摯に対応しようとしている国家指導者はいない。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08n.htm
 集団的自衛権に関する最近の有識者の発言の中では、日本大学教授・百地章氏が、産経新聞平成26年3月8日に書いた論稿は、参考になるものである。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140403/plc14040303260003-n1.htm
 そこで、百地氏は、代表的な集団防衛条約が集団的自衛権をどのように定めているかを紹介している。

(1) 全米相互援助条約第3条1項(1947年)
「米州の一国に対する武力攻撃を米州のすべての国に対する攻撃とみなし…集団的自衛権を行使する」
(2) 北大西洋条約第5条(1949年)
「欧州または北米における締約国に対する武力攻撃を全ての締約国に対する攻撃とみなし…集団的自衛権を行使する」(5条)。

 これらに比べて、わが国の政府見解は、非常に無理のある定義をしている。すなわち、集団的自衛権は「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」であり、「集団的自衛権を行使することは、必要最小限の範囲を超える」としている。
 百地氏は、これに対し、「政府見解では『自国と密接な関係にある外国に対する攻撃』を『自国に対する攻撃とみなして反撃する』という、最も肝腎な部分がオミットされ、逆に『自国が直接攻撃されていないにもかかわらず』と強調されてしまった。これによって、自国が直接攻撃されていない場合にまで武力行使を行うのは、『必要最小限度』を超えるとされたわけだ」と適切な指摘をしている。
 そして、「しかし」として、次のように述べている。「個別的自衛権と集団的自衛権は不即不離のものである。集団的自衛権については、国内法における『正当防衛(刑法36条)』や『緊急避難(同37条)』とのアナロジーで説明されることがある。つまり、『急迫不正の侵害』が発生した場合、『自己または他人の権利を防衛する』のが正当防衛である。例えば、一緒に散歩していた女性が突然暴漢に襲われた場合には、自分に対する攻撃でなくても、反撃し女性を助けることができるのが正当防衛である。また、緊急避難でも『自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため』とある。
 であれば、国際法上の自衛権についても、個別的自衛権と集団的自衛権を不即不離のものと考えるのが自然だろう。例えば、公海上において一緒に訓練を行っていた米国の艦船に対して、万一ミサイル攻撃があれば、自衛隊が反撃を行い米艦を助けることができるのは当然ということになる。
 それゆえ、まず集団的自衛権の定義を正したうえで、行使の条件を『放置すれば日本の安全に重大な影響を与える場合』などに限定すれば、『必要最小限度の自衛権の行使は可能』としてきた従来の政府答弁との整合性も保たれると思われる」と。
 注目すべき見解である。まず集団的自衛縁の定義を国際社会の標準的な定義に改め、その上で、行使の条件を明確にしなければならない。それと同時に、自衛権を発動する際の要件を見直す必要がある。
 現在、わが国の政府は、憲法第9条のもとで自衛権を発動するためには、3つの要件を満たすことが必要だという見解を取っている。3要件とは、(1)わが国に対する急迫不正の侵害があること、(2)この場合、これを排除するために他の適当な手段がないこと、(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、――以上である。
 集団的自衛権の行使を可能とするには、自衛権の発動要件を一部改める必要がある。政府は、この点の検討を進めており、(1)の「急迫不正の侵害」については日本に限定せず、「わが国と密接な関係にある国」に対する武力攻撃があったケースでも自衛権を発動できるようにする方針と伝えられる。「わが国と密接な関係にある国」を追加することで、同盟国の米国をはじめ友好国との集団的自衛権の行使を可能とするわけである。
 以下は、百地氏の記事の転載。

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●産経新聞 平成26年3月8日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140403/plc14040303260003-n1.htm
【正論】
集団自衛権の「日本的定義」正せ 日本大学教授・百地章
2014.4.3 03:25

 政府は、集団的自衛権の行使は憲法上許されないとしてきた従来の見解を見直し、他国への武力攻撃が「日本の安全」に密接に関係していることを条件として行使を認めようとしている、という(毎日新聞、3月26日付)。これに対しては、野党や自民党内の一部にも反対や慎重論がある。
 理由は、(1)憲法解釈の変更は許されない(2)集団的自衛権の行使を認めたら、アメリカの戦争に巻き込まれる−などというものだ。

過去にも憲法解釈を変更
 第1点だが、安易な憲法解釈の変更が許されないのは当然である。しかし、憲法や法律の解釈には幅があり、「解釈の枠内」での変更は判例・通説の認めるところだ。
 典型的な例は、首相の靖国神社参拝をめぐる憲法20条3項についての解釈変更である。
 昭和55年11月17日の政府統一見解では、靖国神社公式参拝は「憲法第20条第3項との関係で問題があ(り)、〈略〉政府としては違憲とも合憲とも断定していないが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できない」となっていた。
 これを変更したのが昭和60年8月20日の政府見解である。中曽根康弘内閣の下に設置されたいわゆる「靖國懇」は、公式参拝を合憲とする報告書を提出、これを受けて次のような見解が示された。
 首相らの参拝が「戦没者に対する追悼を目的として、靖国神社の本殿又は社頭において一礼する方式で参拝することは、同項の規定に違反する疑いはないとの判断に至ったので、〈略〉昭和55年11月17日の政府見解をその限りにおいて変更した」。
 今回も、安倍首相は懇談会を設置しその報告を受けて政府見解を変更しようとしているのだから、これと変わらないではないか。

国際標準に改め問題解決を
 第2点だが、混乱の原因は従来政府が行ってきた「集団的自衛権」の無理な定義にあると思われる。それゆえ、その定義を国際標準に改めれば、問題は解決する。
 集団的自衛権は「自国と政治的・軍事的に協力関係にある他国にたいして武力攻撃がなされたとき、その攻撃が直接自国に向けられたものでなくても、自国の平和と安全を害するものとみなして、これに対抗する措置をとることを認められた権利」である(城戸正彦『戦争と国際法』)。つまり自国が直接攻撃を受けなくても「自国が攻撃を受けたものとみなし反撃する」のが集団的自衛権だ(田畑茂二郎『国際法講義下』)。
 代表的な集団防衛条約でも、次のように定めている。(1)全米相互援助条約(1947年)「米州の一国に対する武力攻撃を米州のすべての国に対する攻撃とみなし…集団的自衛権を行使する(3条1項)(2)北大西洋条約(1949年)「欧州または北米における締約国に対する武力攻撃を全ての締約国に対する攻撃とみなし…集団的自衛権を行使する」(5条)。
 ところが、政府見解では、集団的自衛権は「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」であり、「集団的自衛権を行使することは、必要最小限の範囲を超える」とされている。
 つまり、政府見解では「自国と密接な関係にある外国に対する攻撃」を「自国に対する攻撃とみなして反撃する」という、最も肝腎(かんじん)な部分がオミットされ、逆に「自国が直接攻撃されていないにもかかわらず」と強調されてしまった。これによって、自国が直接攻撃されていない場合にまで武力行使を行うのは、「必要最小限度」を超えるとされたわけだ。

従来の政府答弁とも整合性
 しかし、個別的自衛権と集団的自衛権は不即不離のものである。集団的自衛権については、国内法における「正当防衛(刑法36条)」や「緊急避難(同37条)」とのアナロジーで説明されることがある。
 つまり、「急迫不正の侵害」が発生した場合、「自己または他人の権利を防衛する」のが正当防衛である。例えば、一緒に散歩していた女性が突然暴漢に襲われた場合には、自分に対する攻撃でなくても、反撃し女性を助けることができるのが正当防衛である。また、緊急避難でも「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため」とある。
 であれば、国際法上の自衛権についても、個別的自衛権と集団的自衛権を不即不離のものと考えるのが自然だろう。例えば、公海上において一緒に訓練を行っていた米国の艦船に対して、万一ミサイル攻撃があれば、自衛隊が反撃を行い米艦を助けることができるのは当然ということになる。
 それゆえ、まず集団的自衛権の定義を正したうえで、行使の条件を「放置すれば日本の安全に重大な影響を与える場合」などに限定すれば、「必要最小限度の自衛権の行使は可能」としてきた従来の政府答弁との整合性も保たれると思われる。(ももち あきら)
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 次回に続く。
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