mixiユーザー(id:525191)

2014年03月26日08:55

85 view

台湾で学生らが中台協定に反対運動

 台湾で、中国と台湾の「サービス貿易協定」に反対する学生らが、3月19日にわが国の国会に当たる立法院を占拠し、さらに行政院(内閣に相当)に突入した。これに対し、警察が強制排除に乗り出し、多数の負傷者が出た。3月25日馬英九総統が学生らと直接対話に応じる姿勢に変化し、学生もこれに応じると回答。今後、対話によって事態が好転するか注目される。

 問題の焦点となっている「サービス貿易協定」は、昨年6月上海に結ばれ、現在批准の可否が大きな議論となっている。この協定は、国共内戦以来65年間分断されていた中台間でサービス分野の市場開放を進めようとしており、電子商取引や医療、旅行業など、中国が80、台湾が64分野を相互に開放するとの取り決めでするもので、野党などの反対派は、協定は中国の大企業に有利ゆえ台湾の弱小産業の切り捨てにつながる。また台湾が中国の政治的圧力にさらされるようになると反発。一方、馬英九総統の与党・国民党は、協定を批准できなければ台湾が自由貿易協定(FTA)を増やす上で重大な障害になると警告している。
 この協定は内容、審議過程が公開されておらず、「ブラックボックス」と呼ばれている。その点が、TPPと似ている。
 立法院は協定の批准に向けた審議を委員会で行っていたが、3月17日国民党の立法委員が時間切れを理由に一方的に審議を打ち切った。これに対し、反対派は、委員会の採決は違法だと強く反発。18日夜には、批准に反対する学生らが数百人が庁舎内に乱入し、徹夜で議場を占拠した。一般民衆による議場の占拠は、台湾で史上初めてという。
 学生らによる占拠が続くなか、22日、わが国の首相に相当する行政院長の江宜樺氏が、立法院を訪れた。江氏は、1万人以上の市民らが取り囲む議場前で、学生らと対面し「協定は今後の台湾の貿易自由化に寄与する」「撤回するつもりはない」と断言した。学生らは立ち退きを拒否し、協定取り下げを求め、江氏に退出を促した。「馬総統、出てこい」と叫んで、総統との直接対話を要求した。
 これに対し、馬総統は23日、総統府で記者会見し、学生らに対する立場を初めて表明した。馬氏は台湾の貿易自由化の遅れで最も喜ぶのは「競争相手の韓国だ」とし、協定の早期承認を求めた。学生が要求する直接対話には応じない姿勢を示し、議場占拠については「法律の順守」が重要だと指摘し速やかな退去を求めた。学生らは馬氏の発言に反発。学生らのうち約千人が23日夜、立法院から数百メートル離れた行政院の敷地に侵入、一部の学生は建物内になだれ込み、警官隊数百人と衝突し、双方に負傷者が出た。江行政院長は警察当局に学生らの強制排除を指示し、馬総統も了承した。警察当局は24日未明、強制排除に乗りだし、警官隊約2千人や放水車を投入、朝までに大部分を排除した。この際、学生らと警官の双方で計145人が負傷し、学生ら37人が現行犯逮捕されたという。だが、一部の学生は議場の占拠を続けている。
 事ここに至って、馬総統は25日学生の代表を総統府に招き、直接対話を望むと伝えた。学生らはこの提案に基本的に同意したが、中台協定の監督システムの法制化や総統府前での公開討論等の要求を提示した。台湾の学生たちの政治意識の高さは、中国に対する危機感の表れだろう。

 振り返ると、台湾では、平成20年(2008)の総統選挙で親中的な馬英九氏が勝利し、24年(2012)には再選を果たした。馬政権は中台間の自由貿易協定に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)を締結するなど、中国との関係を深めている。逆に言うと、中国が台湾に対する影響力を増大しているのである。
 いま問題になっている中台サービス貿易協定は、こうした中台関係を格段と進めるものとなる。馬総統は、今年の年頭演説で「台湾経済の突破年とする」と宣言。台湾の貿易自由化の取り組みが「手遅れになってしまう」と危機感をにじませ、サービス貿易協定の批准を求めている。中台の経済関係の拡大は、既に政治の領域にも入っている。今年2月に中台双方の所管官庁トップが南京市などで会談。中台首脳会談の可能性も取り沙汰されるまでになている。台湾当局の世論調査では、人口約2300万人の台湾で、人民の84・6%が中台関係の現状維持を望んでおり、中国との「統一」への警戒感は強い。サービス貿易協定に反対する学生らが、国会占拠などの直接行動に出たのは、こうした社会的背景があるだろう。
 仮にこのまま台湾が中国と事実上の一体化をするならば、わが国の安全保障は極めて厳しいものとなる。近年中国は、台湾に武力攻撃の恫喝をかけながら、経済の力で親中派を増大させてきている。中国の資本は台湾のマスコミの8割を買収し、親中的な世論の醸成を推進させている。民主的かつ合法的に併合をなしえれば、アメリカと戦火を交えることなく、国際社会の非難を受けることもなく、目的を達成できる。
 中国共産党が台湾に固執するのは、台湾の戦略的地政学的位置の重要性にある。台湾は中国が太平洋に進出するために、重要なカギとなる位置に存在する。台湾は東シナ海と南シナ海の間に位置し、渤海・黄海・東シナ海と南シナ海を二分する位置にある。もし中国が台湾を併合できれば、中国は太平洋に面した国になる。それが達成されれば、アジア、太平洋への覇権確立は可能になり、インド洋への戦力拡大も可能になる。逆に台湾を確保しなければ、中国の勢力は海に進出できない。だから台湾併呑は中国にとり、自らの生存にかかわる大きな課題となっている。
 戦前の日本では、満蒙はわが国の「生命線」と呼ばれた。今日、台湾はわが国の新たな「生命線」となっている。わが国の産業も国民生活も、石油なしには成り立たない。中東と日本を結ぶシーレーンの要に台湾がある。中国が台湾を併合すれば、日本は台湾海峡・バシー海峡というシーレーンの重要な拠点を押さえられたことになる。バシー海峡は、台湾とフィリピンの間の海峡である。
 台湾が中国の掌中に入れば、わが国の運命は中国の手に握られる。だから、台湾問題は、日本自体の問題となっている。だが、政府もマスメディアも、このことの重大性を、国民に周知しようとしていない。国民が自ら情報を収集し、共有化し、互いの啓発に努めていかねばならない。

関連掲示
・拙稿「中国の日本併合を防ぐには」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12a.htm

11 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する